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「憎しみを超えて平和に暮らしていくには…~『ソフィーの秘密』~」【YA97】

『ソフィーの秘密』 ニキ・コーンウェル 作  渋谷弘子 訳  中山成子 絵  (文研出版)                                            2026.6.2読了
 
世界から見ると比較的平和な今の日本国内では、“ジェノサイド”(ある特定の国や国民、人種や宗教を迫害し殺戮に至る行為で「集団殺害」「集団殺戮」「大量虐殺」などと訳される)という言葉やそのような行為を耳にすることも目にすることもあまりないと思いますが、かつては“ホロコースト”をはじめとする恐ろしいことが世界のあちこちで起こっていましたし、今もどこかで起きています。
※(国内のある地域では移民に対するヘイト運動が行われていると聞いたことがありますが、それが過激なものにならないか心配でもあります)
 
ここでちょっと紹介したい動画を…。
大好きなSEKAI NO OWARIの『深い森』という楽曲を歌っているライブです。
すこしだけ歌詞の中に、今回の本の内容にも近い部分も出てきます。
私はこの曲が大好きで、バンドメンバーの考えていることが尊敬できるのです。


この記事の最後に、歌詞の考察をしてくれている方の動画も貼っておきますので、お時間ある方はそれを見ていただくとよりセカオワの思いがわかりやすくなると思います。


私は今回取り上げる本を読むまで、恥ずかしながらアフリカのルワンダという国でかなり大規模なジェノサイドが起こっていたことを知りませんでした。
メディアは大きな国の事件はすぐに取り上げがちですが、小さな国の事件は取り上げても小さな扱いのことが多いですし、学校の授業でも同じような扱いのことが多いのではないでしょうか。
 
日本は「平和ボケ」と揶揄されることもありますが、平和の何が悪いんだ!と私などはつい思ってしまいますが、そんな平和な中で生活していると井の中の蛙で、世界で起きていることを見逃しがちです。
平和上等!とは思いますが、“知る”ということも大事ではないかと思います。
世の中で何が起きているのか、何を見極めないといけないのか、そして自分にできることはないのか…などのようなことを考えるだけでもその事実に対する思いを馳せたり深い知識を得られたりできると思います。
 
知っているのと知らないのでは今後の生きていくうえでの覚悟というか、被害者側に対する寄り添い方も違ってくるのかなと思われます。

↑ 歴史的に古くからあったジェノサイドや日本軍が起こしてしまったものも挙げられています。
 
とにかく大量虐殺など通常は起こしてはいけないことははっきりしていて、どんなに当事者たちにとって大義名分化した言葉を並べても決して許されることではありません。
もちろん国際連合で採択された“ジェノサイド条約”によって罰されます。(まあ、これもどこまで実効性があるのか、残念ながら今となっては怪しむ声もありますが…)


実は今回ご紹介する本は実は前に2巻あった作品の続編です。
そういうことさえも読んでみて初めて知ったというなんともお粗末な私ですが、あらすじ的には前の2作での簡単な説明もありますし、私みたいなへまをして3作目から読んでしまっても大方の流れと内容は理解できます。
でも主人公が8歳のころからのお話が前の2巻で描かれていて、より詳細な事件や周囲との交流、感情の揺れ動きなどがわかると思いますので時間があればシリーズとして当たり前の順番で読んだ方がいいでしょう。



私は上記した通り3作目しか読んでいませんので、この本のみの内容紹介となります。
 
14歳になったクリストフは8歳の時、生まれ育ったルワンダからイギリスへと家族で逃げるようにして渡ってきました。
なぜならルワンダでは恐ろしいジェノサイドが起こり、逃げる時に弟を撃たれ亡くすという悲劇を経験しています。
どうしてそんな事が起きたのか。
(移住してきた8歳の時に、クリストフはクラスメイトにどうして国を逃げ出してこなければいけなかったか、いったいどういう目にあったのかを語る機会を与えられます。これは第1作目の『お話きかせてクリストフ』にて描かれています。)

ルワンダには元々“ツワ”という原住民がいましたが、“フツ”と呼ばれる背が低くて濃い肌の色をして少しつぶれた鼻を持つ人たちが定住し始め“ツワ”の人たちは森に追いやられ、その後“ツチ”と呼ばれるフツより背が高く薄い肌の色をしていて長く高い鼻を持つ人たちがやってきました。
 
ルワンダはかつてベルギーに統治されていた時代がありました。
そもそも“フツ”も“ツチ”も同じルワンダ人なのですが、20世紀前半にヨーロッパには人種差別的な考え方が広がっており、ベルギー側は見た目(ヨーロッパ人に近い)だけで少数派の“ツチ”だけを政治の中枢に登用しました。
 
逆に多数派である“フツ”は不当な扱いを受け、次第に不満を募らせていきます。
“フツ”と“ツチ”の関係は悪化をたどり、様々な歴史を経て“フツ”が政権を取ったこともありました。
その後【ルワンダ虐殺】というジェノサイドが起こります。(以下を参照)


主人公クリストフの父は“フツ”で医者をしています。母親は“ツチ”ですがクリストフは“フツ”なのです。
しかし母親の見た目に似ているため、自分でもどうしようもないジレンマに陥っています。
 
コンゴ(被害にあったフツやツチが逃げた場所)から逃れてきた“フツ”のアーメルとクラスメイトになりますが、アーメルはクリストフの見た目だけでクリストフに対して殺意を抱くほどの敵意を持っていましたが、ある出来事でお互いのわだかまりが解け、今では親友と言えるまでになりました。(このことは、2作目の『君の話をきかせてアーメル』にて詳しく書かれているようです)
 
もう一人の親友コンは北アイルランドから家族と移住してきました。
アイルランドでもかつて“パピスツ”と“プロッズ”という宗教的な対立により宗派が分かれてのジェノサイドが起きていたのです。
 
このような似た境遇だけど思いはそれぞれの3人が仲良くなっていて、実はここに未来での平和を築くヒントがあるようです。
 

ある日クリストフの家にルワンダから、父親の妹の娘(クリストフのいとこ)である同い年のソフィーが送られ預けられることになりました。
しかし“フツ”であるソフィーは心の奥に、ある思いと秘密を持ってやってきたのでした。
それはいったいどういうものなのか…。
クリストフに新たな試練が起こりそうです…。


このようなジェノサイドに関する授業を、海外の学校はカリキュラムの中に取り入れている国が多いと思いますが、はたして日本はどうでしょう?
この本の舞台であるイギリスでは、きっと多くのカリキュラムが準備されているようで、このお話の中でもその様子が描かれています。
14歳になった当事者であるクリストフに学校側から再び自分の経験したことを学年全体に語ることを依頼されます。
 

本人にとっては辛い経験だと思いますが、何も知らずにいるクラスメイトに実際にあった事件や本人がどういう境遇にいたのかをみんなに伝え、恐ろしい体験をした人たちの心の傷をどうしたら癒せるのかをみんなで考えることはとても大事なことだと思います。
 
そしてジェノサイドが起きてしまう原因、その原因をできれば取り除いてみんなが平和に暮らしていける社会を作り上げるにはどうしたらいいのでしょうか。
憎しみが憎しみを呼び、増幅させて同じ悲劇を繰り返さないためには…?


このお話の中で、クリストフの父親はとても人徳のある人物として描かれているようですが、その父親の語る教えがすべてなのかなと思います。
あまりネタバレはできないので、ここはぜひとも実際に読んでみて確認していただきたいです。
(元司書としては図書館で借りていただくと嬉しいです😅)
 

今回とても大事なことをこのYA本で教えてもらいました。
それほど長くて難しい物語ではないですし、ぜひとも中高生に読んでもらいたいと思います。

 


そして、上でも書きましたがSEKAI NO OWARIの楽曲『深い森』のついての深~い解説動画はこちらからどうぞ。
 


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