唄う茶道家の小唄鑑賞⑨|伽羅の香
小唄(江戸小唄)の創始者と言われている清元お葉の作と伝えられている名曲。短い曲なので、小唄の稽古をはじめた初期に教わる曲でもあります。
伽羅の香りとあの君さまは いく夜泊めてもわしゃ泊めあかぬ
寝ても覚めても 忘られぬ
まだ妻問婚(いわゆる通い婚)が一般だった頃、たとえば平安時代の恋愛を唄っているのでしょうか。恋愛の基本形は、男が女の家に忍び込むわけです。そして、一夜をともに過ごし夜明けとともに男は去っていく。
当時は電灯などいう便利なもの(野暮なもの)はありませんから、女は男が誰であるかをはっきりと知る術はありません。男は自信を知らせるために歌(和歌)を残したりしました。なので、歌の下手な男はもてなかったと言われます(笑)
歌のほかには、香りで知らせるというテクニックもあったようです。当時の香とは香木を炊いてその香りを自分の衣装に炊き込めるわけです。香水などという野暮なものではありません。
この男は、伽羅を好んでいたようです。伽羅というのは高級な香木の沈香のもっとも上等なものです。つまり最上級。かなりの身分だったのでしょう。
きっと歌も上手だったに違いありません。
どこの誰かははっきりとわからない。でも、女は伽羅の香りをまとっている男にぞっこんです。いく夜泊めても、泊め飽きない と言っているのですから。この恋は成就したのでしょうか。したと思います。
男は女を見定めてから家に忍び込むのですから、ボールは女側にあるわけです。そして、女はゾッコン。
小唄の古典中の古典。しかも、男女の仲を上品に描います。それも少ない言葉で。お葉さんがつけたと伝わる節もゆったりととても品があります。
小唄らしい小唄の筆頭です。
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