#せりふ三題噺|「ずるいね」 、屋上、春一番、ローファー
ショートショート:風が変えた行方
屋上に呼び出されたのは、最後の登校日。
ここに来る前から答えは決めていた。
好き。だけど、離れ離れになるから。
——
階段を上がってくるローファーの音。
ひとつ、ふたつ、三つ。
僕は少し緊張しながら待っている。
屋上にたどりついた彼女は
まっすぐ僕のほうへ歩いてきた。
しばらく無言で向き合った。
「あのさ。」
「あのね。」
同時に口をついて出た言葉。
思わず顔を見合わせて吹き出した。
少し緊張が解けて、ラクになった。
「ずっと好きだった。」
やっと言えた。
「ずるいね。」
彼女が言った。
「もう今日が最後の登校日だよ。
2週間後には、わたし東京だし。もう遅いよ。」
そう言って彼女はうつむいた。
「いや、実は僕も東京の大学に合格したんだ。」
「えっ?そうなの?」
彼女は顔をあげて僕を見つめた。
半分泣き顔で笑おうとして
顔がくしゃくしゃになっていた。
二人の間を春一番が吹き抜けていった。
彼女の髪が揺れて、制服の裾がはためく。
「……ほんとに、ずるい。」
今度は笑いながら言った。
フェンスの向こうに広がる三月の空は、
まだ少しだけ冷たい。
だけど、光はもう春の色だ。
階段を下りるとき、
並んだローファーの音が
さっきより軽く響いた。
おわり。
はらとけいさんの企画に参加させていただきました。
よろしくお願いします。
お題は、以下の通りです。
■セリフ
「ずるいね」
■三題
・屋上
・春一番
・ローファー
青春って、ええなぁ。。。
では、また。
ごきげんよう。
