#せりふ三題噺|【お題】グリューワイン髭包み紙
ショートショート:日常と夢のあいだ
街はイルミネーションで輝いている。
一年で一番華やかな時期。
やっと今日の仕事が終わりPCの電源をOFFにした。
コートを羽織ってビルの外に出ると、
あっと言う間に冬の冷たい空気が体を包む。
駅に向かって歩く途中、見慣れない店があった。
ガラス窓越しに暖かい色の照明が輝いている。
『こんなお店、気が付かなかったな。』
引き寄せられるようにドアを開けて中に入った。
店の中にはこだわりを持って集められたような
筆記具や、便箋、封筒、インクの瓶、
ほかにも様々な雑貨が美しく並んでいる。
その中のひとつ、
「鯨の髭」で作られたペーパーナイフに目が留まった。
アンティークの工芸品だという。
「これを下さい。」
「素敵でしょう?鯨べっ甲っていうんですよ。
今では職人不足でこんな美しい工芸品は、
もう手に入らないかもしれない。」
店の主人がそう言って、
クジラが泳ぐイラストの包み紙で
ラッピングしてくれた。
家に帰るとポストに友人から手紙が届いていた。
買い求めたばかりの鯨のペーパーナイフで封を開けた。
楽しいイラストが散りばめられたカード。
デスクの上に早速飾った。
そういえば、先日開けた赤ワインが残っていたはず。
グリューワインを作ろう。
温めたワインとはちみつに
オレンジとりんごをスライスしてトッピングし、
シナモンスティックを添える。
いい香りが部屋に漂う。
ひと口含むと、温かさに包まれた。
その夜、不思議な夢を見た。
鯨の背中に乗って星空の下、
大海原をゆく夢だ。
幸せな気持ちで、朝、目覚めた。
ふと枕元を見ると、
白く長い弦のような鯨の髭が一本あった。
おわり。
下記の企画に初めて(3つのキーワードの方で)参加させていただきました。
お題は「グリューワイン・髭・包み紙」です。
よろしくお願いします。
#せりふ三題噺 #グリューワイン髭包み紙 #ショートショート
では、また。
ごきげんよう。
