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夫のサンドイッチには"休み"が挟まれている 608号室の住人





夫が住む世界には、
"休み"というものがないらしい。

落としたわけでもなく、
忘れたわけでもない。
最初から、
持っていない。

だから夫は、
毎日仕事に行く。
疑問もなく、
確認もせず、
休みを持たない世界で
生きている。

私はそれを
説明しない。
説得しない。

ただ、
そんな夫のために、
サンドイッチを毎日作る。


具は日によって変わる。
今日は、
カツサンドにした。

そして、
サンドイッチには、
"休み"も一緒に挟む。

「少し止まれ」
「今日はもういい」
「早く寝ろ」等、

そのような言葉を
ハムや卵やらと一緒に、
日替わりで挟む。

そして、
この"休み"の具は
けっこう分厚い。

しかも、
味はしないし、
食感もない。

でも、
確かに私は、
"休み"を挟んでいる。


そして夫は、
"サンドイッチ"を持って
出かけていく。


そしてサンドイッチは、
"夫"を持って
出かけていく。


なんなら休みは、
"サンドイッチと夫"を持って
出かけていく。




そして夫は、
サンドイッチに
"休み"が
挟まれていることも、


自分が
"サンドイッチ"に
持っていかれていることも
気づいていない。



いや、気づかなくていい。


気づかないからこそ、
今日も世界は回っている。