移住するほど、何度でも通いたくなる理由-淡路ザルは、ちょっと特別。
愛らしい淡路ザルの姿に魅せられ、淡路島へ移住して1年4カ月。
淡路島モンキーセンターへ通うのが日課となりました。
そこで出会うのは、たくさんの淡路ザルを愛する人々。
年に一度、この日を待ちわびてやってくる方、毎週のように数時間かけて通われる方。
雨が降る中、お目当てのサルが現れるのをひたすら待つ方もいらっしゃいます。
遠方から初めて訪れたらしい年配のご夫婦は、「あれはマックンかな?」と、幼い子どものように顔をほころばせていらっしゃいます。
そして、目の前のサルたちの愛らしさに、思わず涙を流される方もいるほどです。
そんな皆さんの淡路ザルやモンキーセンターへの熱い気持ちを、肌で感じることが多くなりました。

先日、淡路島モンキーセンターを訪れ、改めて掲示されている文章を読んだ際、あることに気づきました。
ここは『愛を感じられる場所』なんだと。
だからこそ、私を含め、多くの人が淡路ザルに惹きつけられ、何度も足を運びたくなるのだと思います。
今回は、モンキーセンターで『愛を感じる』理由を、私なりに考えてみたいと思います。
ポコがママになった日
2024年5月31日
ポコが可愛い女の子を出産しました。

赤ちゃんの名前は『キナコ』
ポコは出産時、7歳になる直前で、初めてのお産です。
実はポコは母親を1歳半頃に亡くしているそうです。
そのため、モンキーセンターのスタッフの方々は、ポコの成長をまるで我が子のように見守ってこられました。
私がポコに初めて会ったのは2022年、ポコが5歳になる年でした。

5歳になる直前のポコ
顔が似ている淡路ザルの識別は難しいのですが、ポコは目力のある特徴的な顔立ちをしています。
また、スタッフさんを見つけるとおやつのおねだりをすることが多ので、観察初心者の私でも比較的覚えやすいサルの1人でした。

6歳になる直前のポコ
たくさんいる淡路ザルの中でも、ポコのように自分で識別できるサルには、やはり特別な思い入れが生まれます。
観察に行った時に会えると嬉しく、会えないと少し寂しい気持ちになるものです。

「なあ、おやつくれへんの?」
スタッフさんへ圧をかけているポコ
2024年春に淡路島へ移住してからは、ほぼ毎日モンキーセンターで観察をしているので、お腹が大きくなっていくポコを見ながら、いつ赤ちゃんが生まれてくるのかと心待ちにしていました。

妊娠しているのか?太っただけなのか?
みんなヤキモキしていた頃
2024年5月24日
出産まであと一週間という頃、ポコはエサやり小屋の台の上で横になっていました。
時折、重たそうに体を起こしても目の前の網に掴まったまま、静かに過ごしていました。

出産1週間前
しんどい時期だったようです
明らかにいつもとは違う少しぐったりして見えるポコの様子に、いよいよポコが母親になる日が近づいているのだと、強く感じました。
そして、2024年5月31日。
ついにその日がやってきました。
ポコが出産したこと知り、私はいてもたってもいられず、すぐにモンキーセンターへ向かいました。
到着後、スタッフの方に見せていただいた動画には、
「ポコが産んでるー!」
と、エサ場に赤ちゃんを抱きかかえて下りて来たポコを見つけたスタッフさんの、喜びと興奮に満ちた声が響き渡っていました。
その時、動画の中のポコよりもスタッフさんの嬉しそうな声に、胸が熱くなるほどの感動を覚えました。

ポコちゃん、おめでとう!
その後、ついに私もポコに会うことができました。
赤ちゃんをしっかりと胸に抱き、おっぱいを飲ませている姿は、初めての出産とは思えないほど落ち着ていて、堂々としているように見えました。
何よりも印象的だったのは、ポコの表情です。
出産直後の母ザルは警戒心が強いと聞きますが、ポコの表情には、険しさよりもむしろ、母親としての赤ちゃんへの深い愛情が溢れているように感じられました。

キナコちゃんを抱いて
おやつのおねだりに
ポコのように幼いころから見守ってきたサルが、我が子を連れて歩く練習をする姿は、感動的です。
それはポコに限らず、どの母親も同じ。
不安で鳴けば、母ザルがすぐに駆け寄り、優しく抱きしめます。
そんな愛情深い姿を見るたび、心が震えるような感動を覚えるのです。
ミカヅキ父さん
ニホンザルは、父親が特定できないため、オスに父親の自覚はないと考えられています。
一方、淡路ザルは、オスが子ザルに毛づくろいをしたり、一緒に遊ぶ様子が見られます。
特に生後7か月~2歳くらいの子ザルに積極的に関わるようです。
しかし、生後間もない子ザルに対しては、追い払うような行動も見られます。

メダカの娘(2023年生まれ)の世話をするガアラ
ところが、昨年、とても珍しいオスの行動を観察することができました。
なんと、生後40日ほどの赤ちゃんを、母親のように世話をするオスがいたのです。

ミカヅキ(左)とココロの娘(赤ちゃん)
オスの名前はミカヅキ。
彼が世話をしているのは、2024年5月29日生まれの女の子で、母親の名前はココロです。
ココロの赤ちゃんが母親から少し離れて1人で遊べるようになった頃、ミカヅキが戸惑ったような様子で、その赤ちゃんをお腹に抱きかかえて山に帰っていくのを見かけました。

赤ちゃんが落ちかけています
赤ちゃんは嫌がることなくミカヅキにしがみついていましたが、ミカヅキが抱き慣れていないためか、歩き始めてすぐに落ちてしまいました。

落ちても、赤ちゃんはすぐにミカヅキの胸に飛び込んでいきます。

もう一度抱きかかえたミカヅキは、後ろを振り返り母親のココロが付いて来ていることを確かめているようでした。

ココロは、下で赤ちゃんが遊んでいた時からミカヅキと一緒に娘を見守っていて、彼が自分の娘を抱いて帰ろうとしても、慌てることもなく落ち着いた様子でした。

ミカヅキは途中で足を止め、赤ちゃんを下ろし、その場でココロの到着を待っているようでした。
ココロが到着後、母子が寄り添う姿は、まるで『保育園のお迎え』のように見えました。

赤ちゃんが鳴きもせず、ココロも取り乱すことなく、ごく自然に寄り添う姿からはミカヅキへの信頼がうかがえます。
翌日もミカヅキは、ココロの赤ちゃんが友達と遊んでいるのを見守っていました。

仲良う遊ぶねんで~
赤ちゃんのお世話がしたい別のサルが近づくと、ミカヅキは「ハーッ」と威嚇して追い払います。
母親ならよくある光景ですが、オスがこれほど小さな赤ちゃんを守ろうとする姿を見たのは初めてでした。

この子の世話はワシがしとんねや
赤ちゃんもミカヅキがお世話をしてくれると分かっているのか、上手に背中に乗って移動していきます。

移動中、赤ちゃんは近づく母親ココロを見つけて跳び下りました。
ココロがミカヅキに毛づくろいをねだり寝転ぶと、赤ちゃんは嬉しそうにココロの背中に乗りました。

赤ちゃんは元気いっぱい。
しかし、ママが遊んでくれないと分かると、近くにあるベンチで遊び始めます。
ミカヅキはココロよりも赤ちゃんが心配なのか、彼女の毛づくろいをせずにベンチへ向かいました。

無邪気な赤ちゃんは、ミカヅキの背中にぴょーんとジャンプ!
乗られたミカヅキは怒ることもなく、それが当然のことであるかのように、そのまま歩き始めます。

動いてもええか~
しかし、赤ちゃんはまだ遊びたかったようで、ミカヅキが動き出すとすぐに下りてしまいました。
すると、毛づくろいを諦めていなかったココロが再登場。
ミカヅキの前に寝転ぶと、授乳を促すように赤ちゃんを抱き寄せました。

ミルクの時間よ
ミカヅキのお世話は、決して気まぐれではありませんでした。
彼は翌日もココロの赤ちゃんが友達と遊んでいる様子を見守っていました。

赤ちゃんたちを見守るミカヅキ
まるで保育士さんのよう
2024年7月20日、午後4時
ココロ親子と一緒にご飯が始まるのを待つミカヅキの姿は、仲の良い家族のようでした。

ココロ親子(右)の毛づくろいを見るミカヅキ
その後、傘屋根の上にエサが撒かれるとミカヅキは赤ちゃんを抱いたままご飯を食べていました。
ココロはミカヅキたちの近くで食べています。
オスが赤ちゃんを抱いたまま食べるのを見たのも、この時が初めてでした。

生後50日ほどで、赤ちゃんは母親の食事中に歩き回り、小石や麦に触れたり、他の赤ちゃんと遊ぶようになります。
母親は時折確認するものの、食事に集中しており、これは子ザルの自立を促す第一歩のようです。

ミカヅキの場合は、自分が食べ終わるまで赤ちゃんを腕の中に抱いていました。
たくましく育てようとする母親とは違い、自分の子を心配する親のように、少しでも物音がすると赤ちゃんを抱きしめるミカヅキの姿が印象的でした。

食べ終えたミカヅキがゆっくり歩き始めると、まるでそれが合図だったかのように、赤ちゃんはトコトコと駆け寄り彼の背中に飛び乗りました。

赤ちゃんを背中に乗せたミカヅキは、そのまま山に向かいました。
柵を乗り越えると、赤ちゃんは背中の毛を掴んでミカヅキのお腹の方へ移動しました。
ミカヅキと赤ちゃんの間には、すでに親密な信頼関係が築かれているようで、この1週間で2人の関係性がさらに深まったことを実感する光景でした。

ミカヅキは、2024年2月頃に体調を崩した時期がありました。
振り返ると、あの頃から群れの中での順位が下がってしまったようです。
それまでは上位のオスとして、群れを牽引する1人だったのですが…。
その後、春になり体調は回復したものの、エサの時間には若いオスに追われることもあり、気持ちの面で少し落ち込んでいるように見えていました。

すっかり元気になったミカヅキ
少し寂しそうに見えるような…
2024年5月と7月のミカヅキを写真で見比べてみると、5月の写真ではどこか寂し気に見えた表情が、7月には愛情と自信に満ち溢れた顔つきに変わったように見えます。

赤ちゃんと同じようなポーズ
良い表情です
ミカヅキにとってココロ親子との触れ合いこそが、彼の閉ざされた心を解き放ち、仲間との絆を再認識させてくれたのだと、私は思います。

ミカヅキと一緒なら安心だね
ミカヅキとココロ親子の仲睦まじい関係は、8月頃までほぼ毎日観察できました。
しかし、9月から11月中旬頃はサルたちが山奥へ採食に出かけることが多く観察頻度が減少。
12月に入ると赤ちゃんが成長したため、ミカヅキが父親のように見える光景は減りました。
語り継がれるマッキーの偉業
モンキーセンターに滞在していると『どのサルがボスなのですか?』と、スタッフの方に質問する来園者の声をよく耳にします。
スタッフさんが『あのサルがボスですよ』と、紹介するのが
『淡路島モンキーセンター・13代目リーダー』のビッグです。

13代目リーダー
ビッグ
ビッグの正確な年齢は分からないそうですが、推定年齢は20代後半らしいので人間で換算すると80歳前後でしょうか。

お気に入りのメスにくっついている
ビッグ
ビッグという名前の通り、群れのオスの中で体格は大きく、特に顔と手足は一番大きいように思います。
ビッグを紹介された来園者から『大きくて強いサルがボスになるのですか?』と、質問されることが多いようです。
スタッフさんが『ビッグはたまたま体が大きいだけで、ボスは争って決まるわけではないんですよ』と答えているのが聞こえてきます。
モンキーセンターに掲示されているリーダーに関する資料には、新聞掲載の淡路ザル記事が紹介されています。

記事の見出しには
【争い好まザル リーダーの条件】【群れ最優先 助け合う社会選択】など、
淡路ザルの「優しさ」や「寛容性」を示す言葉が使われています。

さらに、掲示されている資料の中で、大きな文字でひときわ目立つ
【伝説のボスザルに学ぶ!!オスとして勝ち抜く生き方】という見出しの新聞記事を読むと、
「淡路ザルは例外で、餌付けされた野生のニホンザルの群れの序列は、体の大きさやケンカの強さだけで決まるわけではない」
という主旨の言葉がありました。
記事で紹介されているのは「7代目リーダー・マッキー」。
淡路ザル史上、1993年から15年間リーダーを務めた最長政権のオスザルです。
若い頃のマッキーは、群れの中心部に入ることを許されていないオスでした。
そんな彼が母親を事故で亡くした生後6か月のメグという子ザルに出会います。
メグは両手足に障がいがあり、歩行も困難な状態でした。
マッキーはメグに母親がいないと分かると、夕方には片腕に抱いて山へ帰り、朝になると抱いて山から下り、群れの中心部に近づけるギリギリの場所で離し、エサを食べさせたそうです。
マッキーはメグへの献身的な世話が認められ、やがて群れの中心で暮らすことを許されたそうです。
その献身的な姿と穏やかな性格から群れの信頼を得て、ほどなく7代目リーダーに選ばれた…と記事にありました。
リーダーになってからも、弱いサルをかばい助け合うなど、優しい配慮を怠らなかったそうです。
マッキーがリーダーになって以降、群れ全体の親密度が増したとも書かれていました。
以前、センター長さんから話を聞いた際も
「マッキーは本当に素晴らしいリーダーだった」と絶賛されていました。
その後、マッキーは32歳でイッチャンにリーダーの座を譲ったあとも、メスからの信頼が厚く、群れに残っていたそうです。
一方、8代目イッチャンは乱暴で弱いサルを虐げたために、わずか3カ月でクーデターにより失脚した…と記事にありました。
ライブラリーに掲示されている淡路ザルのリーダー系図を見ると、イッチャン以降のリーダーは全員「優しいリーダー」と紹介されています。
9代目リーダー・アサツユを紹介した記事には、母親が面倒を見なくなり衰弱していた生後40日ほどの子ザルを、抱いたり毛づくろいして介抱していたことが書かれていました。
10代目リーダー・マートンも母親を亡くした子ザルの面倒をみていた、とスタッフさんから聞いたことがあります。
伝説のボス・マッキーが変えたといえる『淡路ザルのリーダー像』
現在のリーダーであるビッグは、どのようなリーダーなのでしょう。
13代目リーダー・ビッグ
リーダー系図によると、ビッグは2022年12月に13代目リーダーに就任。
私が初めてモンキーセンターを訪れた2022年2月当時、リーダーは11代目ジョニー、序列2位はスティーブン、ビッグは3位でした。

恋の季節♡
渋いお顔がカッコいいジョニー
当時、ジョニーは11代目リーダー就任から1年3か月ほど。
初の秋の山籠もりを終え、風格のあるリーダーに見えました。

ジョニー
彼の時代が長く続くことを願っていましたが、同年夏頃に体調を崩し、秋の山籠もり後、姿を見せなくなったそうです。

最後に会えた日のジョニー
2022年8月、ジョニーの体調不良によりスティーブンが12代目リーダーに。
しかし、秋の山籠もり後、徐々にスティーブンの姿が見えなくなり、同年12月、ビッグが13代目リーダーに認定されました。

リーダーに就任したころのビッグ
それまで、リーダーは仲間を引き連れて移動するものと思っていましたが、ビッグ就任後、そのような光景は見られませんでした。

ビッグ
スタッフさんにおやつのおねだり中
この日、ビッグがリーダーだと感じたのは、スタッフさんの「ボスはこのビッグです」という紹介と、夕食後のデザートを一番多くもらっていたことくらいでした。
2023年11月
ビッグがリーダーになってから約一年が経ち、9月から秋の実りを求めて山奥へ採食に出かけていた群れのサルたちが、モンキーセンターへ戻ってきました。

ビッグはメスの毛づくろい中
写真中央、左
ビッグを中心に暖かい場所にサルが集まり、毛づくろいをしています。
その後、ビッグが歩き出すと、周りのサルたちがゾロゾロとついていくのを見て、初めてリーダーらしくなったと感じました。
ビッグがリーダーに就任後、初めての秋の採食ツアー。
約2か月ほとんどセンターへ来ることはなく、山の中で群れの仲間と過ごす中で、彼自身にリーダーとしての自覚が芽生えたのでしょうか。
あるいは、仲間から信頼されるような出来事があったのでしょうか。
大勢の仲間を連れて移動するビッグを見ながら、ワクワクしました。

温かい場所で毛づくろいをされている
ビッグ
リーダーですが…
毎日のようにビッグを観察していますが、強さをアピールする行動や、仲裁に入る様子はほとんど見られません。

お気に入りさんをがっちりホールド
発情期はメスにベッタリ。
普段は人目を避けてゴロゴロ。
メスや子ザルに毛づくろいされ、デザートは頬袋に詰め込む…。
リーダーというより、大きくて穏やかなおじいちゃん、といった雰囲気です。

ビッグのおこぼれを狙うちびっ子たち
恋の季節、お気に入りさんにベッタリくっついていると…

いつものようにベッタリ♡
頭を掴まれ、こっぴどく叱られることもあります。

ええかげんにしてよ~
あんた重たいねん!
スタッフの方から『ビッグは怖がりだ』と聞いたことがあります。
ビッグがリーダーに就任したばかりの頃、少数の仲間とエサ場に現れた時、周辺で暮らすハナレオスのジョーを怖がり、ジョーが特に攻撃的な態度を取っていないにもかかわらず、ビッグは怖がって鳴いていたそうです。

こんな可愛い顔になることも
それでも、たくさんのサルが集まっている場所には
たいていビッグがいて、

陽の当たる場所に中心サルが大集合
ビッグが動くとメスたちが一緒に移動する光景は、さすがリーダーだと思わせてくれます。

ビッグの周りには大勢のメスたち
優しくて大らかなリーダー
2025年4月13日
エサ場入口の海に近い斜面に、小さめの「さるだんご」ができていました。メンバーを確認した瞬間、「えっ!」と驚いてしまいました。
なんと、ビッグの隣にハナレザルのおじいやんがいたのです。

中央の2人
ビッグとおじいやん
おじいやんは以前は群れにいましたが、今は距離を置いて暮らしています。
ここ数年は発情期になるとエサ場周辺に現れるようになり、今シーズンもよく見かけていました。
優しい性格からか、メスや子ザルにも人気があり、寄り添う姿をよく見かけましたが、まさか群れのリーダーであるビッグと「さるだんご」を作っているとは、大変驚きました。
その後、ビッグと序列2位のチョウナンが寄り添っているところにおじいやんが近づいてきました。

ビッグの背中に顔を乗せてるチョウナン
挨拶に向かう おじいやん(手前右)
ビッグたちに挨拶するようにお尻を向けたおじいやん。
ビッグはおじいやんのお尻と顔を確かめると、「ああ、おまえか」というような表情を浮かべ、後ろ足でポリポリと顔を掻いていました。

ビッグに挨拶する おじいやん(右)
お尻を覗き込むビッグ
ビッグの後ろがチョウナン
一方、チョウナンは「なんでおじいやんに何も言わんねん」とでも言いたげな様子で、その場から少し離れて寝転がっていました。
その後、チョウナンがメスに毛づくろいをされていると、おじいやんがそっと参加しました。
寝転がっているチョウナンは気づいていません。
そこへビッグが割り込み、毛づくろい中のメスとおじいやんの間に大きな顔をねじ込みました。

ビッグ(右)大きな顔をぐいーっと
ビッグはこの時も、そして夕ご飯前の「さるだんご」の時も、おじいやんを受け入れているようでした。
しかし、チョウナンの考えは少し違うようです。
毛づくろいをしていたのがおじいやんだと気づくと、軽く威嚇して追い払いました。
ビッグの態度からは、『無駄な争いは避け、仲良くできるなら受け入れる』という考えが感じられます。
チョウナンも同様に攻撃的ではありませんが、群れを守る立場として『簡単には受け入れない』という思いがビッグより強いように見えました。

いざという時には…
2025年6月2日
エサ場にはビッグを筆頭に少数のサルがいました。
上位オスはビッグだけで、あとは高齢・子連れのメスや若いオスが数人いる程度でした。
「ハッハッハッハッ」と、オスが誰かを追う声が聞こえ、ビッグもその声のする山を見ています。

様子を見ているビッグ
サルが多い時は、ビッグではなく2位のチョウナンや3位のマックなど、他の上位のサルが仲裁に向かうことが多いのですが、この時はビッグだけでした。
ビッグが動くのかどうか、気になります。
ビッグの視線の先に、メスがダッシュでオスから逃げているのが見えました。

ゆっくりと歩き始めたビッグは、途中から小走りになりました。
温厚なビッグが仲裁に向かうようです。

しかし、ビッグが追い付いた時には、すでに揉め事は落ち着いていたようでした。

様子を確認し、自分が出る必要はない、と判断したようです。

かわいいお供を連れて移動
ところが、わずか2分後。
「キッキッ」とメスの怯える声が聞こえ、声のする方を見ると、オスに追われたメスの前にビッグが座り、メスはビッグを盾にして鳴いているのが見えました。

争いを好まないビッグは、メスの盾になりつつも、山の方を向いて『分かるやろ。このメスは嫌がっとんねん』という雰囲気を醸し出していました。
それでもオスが詰め寄ろうとすると、今度は口を開け、ぐいーっと顎を突き出して『アカンいうてるやろ』と牽制しました。

温厚なビッグの顔が、鬼のような形相に変わっています。
オスはリーダーには逆らうことはできません。

「お前わかっとんのか~」
諦めたオスが立ち去ると、そのままビッグはゴロンと寝転がりました。



メスはビッグに毛づくろいをすることで、感謝を伝えているようでした。
受け継がれる優しさ
ビッグに次ぐ上位のサルたちにも、その優しさは確実に受け継がれています。
例えば、2位のチョウナンは昨年の夏、迷子になった赤ちゃんザルを保護し、しばらく抱いていました。

鳴き疲れた赤ちゃん
チョウナンの膝でスヤスヤ
3位のマックは、両手に障がいのあるニーナの毛づくろいをよくしています。

ニーナの毛づくろいをするマック(左)
ニーナがおやつをもらうと、他のサルに取られないようマックのそばで食べる姿を見ると、ニーナがマックを慕っていることがよく分かります。

生後11カ月のキナコを抱くオス
上位のオスだけではなく、群れの他のオスやハナレザルも子ザルの面倒を見たり、甘えられたりする姿はよく見られる光景です。

生後10カ月のホタルと
おじいやん
『愛を感じる』理由
母と子の深い絆、きょうだい愛や家族愛。
血縁関係がなくても、親子のように愛情深く世話をするオスザル。
高齢や障がいのあるサルへの優しい配慮。
無駄な争いを避け、仲良く暮らそうとする思い。
淡路島モンキーセンターでは、そんな優しい淡路ザルの社会や暮らしぶりを、間近で観察できます。
この、至近距離で見られることこそが、私が『愛を感じる』一番の理由なのだと、今回改めて気づきました。
すでに淡路ザルが好きな方にはもちろん、まだ見たことのない方にも、淡路島モンキーセンターでしか感じられない、愛に溢れる淡路ザルの姿をぜひ観察していただきたいと思います。
