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フローリスト

今年は例年に増してスギ花粉が大量飛散している。

ボクは毎日電車通勤なのだが、この時期は花粉を避けるため、可能な限り外気に触れないで乗り換えできる経路を選んでいる。だから今は、東京をずいぶん大回りして、そしてずいぶん地下深くまで潜ってオフィスまで通っていてるのだ。

上着はできるだけツルツルの布地のものを選び、マスクと眼鏡と手袋で完全防備だ。そして、家に着いたら玄関の前で全身の花粉をバサバサと払って、すぐにシャワーを浴びる。

そこまでやらないと花粉で大ダメージを食らう。
花粉症の同志であればわかっていただけると思うが、一度症状が出てしまうと、それを数日間ほど引き摺ることになってしまうのだ。

あーヤダヤダ。
考えただけで鼻水が垂れそうだ。


高校生の頃、ボクは花屋でアルバイトをしていた。
一般の人は花屋さん(フローリスト)に対して可憐なイメージを持っているかもしれないが、実は結構重労働だ。

暖かいと仕入れた花卉が早く痛んでしまう。
それを避けるため、年中店内の室温を下げている。
さらに花卉は冷蔵庫にストックするので、店員は一日中キンキンに冷えた水を触る。まあ寒いのだ。

そして仕入れた花卉本体がそこそこ重い(植物だからね)上に、その花卉をストックするための水の入ったバケツも重い。そして、ボクが働いていたお店では開店祝いのスタンド花なども扱っていたし、観葉植物のリースやメンテナンスもやっていた。それらもなかなかの重量物だ。

寒くて重いとなれば、腰痛を発症する人が多くなる。
幸いボクは腰を痛めることはなかったが、ボクが働いていたお店のオーナーも、(美人お姉さんの)先輩店員も腰痛持ちだった。だから、土日になると早朝からオーナーの運転するトラックの助手席に乗って花卉市場に行ったもんだ。要は仕入れた花卉の「積み込み・運搬要員」として駆り出されていたってわけだ。

そして、花屋の店内には大量の花粉が飛んでいる。
だからフローリストは花粉アレルギーになりやすい。
ボクはこのバイトでアレルギー体質になった(と思っている)。

今となってはスギ花粉だけじゃなく、サクラソウやハウスダストでもくしゃみが出るようになり、甲殻類や糖度の高い果物を食すと喉がイガイガするようになってしまった。


だけど、あのバイトをしてよかったと思っている。
あのバイトが、現在のボクのビジネス観を形成するに至った原体験になっているからだ。

花屋ビジネスは「極小のバリューチェーン」だ。
若いうちにそれを経験できたのはデカい。
花屋は「仕入れ→製造→販売→店舗販売 or 配送→回収→廃棄」という連鎖プロセスによって価値を生み出している。そしてボクのバイト先ではリースやメンテナンスもやっていたので、そっちの経験も積むことができた。

さらに良かったのは「アート感覚」を養うことができたことだ。花束を作るのも、アレンジメントを作るのも、スタンド花を作るのも、多分にアート的な要素を含んでいる。フローリストは、顧客の美的なニーズと予算を上手く聞き出して、その制限の範囲内で即興のアート作品を生み出すのだ。

それを毎日繰り返し、且つ収益を生み出していくというのは、なかなかハードルの高いビジネスだ。花卉は生物なので消費期限が短い。さらに天候によって生産量が変動し、それが仕入れ価格の変動につながる。そのあたりは米や野菜とよく似ている。

だけど、花屋は繁華街などに店舗を構えることが多いので家賃が高い場合が多い。そして水道光熱費が嵩むビジネスなので、燃料価格が高騰するとモロに収益に打撃を喰らうのだ。


当然、ボクは今でも花屋に入るのに抵抗がない。
フラッと花屋に入って、奥さんが好きそうな花を自分で選んでフラワーアレンジメントを作ってもらったりすることもある。まあ、出来上がっているのを買うことの方が多いけどね。

今の時期は春の花が多く出ていることだろう。
チューリップやスイートピーが時期だなあ。
ラナンキュラスあたりを混ぜるとボリューム感が出るんだよな。

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