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エレベーターで誰が失業するか

― AI失業 ―

昨今アメリカで「AI失業」が加速しているそうだ。
大卒者の失業率が上昇していて、多くの学生が「AIのせい」だと不満の声を上げている。しかしそれは対岸の火事ではなく、数年後には日本のホワイトカラー層にも波及する可能性があると専門家が指摘している。


話は変わるが…
日本に初めてエレベーターが設置されたのは明治23年。今から136年も昔のお話だ。

当時の日本は文明開化の真っただ中。
そして、大日本帝国憲法の発布(明治22年)を受けて、7月に初の衆議院議員総選挙が実施された。日本が法治国家として歩み始めたばかりの時代だ。

当時の人たちは大騒ぎしただろう。
「こんなモノが普及したら、オレたち荷物運びの人足は仕事がなくなっちまう!」そんな声が上がっただろう。そして間違いなく、重い荷物を階段などで担ぎ上げる仕事は激減したはずだ。

だけど現代のボクたちは、エレベーターの歴史をそんな視点では語らない。なぜならば、エレベーターがもたらした本当の変化は「失業」ではなかったからだ。

エレベーターによって高層建築が可能になった。
そして高層建築によって都市が変わった。
限られた土地に多くの人や企業が集まれるようになり、経済活動の密度が上がった。丸の内や新宿の高層ビル群はその象徴と言える。

エレベーターによって荷物担ぎの仕事は減っただろう。しかし、高層建築が可能になったことで建設需要は拡大し、建築設計、設備工事、ビル管理、不動産など新たな仕事が数多く生まれた。

つまり、エレベーターは一部の仕事を奪ったが、経済活動そのものを大きくしたのである。


明治時代の人たちは、どんどん増えていくエレベーターを見て、それが100年後の都市の姿を変え、新しい雇用を生み出すことを想像できただろうか。

彼らの関心は、まず「荷物運びの仕事がなくなる」という目の前の変化に向いていたはずだ。

AIも同じなのかもしれない。
ボクたちは今「AIの普及によって誰が失業するのか」を盛んに議論している。しかし本当に大きな変化はその先にある。

エレベーターが都市の姿を変えたように、AIもまた経済活動そのものの形を変えていく。それがどのような世界なのか、もちろんボクにもわからない。

だけどきっと100年後の人たちは、今のAI失業論を振り返りながら、エレベーターと同じように語っているのだろう。

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