【読書記録 -122】トヨタの問題解決
問題解決とは
あなたのビジネスが to Cであろうと to Bであろうと、毎日のオペレーションにはトラブルが付き物だ。日々さまざまな問題が持ち上がり、日々その火消しに奔走する…「問題」と聞くとそんなイメージを持つ人は多いだろう。
しかし、トヨタは「問題」をそうは定義していない。トヨタにとっての「問題」とは(単なるトラブルではなく)「あるべき姿(目標・基準・標準)」と「現状」とのギャップのことを指している。
よって「トヨタの問題解決」とは、あるべき姿と現状とのギャップを埋めていく作業なのだ。
問題の分類と構造化
本書『トヨタの問題解決』の編著者である「OJTソリューションズ」は、2002年4月にトヨタ自動車とリクルートグループの共同出資により愛知県名古屋市に設立されたコンサルティング会社だ。所属する50名以上のトレーナーは、全員がトヨタに40年以上在籍し、チーフリーダーや課長として100名以上の部下を率いてきたベテランたちだ。

とはいえ、トヨタがトラブルを無視しているわけではない。多くの企業は、トラブルが発生すると「再発防止策」を考えようとするが、トヨタは(そういったトラブルも含めて)「問題(=あるべき姿と現状とのギャップ)」を分類し、それを解決するための構造を考えるのだ。
トヨタはその構造化を以下の3つの軸で考える。
時間軸(過去か未来か):一般的な「再発防止策」は、過去から現在までにフィーカスし、現在のマイナスをゼロにしようとする。一方トヨタは、現在から半年先(場合によっては中長期を視野に入れる)にフォーカスし、現在よりも高い次元の将来的な「あるべき姿」とのギャップを埋めようと考える。
真因へのアプローチ(現象か構造か):一般的な「再発防止策」は、目に見える表面的な「現象」に対してアプローチしがちだ。一方トヨタは、問題を発生させている根本的な「構造」にアプローチをする。トヨタは「なぜなぜ5回」や「特性要因図」などの手法を使って構造的欠陥を掘り下げていくが、安易にまねをすると中途半端な(表面的な)対策で止まってしまうので注意が必要だ。
展開のスケール(点か面か):一般的な「再発防止策」は、特定の部署や個人のみの改善で完結する場合が多い。一方トヨタは、その改善プロセスを成功事例として「横展(横展開)」の仕組みに昇華させようと考える。その際、いきなり大きなテーマに取り組むと、やることが多くなりすぎて挫折する場合が多い。問題を細分化して「点」で成果を出し、点と点をつなげて面に広げていくという考え方が重要だ。
さらにトヨタでは、問題解決(あるべき姿と現実とのギャップを埋めること)のための「8つのプロセス」が定められている。
問題を明確にする: 「あるべき姿」と「現状」のギャップをデータに基づいて客観的に捉え、優先すべき問題テーマを絞り込む。
現状を把握する: 大きな問題を具体的に分解し、三現主義(現地・現物・現実)とデータのバラツキから真に手をつけるべき「攻撃対象」を特定する。
目標を設定する: 取り組む問題に対して、「何を」「いつまでに」「どうする」の3要素を数値化した(少し背伸びをした)目標を定める。
真因を考え抜く: 目に見える事象だけでなく「なぜ」を繰り返すことで、問題を引き起こしている本当の原因(真因)を徹底的に追究する。
対策計画を立てる: 真因を取り除くための対策案をできる限り洗い出し、効果や実現可能性などの観点から優先順位をつけて計画する。
対策を実施する: 環境変化の影響を避けるために一気にスピーディーに実行し、報連相を徹底しながら成果が出るまでやり抜く。
効果を確認する: 設定した期限内で対策の効果を測定し、一過性ではなく誰がやっても同じ結果が出るプロセスになっているかを確認する。
成果を定着させる: 成功したプロセスを、正式な「標準」として組織に定着(歯止め)させ、他部署へも共有(横展)して全体の力を底上げする。
困らんやつほど、困ったやつはいない
トヨタの歴史を振り返ると… もともとトヨタは自動車メーカーではなく、豊田自動織機製作所内に設けられた自動車部からスタートしている。
創業者の豊田佐吉は、不良品を作らないために「糸が切れたら機械が自動的に止まる(=自働化)」織機を発明した。その考え方こそが「異常があれば止めて、真因を究明し、改善する」という8ステップの原型だ。
本書の中に、トヨタの元副社長の(改善の鬼と呼ばれた)大野耐一氏の「困らんやつほど、困ったやつはいない(問題がないということが最大の問題である)」という名言が書かれていた。」
そう、今のやり方がベストだと思った瞬間に進化は止まる。
まずは「問題」を見つけるところから始めよう。だが、その問題を「避けるべきトラブル」と考えるのではなく「将来の成長(あるべき姿)とのギャップ」と捉えることが、企業にも個人にも大事なのだ。
そして… (ここが最も重要なのだが)それらを理論だけでなく、行動に落とし込む文化を築かなければならない。
参考リンク集
・株式会社OJTソリューションズ 公式サイト
・Amazon『トヨタの問題解決』書籍紹介ページ
