見出し画像

【読書記録 -152】怖れ:心の嵐を乗り越える方法

未来に起きるかもしれないことへの怖れ

いつだったか、ウチの娘が夕方くらいに居間に降りてきて「昼寝しすぎた…」とぼやいていたことがあった。

ウチの娘は割と精神が安定しているタイプで、あまりネガティブになることがないのだが、その時は珍しく不機嫌だった。どことなく自分に苛立っているという印象を受けたのだ。

彼女の心配事は、週明けのテストの点数への影響だ。

本書『怖れ:心の嵐を乗り越える方法』の著者 ティク・ナット・ハンは20世紀を代表するベトナム出身の僧侶。世界にマインドフルネスを広め、平和運動に尽力した人物だ。

著者は本書の中で、世界の分断が進み、争いが後を絶たない背景には、人が未知の事柄や他者に対して抱く怖れがあると説いている。その怖れが、怒りや苛立ちといった「負のカルマ(業=思い・言葉・行為)」となって表れるのだ。

そう考えると、ウチの娘の苛立ち(=負のカルマ)も「未来に起きるかもしれないことへの怖れ」から来たものだろう。著者の言う「怖れ」は、民族間の紛争のような大きな話だけではなく、個人の心の中にも起きることなのだ。


「マインドフルである」とは

人は有限の存在だからこそ、死を怖れ、失敗を怖れ、未来を心配する。

一方で、その怖れがあるから勉強しようと思い、仕事を頑張り、誰かを大切にしようとも思う。つまり、怖れは人を苦しめる感情であると同時に、人を成長させる原動力でもあるのだ。

ティク・ナット・ハンが伝えたかったのは「未来を考えるな」ということではない。問題なのは、心が未来に住み続けてしまうことだ。

まだ起きてもいない出来事を想像し、不安を膨らませる。そうすると、身体は現在にあるのに、心だけが未来へ飛んでいってしまう。

だから彼は、呼吸に意識を向けて「今ここ」に戻ることを勧める。それが「マインドフル(Mindful)である」ということだ。

マインドフルとは「注意深い」「心に留めている」「気を配っている」という意味の英単語だ。過去の後悔や未来の不安にとらわれず、「今、この瞬間」に意識を集中させて、ありのままを客観的に受け入れる心のあり方を指す。

よく言われる「マインドフルネス(Mindfulness)」とは、このマインドフルな状態を意図的に作り出す実践や、マインドフルな心理状態そのものを指している。


有限だからこそ、今を生きる

著者は怖れや怒りや不満を敵とみなしてはいけないと説く。そういった感情も、その人の一部だからだ。

しかし人は、そういったネガティブな感情によって誤った行動をとることがあり、それが人生を苦しいものにするかもしれない。そしてその苦しみが、また新たな怖れを生み出す。

それは、誰もが人生は有限だと知っているからだ。
人に時間が無限にあれば、何度失敗しても何度でもやり直すことができるが、現実はそうではない。だから(未来を考えることは必要だけれど)未来ばかり見続けていると、怖れはどんどん大きくなるのだ。

しかし、人生が有限であることは変えられない。
だからこそ、ボクたちはときどき立ち止まり、呼吸に集中し、今この瞬間へ戻るべきなのだ。

ティク・ナット・ハンは本書の中でこう言っている。

怖れを見つめる最初の一歩は、何も決めつけずに怖れを気づきの中に導き入れることです。やさしくその存在を認めてください。
それだけでも大きな安らぎが訪れます。
怖れが落ち着きを見せたら、やさしく抱きしめて、その根源を深く見つめます。心配や怖れの出どころを理解することは、それらを手放すきっかけになります。


参考リンク

・Amazon『怖れ:心の嵐を乗り越える方法』

・Wikipedia『ティク・ナット・ハン』


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集