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【読書記録 -158】コンテキスト・リーダーシップ

山口周の著書との出会い

ボクが山口周の本を初めて読んだのは10年ほど前。
その書籍名は『外資系コンサルの知的生産術』だ。

当時ボクは、比較的大規模なプロジェクトのサブPMというポジションだった。その頃のボクはというと、工程表を作り、進捗を管理し、期限までに仕事を終わらせる… それがプロジェクトマネジメントだと思っていた。

ところが山口周が書いていることは違っていた。
彼は、プロジェクトマネジメントを「人と組織の認識を揃えながら不確実性を乗り越えていく営み」だと説く。それはボクにとって割と衝撃的だった。

それ以来、ボクは彼の新しい本が出るたび買って読んでいる。


さて、そんなボクが今回読んだのは、彼が今年の4月に発行した『コンテキスト・リーダーシップ』だ。

本書はこんな問いからスタートする。

優れたリーダーと凡庸なリーダーを分ける決定的な差は、行為そのものではない(のではないだろうか?) ―

では、その差はどこにあるのか。
本書は、その答えを「コンテクスト」という概念を軸に解き明かしていく一冊だ。

なお、著者は過去の本においても一貫して「コンテキスト」という記述をしていらっしゃるが、ボクは以前から外山滋比古氏に倣って「コンテクスト」と記述をしている。よって、今回も同じ記述で統一したいと思っているので、予めご了承いただきたい。

リーダーシップは「意味づけ」によって発現する

本書で興味深いのは、リーダーシップをリーダー側の能力ではなく、部下側の認識から説明している点である。

例えば、上司が部下を厳しく叱責したとする。その行為だけを見れば、単なる叱責である。しかし部下が「自分の成長を願って言ってくれた」と受け取るのか「感情的に怒っているだけだ」と受け取るのかによって、その行為の意味はまったく違うものとなる。

つまり、リーダーシップという現象は、リーダーの行為そのものではなく、部下が上司のその行為をどう意味づけるかによって発現するものなのだ。

では、その意味づけは何によって決まるのだろう。
山口周は、その鍵となる概念を「コンテクスト」と呼ぶ。

本書では、カール・ワイクのセンス・メイキングやナラティブ論などを引用しながら、人は客観的な事実をそのまま理解しているのではなく、出来事を解釈し、意味づけることで世界を理解していると説明する。

だからリーダーに求められるのは「正しい答えを持つこと」ではない。

組織全体が同じ意味を共有できるよう、ビジョンを示し、危機感を醸成し、ナラティブを語ることで、コンテクストを読解し、編集することである。

AI時代だからこそ問われるもの

本書は最後に、その議論をAI時代へと広げている。

著者は、産業革命時代の機械化を引き合いに出し、価値創造のボトルネックはAIが代替できないプロセスに移行するだろうと説く。

生成AIは文章を書き、分析を行い、多くの知的作業を代替できるようになったけれど、「何を目指すのか」「なぜそれをするのか」という意味づけまでは代替できない

だから人の仕事は、知的生産の上流にある「アジェンダの設定」「仮説の構築」、そして知的生産の下流にある「実行・実装のプロセス」へ移っていく。いや、人が能動的にそこに移さなければならない。

そうなったときに、リーダーに求められるのは「答えを知っていること」ではなく「組織が共有できるコンテクストを作る」ことになるのだろう。

ボクが考えたこと

さて、改めて「コンテクスト」とは何か、定義を整理してみようと思う。

コンテキストとは、一般的に「文脈」と訳されるが、それだけでなく「物事が起きる背景」「状況」「前後の関係」「その場の空気感」などの意味が含まれる英単語だ。

そうすると、本書『コンテキスト・リーダーシップ』の冒頭で著者が立てた問いである「優れたリーダーと凡庸なリーダーを分ける決定的な差は、行為そのものではない」の答えも見えてくるように思う。

コンテクストを「文脈」と捉えるなら、それは部下側の解釈の問題だ。一方で、コンテクストを「背景」や「前後関係」や「空気感」と捉えるなら、それはリーダー自身のこれまでの行為の積み重ねということになるだろう。

なぜその判断をしたのか。
何を目指しているのか。
普段どのように部下と向き合ってきたのか。

そうした背景がリーダーの行為を支え部下はその背景を手掛かりに「この人が今この言葉を発したのは、こういう意味なのだろう」と解釈するのだ。

そのコンテクストによって、同じ行為が「最高のリーダーシップ」にも、「最悪のリーダーシップ」にもなり得るということなのだろう。

もしこの整理が正しいのだとすれば、リーダーシップとは人を動かす技術ではない。部下がその行為を前向きに意味づけられるような背景を築き続ける営みなのかもしれない。

参考リンク

Amazon『コンテキスト・リーダーシップ』

山口周:Wikipedia

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