【読書記録 -43】メーカーの仕事
ボクはメーカーの人じゃない。
じゃないけれど、この本は読んで良かったと思う。
バリューチェーンについて、こんなに体系的に且つわかりやすく書かれた本に出会ったことはなかった。
『メーカーの仕事』は、2022年に出版された本だ。
2022年といえば、コロナ禍によって、サプライチェーンの脆弱性が露呈し、従来の「安く大量に作る」モデルが限界を迎えていた時期だ。まだSDGsという言葉がもてはやされていて、DXの導入が急務だと叫ばれていた頃だ。

本書は4名の共著者によって執筆されている。
山口雄大は、化粧品メーカーで需要予測やS&OPマネージャーを担当。コンサルティングファームで需要予測アドバイザーを務めている人物。行本顕は、消費財メーカーで経営企画、財務、法務および海外調達、生産管理を担当されてきた人物。泉啓介は、外資系化学メーカーで生産管理や需要予測、需給調整などを担当されてきた人物。そして小橋重信は、アパレルメーカーのマーチャンダイジングやブランド運営をされてきた人物だ。つまり、この4名が揃えば、小売業・製造業のバリューチェーンの全体最適の提言ができるってわけだ。
本書は、バリューチェーン(商品企画 / 研究開発→調達→製造→販売 / サービス)を網羅的且つ体系的に解説している。
商品企画や開発において、メーカーは製品に機能を盛り込むことに執着しがちだ。しかし、本当は(市場の不確実性に対応するための)余白を設計に組み込むべきなのだ。新商品が次々と市場に投入される現代では製品のライフサイクルはどんどんと短くなっている。そういった中で、余白を持たせる=柔軟な構造設計をすることが、その後の利益率を左右するのだ。
SCM(サプライチェーン・マネジメント)の章はボクにも関係する内容だ。ここでは、予測できない需要に対してどのように在庫をコントロールするか=機会損失と余剰在庫のバランスを取るかという点が重点的に解説されている。効率化だけを追い求めるのは危険だ。変化に対するレジリエンス(しなやかさ、復元力)をいかに確保するかが企業の生死を分ける。
さらに、製造現場におけるDXについても深く踏み込んでいる。DXの目的は、単にデジタルツールを導入するということではなく、現場の暗黙知をデータとして可視化し、組織全体の意思決定スピードを上げることだ。本書の中では、経営者が人とテクノロジーをどのように共存させるべきかを具体的に解説している。
メーカーにおける仕事は、(たとえそれがバリューチェーンのひとつのパーツであっても)自分の役割が最終的な顧客体験や企業のブランド価値に直結していると認識するべきなんだ。そのつながりを理解することで「部分最適」という罠から抜け出し、組織全体の利益に貢献するための具体的なアクションが見えてくる。
これからの時代のメーカーは「モノを売って終わり」ではなく、サービスやソフトウェアとの融合を通じて継続的な価値を提供する存在へ変化していかなければならない。
