【読書記録 -138】ハリー・ポッターと炎のゴブレット
神話が近代史になるとき
『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』を読み終えた。
これは第四巻ではない。
新しい物語の第一巻だ。
ボクはそう感じた。

もちろん主人公は変わらない。
舞台もホグワーツである。
だけど、世界そのものが別物になった。
第一巻から第三巻までのハリー・ポッターは、壮大な魔法の世界を知る物語だった。
魔法学校があり、魔法省があり、銀行があり、パブがある。ヴォルデモートという恐ろしい魔法使いがいたという伝説も語られる。しかし、それらはどこか「おとぎ話」の世界だった。
銀行はあるけれど、おとぎ話の銀行。
パブはあるけれど、おとぎ話のパブ。
ヴォルデモートもまた、神話や都市伝説のような存在だった。
世界が突然リアルになる
ダンブルドアは、それまで絶対的な賢者として描かれていた。しかし「週に一回は苦情が来る」という何気ない一言で、一人の校長として苦情の手紙に目を通し、悩み、判断する姿が頭に浮かぶ。
マクゴナガル先生もそうだ。それまでは「厳格な先生」という役割だったが、ダンスを楽しむ姿が描かれた瞬間、一人の人間として立ち上がる。
ハグリッドもまた、自らの出生によって傷つき、偏見に苦しむ。
そう、登場人物たちは役割ではなく、リアルな人格を持ち始める。そして、その人格同士が関わり始めることで、社会が一気に現実味を帯びる。
登場人物の変化だけじゃない。
恋愛もビジネスも、借金や賭け事もリアルに描かれるようになった。
日刊預言者新聞も、それまでは「動く写真の不思議な新聞」という存在でしかなかったが、リータ・スキーターの行動が加わったことで、一気にリアルな現代的メディアに印象を変えた。
そして、友人の死さえも。
伝説だったヴォルデモートが現実世界に戻ってくることも。
それは、神話として語り継がれていた遠い昔の物語が、急に近代史になったような…
リスタートする物語
第一次世界大戦開戦直前の人々にとって、戦争とは歴史書の中にある遠い昔の出来事だったろう。しかし1914年、戦争は自分たちの現実になった。
『炎のゴブレット』でも同じことが起きている。
それまで遠い神話だった世界が、世界地図のどこかで今起きている現実になった。
ハリー・ポッターの物語はリスタートしたんだ。
それは旧約聖書を読み終え、新約聖書を開いたときのような感覚だ。
世界観を学ぶ物語は終わった。
ここからは、その世界の歴史を生きる物語が始まるんだろう。
次作『不死鳥の騎士団』がどう展開するのか今から楽しみだ。
参考リンク
・Amazon『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』書籍紹介ページ
・ワーナーブラザーズ「ハリー・ポッター 公式サイト」
