見出し画像

【読書記録 -123】ISO9001の規格と審査がこれ1冊でしっかりわかる教科書

ISO9001の本質と審査対策が体系的にわかる実践マニュアル

ISO 9001(品質マネジメントの国際基準)の認証取得や運用を目指す際、難解な文章に頭を悩ませる担当者は少なくない。

本書『ISO9001の規格と審査がこれ1冊でしっかりわかる教科書』は、その複雑な規格要求事項や審査の仕組みを、初心者にもわかるように解説した実践的な入門書だ。本書を紐解くことによって、ISO 9001の本質が「単なるルールの遵守」ではなく「組織の体質改善と顧客満足の向上を達成するための仕組み(QMS:品質マネジメントシステム)」であることを理解し、さらにその仕組みを日々の業務に活かすための気付きを得ることができるだろう。

ボクのこの記事は、どちらかと言うとISO9001導入担当者よりも、経営者がISO9001をどのようにガバナンスに活かすかという視点で書いていこうと思っている。せっかく認証を取得するならそこまで昇華させた方がいいに決まってるからな。

なお、本書の著者 福西義晴は、長年化学メーカーで品質保証や工場の安全衛生に従事した後、株式会社テクノソフトにて多くの企業の認証取得・維持支援を行ってきた人物だ。

第1章:ISO 9001の「基本」〜経営者が持つべきガバナンスとしての考え方〜

ISO 9001を導入するにあたり、最も重要な土台となるのが「経営者のガバナンス(会社の舵取り)に対する意識と姿勢」だ。

規格の「箇条5:リーダーシップ」に示されている通り、ISOは現場だけの活動ではなく、経営者が会社の進むべき正しい方向を定め、コントロールするために主導するものだ。

経営者が持つべき基本的な考え方の手順は以下の通り。

ステップ1:ISOを経営のガバナンス体制の主軸として位置づける

経営者は、ISO 9001を単なる「現場の手続き」ではなく、「企業を健全に舵取りするための仕組み」として捉える必要がある。

「箇条4:組織の状況」に基づき、外部や内部の課題、利害関係者のニーズを明確にさせ、会社をマクロな視点からコントロールする体制を整える。近年義務化された「気候変動」への対応なども、企業としての持続可能性を左右する大きな方針決定の一環であり、これらを網羅した舵取りがトップマネジメントに求められる。

ステップ2:組織の規範となる品質方針と基準を明確にする

経営者は、会社を正しい方向へ導くための舵取りの基準として「品質方針」を確立し、自らの言葉で組織全体に発信しなければならない。

全ての従業員が「会社がどのような方針に基づいて動いているのか」「自分の業務がどのように会社全体の統治に貢献しているのか」という「認識(箇条7.3)」を持てるよう、トップが率先して関与と責任を示さなければならない。

ステップ3:リスクマネジメントによる確実な舵取りを行う

「箇条6:計画」にある「リスク及び機会への取組み」は、ガバナンスにおける意思決定そのものだ。

会社の不確実性(好ましい方向、または好ましくない方向への乖離=リスク)を先回りして予測し、それを管理するための資源(ヒト・モノ・設備・組織の知識など)を適正に配置(箇条7:支援)すること。そしてそれ(リスク)を経営トップがコントロール下に置くことこそが、ガバナンス=会社の舵取りと言っても過言ではないだろう。

第2章:形骸化を防ぐ「審査対策」〜体質改善と顧客満足を達成する手順〜

審査に合格することだけを目的にすると、形ばかりの書類が増えて現場オペレーションの形骸化を招くだけだ。正しい審査対策とは、自社の弱点に気づき、組織の体質改善と顧客満足の向上を達成するための仕組みを作ることだ。

そのために行うべき具体的な実務手順を解説する。

ステップ1:顧客満足度を正しく測定し、成果を評価する

「箇条8:運用」で製品やサービスを提供した後は、「箇条9.1.2:顧客満足」に基づき、顧客が自社の対応をどう感じているかのデータを集めて分析する手順に移る。

それは単に「アンケートを取る」などということではない。
顧客の声を経営のガバナンス(舵取り)に反映させ、日々のプロセス(=インプットされる情報を意図した結果に変える一連の活動)へ確実にフィードバックするのだ。そうすれば、自然と製品やサービスの質(QMS:品質マネジメントシステム)を底上げすることができる。

ステップ2:内部監査の仕組みを整えて、自浄作用を高める

外部の審査員に指摘される前に、自社のガバナンスに緩みがないかを厳しくチェックする体制を構築する必要がある。

内部監査を行う際は、客観性と公平性を確保するため、監査員に「自らの担当業務を監査させない(ISO 19011に基づく)」というルールを徹底するべきだ。それは、身内の甘えを排除しない限り、ルールの不整合を自ら見つけ出すことはできないからだ。そしてそれが組織の「自浄体質」の醸成につながっていく。

ステップ3:是正処置」のプロセスを確立し、問題の原因を断つ

業務中で不適合(ルール通りにいかないこと)が起きた際に「その場しのぎの修正処置」だけで終わらせてはいけない

「箇条10.2:不適合及び是正処置」に基づき、問題が起きた「根本原因」を徹底的に究明し、その原因自体を取り除く「是正処置」を実行する。この再発防止のプロセス、そしてそのプロセスの有効性の実証を「文書化した情報」として残していくことが、将来的な組織の体質改善につながるのだ。そして同時に外部審査でも高く評価される=最大の審査対策となるのだ。

ステップ4:マネジメントレビューを機能させ、ガバナンスをレベルアップさせる

さて、ここまでできれば「箇条9.3:マネジメントレビュー」だ。

マネジメントレビューは、経営者が自ら責任を持って実施しなければならない。現場から上がってきた内部監査の結果を元に、自分自身でQMS(品質マネジメントシステム)が適切に機能しているか、組織の戦略的な方向性と一致しているかをレビュー(評価・批評・再検討)するのだ。それを誰か任せにしてはいけない。

結論、ISO9001の実装において、経営者がやるべきことは「PDCAが正しく回っているかレビューする」ことだと言い換えてもいいだろう。それは、大きく言って「インプット」と「アウトプット」に分けて考えればわかりやすい。

インプット:
PDCAサイクルの「Do(実施)」→「Check(評価)」部分にあたる。

まず、経営者は現場の責任者に指示をして「Do」のプロセスの活動実績を記録できる仕組みを構築しなければならない。そして、それを定期的(週次・月次など)で報告(インプット)させるルーティーンを確立させなければならない。ここが揺らぐと正しいレビューを行うことができなくなる。

報告(インプット)に必要な項目は以下ようになるだろう。

・前回までのマネジメントレビューの結果と処置状況
・外部および内部の課題の変化
・パフォーマンスと有効性に関する情報
(顧客満足度、品質目標の達成度、プロセスの実績、製品・サービスの適合など)
・不適合および是正処置の状況
・監視・測定の結果、および内部監査やISO審査などの監査結果
・リスクおよび機会への取組みの有効性
・改善の機会
(改善提案など)

アウトプット:
PDCAサイクルの「Act(改善)」→「Plan(次の計画)」部分にあたる。

経営者は、報告(インプット)された情報を分析・評価し、QMSの継続的改善に向けた次のアクションを指示(アウトプット)しなければならない。そして、以下の決定および処置をアウトプットに含めることが「箇条9.3.3」で求められており、それを次のサイクルの「Plan(計画)」に反映させることが「PDCAサイクルを回す」ということになるのだ。

次のサイクルの「Plan」につなげるため、経営者が報告(アウトプット)を元に判断をしなければならないポイントは、以下の3つに絞り込むことができるだろう。

・もっと会社や製品を良くするための、具体的なアクションの決定
・今のルールや仕組み(システム)を変えるべきかどうかの判断
・改善や変更を実行するために必要な『ヒト・モノ・情報』を用意する
※これらの指示や会議の議事録は、文書化した情報(記録)として保持する必要がある

もちろん、本書に書かれたプロセスを一つずつ実践していくことが、確実にISO9001認証を受けることにつながるだろう。

しかし、本当にあなたの会社にとって役立つ「QMS:品質マネジメントシステム」は、経営者自身がISO9001の全体像を把握し、マクロな視点で「PDCAが正しく回っているかをレビューする」というところに帰結するだろう。

参考リンク集

・JISC 日本産業標準調査会

・JAB 公益財団法人日本適合性認定協会

・株式会社テクノソフト(著者所属機関)

・Amazon『ISO9001の規格と審査がこれ1冊でしっかりわかる教科書』書籍紹介ページ


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集