ファーストペンギン
昨今、360度評価と呼ばれるタレントマネジメント(戦略的人材管理)システムが多く出回っている。
それは、個人の強みと弱みおよび成功と失敗(「目標を達成したか徒労に終わったか」と表現する方が適切かもしれない…)の情報を、自己主張+共に働いた人たちから集めて、その人の一年間の成果を可視化しようという仕組みだ。最近ではそこにAIによる重み付けが加えられ、より精緻な評価ができるようになっているそうだ。
この評価の考え方は悪くない。
悪くないけれど… ボクはそういった360度評価システムを中小企業が導入することをお勧めしない。
「ファーストペンギン」という比喩がある。
ペンギンの群れには猿などに見られるようなボス(リーダー)は存在せず、「最初に動いた1羽に追従する」という習性があります。
群れが危険に遭遇した場合は、リーダーの指示ではなく最初の1羽が率先して動いて安全を確認したあとに、他のペンギンたちが後に続くことで、群れ全体はその危険を回避します。
危険を顧みず、真っ先に飛び込んだペンギンは、身をもってその海が安全であると仲間に示すことができ、だれよりも確実に餌にありつけます。
大企業にファーストペンギンは不要だ。
なぜならば、大企業に所属している限り、その海が安全であることが保障されているからだ。自力で餌場を探す必要もない。そんな環境下では360度評価が有益になる。
安全である代わりに、その海においてはそれぞれのペンギンの居住地が細かく指定されていて、そこからはみ出ることが許されない。そして誰かが勝手なところに飛び込んで思わぬ波を立ててしまったりすると、その波をかぶった人から(360度評価によって)非難を受けることになる。
しかし中小企業はそうではない。
いや、そうであってはいけない。
中小企業の居住地は、安全に囲われた海域ではなく多くの外敵がいる大海だ。その危険と隣り合わせの海の中で、チーム全員が餌にありつけなければならない。
だから、中小企業にはファーストペンギンが必要だ。
経営者はその人の成果よりも「勇気」を評価しなければならない。そしてそれは、AIにも360度評価にもできない。
「勇気の評価」は経営者が属人的に行うべきなのだ。
