【読書記録 -81】イン・ザ・メガチャーチ
フーガ形式…
朝井リョウの作品には「どんでん返し」的な手法はあまり使われない。本作でも「武藤澄香」と「チャミスル」が同一人物であることは容易に想像がつくように描かれている。

ボクは、ふと「フーガ形式」というワードを思いついた。
1つの主題(メロディ)を複数の声部(パート)が交互に模倣・展開しながら織り上げる、対位法に基づいたポリフォニー(多声音楽)の代表的な形式です。17〜18世紀のバッハに代表され、主題の追いかけっこによる複雑な絡み合いが特徴です。
本作においては、「チャーチマーケティング」という一つの主題を元にして、複数の登場人物の視点や行動が複雑に絡み合い、追いかけ合いながら、最終的に一つに統合された「Coda」を目指していく。そんな構造が「フーガ形式」に似ていると思ったのだ。
チャーチマーケティングとは、教会や団体が地域住民や若者に対し、体験談の共有(証言)などを通じてコミュニティへの参加や寄付、ファン化を促す手法のことを指す。
推し活などのファンダム経済も、熱狂構造を利用し、物語の力で人を動かすという点で、チャーチマーケティングと同様と言える。
一番のタブーは、自分が余ることなんです。
自分を使い切ることが今の時代に手に入れられる唯一の正解であり、”幸せ” なので。
中盤、巨大教会(メガチャーチ)というワードが出てきたあたりから、ボクの頭の中では、パイプオルガンで演奏されるバッハの「トッカータとフーガ」が鳴り始めた。
その響きは悲劇的で暴力的だ。
共感や物語性という手法を駆使し、聴き手の心に触れ(トッカータ)て、熱狂度を高めていくんだ。
だけど、その熱狂は永遠には続かない。
いつかはエンディングを迎える。
そのあとには空虚な残響音が残るだけなんだ。
参考リンク集
・Amazon『イン・ザ・メガチャーチ』書籍紹介ページ
・朝井リョウ 著者プロフィール(新潮社)
