見出し画像

【読書記録 -161】起業家の思考と実践術

起業家精神とは何だろう

「分厚いなあ。」
…ボクが初めてこの本を手に取ったときの感想だ。

本書『起業家の思考と実践術』はおよそ500ページ。片手で読むにはちょっと骨が折れる。だけど、中身は物語になっていて、スラスラと読み進めることができる一冊だ。

本書の著者 山川恭弘は、起業家教育で世界的に知られるバブソン大学の教授である。本書は、起業の手順や成功法則を解説したハウツー本ではない。主人公の成長を描いた物語を通して、「起業家精神」とは何かを学んでいただきたい。

「起業家」という言葉を聞くと、多くの人は会社を辞めて自ら事業を立ち上げる人を思い浮かべるだろう。だけど、ボクはみなさんに「起業することが本当のゴールなのか」という視点を持ちながら読み進めることをお勧めしたい。

起業家精神は「行動する力」ではない

起業家精神とは単なる行動力ではない。
何も考えずやみくもに突っ走ることではないのだ。

まず、あらかじめ「失敗」を定義しておくことが重要だ。何を持って「失敗」かがわかっていれば、深刻なダメージを被ってしまう前に手を打つことができる。

そして、日々の活動の中の小さな違和感を見逃さず、自分自身をリフレクションし、周囲からフィードバックを受けること。それらの情報を正しく分析し、必要に応じて「ピボット(方向転換)」する柔軟性を構えておくのだ。

それが「失敗から学ぶ」ということであり、真の意味でPDCAサイクルを回すことができるということだ。そうなれば、失敗は恐れるべきものじゃない。

ボクが考えた「ピボット」の意味

著者は、起業したあとも何度もピボットを繰り返すことが成功の秘訣だと説いているが、それは起業前からできるだろう。

ボクも多くの起業家を見てきているし、本書内にも書かれているが、全くビジネス経験(ここでは「会社経営」の意)やネットワークがないまま起業をすると、どうしても行き詰まってしまうリスクが高くなる。

だけど、会社員として働いていてもできることは多い。まずは、社内に(起業家目線で)意見してみることだ。それが、世の中を大きく変えるようなアイデアでも、自分の所属する部署をちょっとだけ居心地良くする工夫でもいいじゃないか。

バカなフリして新しい提案をしてみよう
だって社内が一番ピッチがしやすく、承認されれば低リスクでプロジェクトを進めることができる最高の環境だぜ。世の中に出てしまうと、ピッチの機会すら与えられないことが多いんだ。

訓練だ。
それはピッチの訓練でもあるけれど、ピボットの訓練でもあるのだ。

何度も小さなピボットを繰り返しているうちに、本当に自分がやりたいことが見えてくるかもしれない。それがその会社でやった方がリーズナブルなのであれば、そのまま会社での成果とすればいいし、もし会社がネガティブな反応を示すのであれば、そのとき初めて起業という選択肢を考えればいい。

一歩踏み出して、踏み外して、はみ出してみる

本書は「起業家精神を身につける」というより「イノベーターマインドを身につける」という視点で読む方がいいだろう。

本書の中にしばしば出てくる「ピボット」とは、市場の反応や状況に合わせて、事業のやり方やターゲット層を大きく変えることを指している。

だけど、それは起業家だけに与えられた特権じゃない。組織も個人も自分でピボット(の軸じゃない方の足の置き場)を見つけ出して、どんどん試してみればいいのだ。

バスケのピボットは、ボールを持ったときに、片足を地面の軸として固定したまま、もう片方の足を動かす基本動作だ。これができないとバスケ選手として致命的だ。だからバスケが上手くなりたい人は、その動きが無意識にできるようになるまでひたすら訓練するだろう。

ビジネスでもそんな地味な訓練が重要なんだと思う。トライアル&エラーを繰り返して、上手な身のこなしを習得していくのだ。

そして、軸足を変えながらピボットを繰り返していくうちに、最初の場所から思っても見なかったような場所に辿り着くことがある。それが著者の言う「はみ出す」ことに繋がっていくんだと思う。

その結果として「起業」という選択をするかもしれないし、会社に残るという選択をするかもしれない。

焦る必要はない。
何度もピボットを繰り返せばいい。

大事なのは、理想を描くことではなく、行動を起こすことだ。一歩踏み出して、踏み外して、はみ出すことを体感してみることなんだ。


参考リンク

東洋経済新報社『起業家の思考と実践術』

いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集