【読書記録 -134】問いを立てる力
PRとはなんだろう
さて、みなさんは「PR(パブリック・リレーションズ)」と聞くと、どのような仕事を思い浮かべるだろうか。
プレスリリースを書く人。
SNSを運用する人。
広告やメディア対応を担当する人…
ボクもそんなイメージだった。
この本のタイトルは『問いを立てる力』だ。
そしてサブタイトルは、
ー世の中の最適解をともに考えるー
ー社会デザイン発想で共創する新しい「あたりまえ」ー
装丁には薄~いオリーブグリーンのフォントで「Public Relations」と書いてあるものの、パッと見て広報担当者が手に取るとは思えない。…っていうか、ボクが広報担当者じゃないからこそ、この本に手を伸ばしたように思う。
関係性を設計し「価値」を共創する
本書ではPRを「企業などの組織体が、社会との良好な関係性を構築し、維持すること」と定義している。
つまり、PRとは情報発信ではない。
企業と社会との関係性を設計し、共に価値をつくる営みなのである。
近年、企業は利益だけを追求していれば評価される時代ではなくなった。だからこそ、本書がPRを再定義している意味は大きい。
本書『問いを立てる力』の著者 榑林佐和子、林直樹は、株式会社オズマピーアールに所属するPRの実務家。同社は企業や行政、非営利団体など幅広い組織のパブリック・リレーションズを支援し、「社会に問いを立て、新しいあたりまえを創る」を理念に活動している。

著者は本書において、PRの特徴を次の4つに整理している。
Public:社会全体を対象とする
Relations:企業と社会との関係性を築く
双方向性:一方的に伝えるのではなく対話する
継続性:長期的な信頼を積み重ねる
つまりPRとは「関係性」をつくる仕事だ。
著者は、その関係性が重要視されるようになった背景を5つ挙げている。
ESG投資の拡大
SDGsの浸透
人的資本経営への注目
SNSによる情報発信力の変化
社会課題に対する企業への期待の高まり
こうした世の中の変化によって、企業はこれまでのような「経済的価値」だけでは評価されなくなってしまっているのだ。
利益を生み出すことはもちろん重要だが、それ以上に、環境への配慮、地域社会への貢献、働く人への向き合い方、企業理念への共感などの「社会的価値」が企業の価値として評価されるようになったからである。
企業には「問いを立てる力」が必要だ
本書では、PRを次の4つのプロセスで説明している。
問い:社会へ新しい問いを投げかける
提唱:企業としての考えを示す
巻込:多様な人を巻き込む
喚起:社会全体の行動変容につなげる
そう、企業が最初から答えを持ってるわけじゃない。
問いを起点に社会と対話しながら、最適解を共創していく。それが本書の考えるPRだ。
カメラは焦点を合わせたものを鮮明に写す。
その代わり、焦点の合ってないところはピンぼけしてしまう。
もしかすると、この本が言いたかったのも同じことなのかもしれない。
見えているもの、見えてないもの
本書で著者は、ハードロー順守の視点からソフトロー順守へ視点を移していくべきと説いている。企業は「法律を守る」だけではなく「社会からどう見られるか」まで考える必要がある。
・ハードロー:法律や条例など、違反すれば罰則を伴うルール
・ソフトロー:ESG、人的資本開示、各種ガイドライン、社会規範など、法的拘束力はないものの企業評価に大きな影響を与えるルール
そして、著者はシンパシーとエンパシーの違いについても触れている。
・シンパシー:同情、共鳴、自分と似た境遇や意見が同じ相手に対して寄り添おうとする感情
・エンパシー:共感、感情移入、思いやり、相手の立場に立ち、自分とは異なる価値観を持つ人々の気持ちを想像し理解する能力
どこに焦点を合わせるかだ。
どっちが正しくてどっちが間違っているということじゃない。
どっちが優れていてどっちが劣っているということじゃない。
企業は企業の論理に焦点を合わせる。
社会は社会の価値観に焦点を合わせる。
どちらが正しいということじゃない。
焦点を合わせている場所が違うだけなんだ。
求められるのはどちらかの立場に立つことじゃない。
経営者、営業、広報、現場。それぞれが異なる場所に焦点を合わせている。それぞれに見えているものが違う。だから、見えていないものも違うはずなんだ。
PRとは、その違いをなくす仕事ではない。
異なる焦点を行き来し、それぞれの見えている世界をつなぐ仕事なのだ。
だから企業には「答えを持つ力」よりも「問いを立てる力」が求められるのだろう。
参考リンク
・Amazon『問いを立てる力』書籍紹介ページ
・株式会社オズマピーアール:ホームページ
