【読書記録 -142】フリーランス法と取適法(旧下請法)がわかる本
法律は何を守るのだろう
ボクは仕事柄「偽装請負」というワードに敏感だ。
あ、フリーランス法が施行されてからは「偽装フリーランス」と呼称するようになったんだっけな。
そんなフリーランス法は2024年11月に施行された法律だ。近年では働き方の多様化が進み、以下のような考え方の人が増えてきた。
自分の意思で仕事を選びたい
働く場所や時間を自由に選びたい
自分の技能や得意分野を貸した仕事に就きたい
職場の人間関係に縛られたくない
そういった働き方を求めてフリーランスとして働く人が、安定して仕事を続けられるような環境整備を目的として、フリーランス法は制定されたのだ。
さて、今日ボクが紹介する、本田雅幸著『フリーランス法と取適法(旧下請法)がわかる本』は、その「フリーランス法」とフリーランス法に共通点が多い「取適法(2026年1月に下請法を改正し改名した法令)」について、わかりやすく解説した本である。

この二つの法律が目指しているのは、取引を「見える化」し、お互いが安心して仕事を続けられる環境をつくることである。
どちらの法律も企業間取引のルールを明文化したもので、経営者だけでなく、管理職や購買担当者、フリーランスにとっても知っておきたい内容であるのは間違いないだろう。
フリーランス法が変えたもの
フリーランス法は、正式には「特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律」という。
労働基準法が会社に雇われる「労働者」を保護する法律だとすれば、フリーランス法は企業に属さず仕事を請け負う「特定受託事業者」を保護する法律だ。
その「保護」には2つの柱がある。
それは「取引の適正化」と「就業環境の整備」だ。
つまり、フリーランスが得られる報酬だけでなく、働き続けられる環境まで守ろうというのがフリーランス法の骨子であるのだ。
実務で特に押さえておきたいポイントは以下の通り。
発注者は、これまで続けてきた古い商習慣を見直さなければならない部分があるかもしれない。
業務内容・報酬・納期・支払期日などを書面やメールで明示する
報酬は原則60日以内に支払う
1か月以上の継続取引では、報酬減額・買いたたき・受領拒否・やり直しの強要など7つの行為を禁止
6か月以上の契約では、育児・介護への配慮や30日前までの契約解除予告が必要
ハラスメント防止措置も義務化
取適法が変えたもの
2026年1月に施行された取適法。
こちらの正式名称は「製造委託等に係る中小受託事業者に対する代金の支払の遅延等の防止に関する法律」だ。旧「下請法」を改正し、対象やルールを見直した法律である。
その本質は「価格を決める時代」から「価格を協議する時代」へ変わったということだろう。
その背景には、原材料費やエネルギー価格、人件費などの高騰がある。一方的に価格を押し付けるのではなく、コスト上昇を踏まえて話し合うことが求められるようになったのだ。
実務で押さえておきたいポイントは次のとおりである。
価格協議を拒否し、一方的に代金を決定することを禁止
支払遅延には年14.6%の遅延利息
取引記録を2年間保存する義務
手形払いを原則禁止
違反すると公正取引委員会による勧告や企業名公表の対象となる
法律が決めているのは「価格」ではない。
「価格を決めるまでのプロセス」だ。
だから重要なのは「いくらにするか」ではなく、「きちんと協議したか」という事実である。
法改正が伝えようとしていること
フリーランス法と取適法は対象となる事業者こそ異なるけれど、両者が目指している方向は共通している。
それは「立場の弱い人を守ること」だけではなく「取引を透明にすること」だ。
契約条件を書面に残す。
価格は話し合って決める。
長年の慣習であっても、不利益が生じる仕組みは見直す。
フリーランス法も取適法も、新しい義務を増やすためだけの法律ではない。もしこれまで「暗黙の了解」で行われていた取引があるのであれば、それを「共有された約束」に替えることを求めているのが「フリーランス法」と「取適法」なのだ。
参考リンク
・Amazon『フリーランス法と取適法(旧下請法)がわかる本』
・公正取引委員会「フリーランス法」
・公正取引委員会「取適法(旧下請法)」
・厚生労働省「フリーランスの就業環境の整備」
