(小説)騒音の神様 その1 子供の音が大好きな神様
昔むかしあるところに、子供の出す音が大好きな神様がいました。赤ちゃんの泣き声、子供が笑う音、走り回る音、子供の出す音全てが大好きです。
子供の音が聞こえると神様は、「元気な足音やなぁ、私まで元気になるよ。」「力強い泣き声やなあ、聴くだけで嬉しくなるわ。」「楽しそうな笑い声だ、この世で一番明るい音だ。音が輝いている。」と大きな声で言いました。わざと村の大人たちに聞こえるように言いました。
そんな神様の声を聞くと、村の大人たちもますます子供達の音が好きになっていきます。子供達の音を喜ぶ村は賑やかになり、村自体が明るく元気になり栄えていきました。神様は『子供の出す音が大好きな神様』とか『子供の音の神様』と呼ばれどの村でも歓迎されました。『子供の音が大好きな神様』はそうやって数百年を過ごしました。
そして21世紀がやって来て、2020年を過ぎたころ、神様は街を歩いていました。でも、街の静けさに驚き悲しみました。シーンとしていて街から元気な音が聞こえません。街を走る車の音は静かで、工事のうるさい音もありません。そして何より子供達の元気な音が聞こえません。静かな街に子供の元気な声が少し聞こえたかと思うとすぐに大人の声が割り込んできます。
「静かにしなさい。」「大声を出さないで」「走り回らないでうるさいから」「周りの人に迷惑だから。」と言われ街から子供の音が以前のように聞こえなくなっていたのでした。神様は、深く悲しみそして嘆きました。
「ああ、なんで街がこんなに静かになってしもたんやろか。それに、いつからこんなに子供の出す音がうるさいと言われるようになってしまったのかなあ。」
「もっと元気な子供の音を聞きたいなあ。」
神様はトボトボ歩きながら、20世紀に自分がしたことを思い返していました。「20世紀に、僕がやりすぎたのかなあ。」
「騒音を無くせば、子供の音だけが町に鳴り響くはずやったんや。そやのに音が全部、なくなってしもうた。子供たちの音をもっと聞きたかったんや。でも、たしかに昔のやり方と違うやり方をしてしまったからなぁ。時代に合わせたつもりやったんやけど。それが悪かったんかなあ。ワシが悪かったんかなあ。」
神様は、自分のしてしまったことを思い出しながら、少し涙を浮かべながら、静かな街を静かに歩いています。
神様は、どんなことをしてしまったのでしょうか。そして、『子供の音が大好きな神様』がなぜ『騒音の神様』と呼ばれるようになったのでしょうか。
神様の記憶は、20世紀、1960年代にさかのぼります。
