みんな危機に瀕した時「腑抜けるな」と叱ってほしい(鬼滅映画感想)
…のかもしれない。
『劇場版「鬼滅の刃」無限城編』を観た。
忘れないうちに感想をメモしようと思う。
私は映像で鬼滅を追っているので、ネタバレがないように公開2日目に観に行った。
夜の回だったけどほぼ満席だった。ちなみに映画上映前に広告が入るだろうと少し時間過ぎてから行ったら始まっていて急いで席についた。
多分上映開始から15分くらいは似たような人たちがパラパラと入って来ていた。
(映画館によってCM時間が異なることを失念していた。途中から入って申し訳なかった)
優しさと厳しさは同じということ
始まってから前半は、やっぱり普遍的な道徳感を描いているなという印象だった。
胡蝶しのぶが敵と対峙して倒れた時、唯一の身内で慕っていた姉が幻として出てくる。彼女は鬼に殺されているが、同じ鬼に倒されそうになったしのぶを叱咤する。
立ち上がれ、甘えるな、と鬼殺隊の隊士としてしのぶの前に現れる。
肋や鎖骨の骨が折れて、肺が潰され瀕死の状態の妹に向かって厳しい言葉をかけ続ける。
しのぶは弱音を吐くが、それに対して「お前は鬼殺隊の蟲柱だろう」と鼓舞する。
鬼滅の刃は全体を通して「成すべきことを成せ」と訴えてくる作品だけど、今回も随所でそれが見られる。
しのぶは姉の言葉に励まされ、最後の力を振り絞って敵に向かっていく。
やらなければならないときは誰にでもあってその時にほしい言葉は慰めではない。
厳しい言葉を掛けるというのは相手を信じるということ。
優しさと厳しさは同じものであるとこの映画は気づかせてくれる。
ちなみに鬼殺隊や他のキャラクターが主人公、他の人物に掛ける言葉は強く厳しくて、現代では敬遠されるような言葉が多い。
だけど何故か心に響き、嫌な感じがしない。
それは、本当に信頼している相手からの言葉で、その言葉を使う側も相手に本気で向き合っているからだと思う。
本人たちが心から納得して、深く考え、覚悟を持ってそれが最善だと信じているから。
多分その行為や言動から、見ている人はキャラクターたちの想いの本質を受け取っているからだと思う。
覚悟のかたち
お館様の最後のシーンは深く感動して、唯一無二のシーンだと思ったけれど、なんでこんなにかっこいいと思ったのか疑問だった。
見方によっては妻のあまねと子ども2人を己の作戦に巻き込んで共に死なせるという、かなり過激なシーンだと思う。
こんな場面好きだと言っていいんだろうか…子どもも2人亡くなってるのに…と思っていた。
でも、作品を通してその行為は4人一人ひとりの意思によるものであるとわかる。
ここでも「成すべきことを成す」という覚悟が描かれていた。
今回の映画では生き残ったお館様の3人の子どもたちが懸命に鬼との戦いを支えている。亡くなった両親、姉たちの意思を継いで、彼らが繋いでくれた鬼討伐のチャンスを最大限活かすため必死に働く。
お館様たちが囮となって亡くなるシーンは様々な感情が湧き上がる。
でも最終的には4名の「覚悟そのもの」が強く印象に残る。
鬼の囮となること、屋敷ごと自ら爆発すること、それ自体が彼らの覚悟を見える形で表現している。
だから印象に残るし、違和感がない。有無を言わさず納得させられる。
継承について
お館様の残された3人の子どもをはじめとして、登場人物はみな誰かの意思を継いでいる。
人は死んでも必ず残された人の中に生き続け、その意思は継承されていくと物語全体を通して見せてくれる。
鬼滅は自分ではどうしようもできないことを数多く描いている。
努力によっては埋まらない事実と残酷さ。病気、体の弱さ、体型などキャラクターはそれぞれ様々な困難を抱えている。
胡蝶しのぶを例にとっても、彼女は身体が小さく、他の隊士と違い鬼の首を切って落とす力がない。それでも、彼女は不断の努力で毒で鬼を倒す術を身に着けた。鬼殺隊の柱にまで上り詰めた。
だけど圧倒的な敵の力の前では通用しない。力が及ばず鬼によって殺されてしまう。
どんなに努力していても、残酷なまでに変えられない現実がある。
その事実も淡々と誠実に描いている。
どれ程望んでも、力の差によって望みが潰えることがある。
本人の意思や努力とは関係ない。
ただ、この作品では結末が本人の望んだものではなくても意味はあると教えてくれる。
それは確実に次へと受け継がれていく。
しのぶをはじめ、人は生前関わった人すべてに影響を与えている。
彼女とともに生活した者、彼女に救われた者、共に戦った者たちへ。
ただ在ること、優しさと厳しさを持ち死に物狂いで努力した彼女が、ただ生きているだけで確実に世界へ影響している。
それを教えてくれる。
猗窩座の最後
今回の作品では炭治郎因縁の相手、猗窩座との戦いと彼の過去と救いがメインテーマになっている。
物語の終盤、猗窩座の過去が明かされ、彼の入れ墨が罪人の証であったとわかる。
彼はスリを繰り返し、人間の頃はたくさんの人を殺していた。
鬼になった後でも、鬼殺隊はじめ人を殺すことをなんとも思っていないように描かれている。
そんな残忍な猗窩座だが、彼の最後を見た時、彼のために良かったねと思ってしまった。やっと救われたのだろうか…よかったな…と。
ドラマや漫画、様々なシーンで過去罪を犯した人の救いが描かれてきた。その中で、時折強烈な違和感がある場合がある。
本人はいいかもしれないけど傷つけられた被害者たちのこと考えてなくない?みたいな結末だったり、罪がなかったかのように帳消しになったり。
被害者が不在のような振る舞いをされたりする。
今回も、確かに被害者に向き合っている感じではない。
ただ、猗窩座は炭治郎、義勇と戦うことで、少しずつ自身の過去を思い出していく。
自分に大切な人がいた事、命に変えても守りたい人を守れなかったこと、復習で人を殺したこと。
自分が強くなりたかった理由は大切な人を守るためだったと思い出す。
でも大切な人は自分がいないときに死んでしまっていた。それを2度も体験している。
一度目は自分の罪を憂いて父が自死し、2度目は自分を引き取ってくれた親子が逆恨みで毒殺される。
猗窩座は毒殺した犯人たちを殺害して無惨に見出され鬼になった。
彼の過去は本当に辛く、救われない。彼の悔恨、どうしようもなさ、現実の残酷さが嫌ってほど丁寧に描かれている。
それを思い出して猗窩座は苛つく。思い出したくもない過去を掘り起こされたと苦しむ。
そんな時、大切な人の幻が猗窩座に語りかけてくる。
死者との対話で、猗窩座は自ら死を選び、救われていく。
他者を内在化するということ
鬼滅では、要所要所でキャラクターたちが亡くした大切な人たちが語りかけてくる。
でも、死者が本当に話しかけているわけではない。
キャラクターたちが内在している、大切な人と自ら対話している。
自分が心から好きだった大切な人は、今ここにいたらこう振る舞うだろうということが幻想となってたち現れる。
いや、多分幻想ではなく、本当に現実としてそこにいる。ここに「在る」とはそういうこと。
どこまでも自分自身と向き合っているようで、同時に限りなく他者と対話している。
それが救いを生み、見ている人の心を動かす。
本質を描くということ
鬼の過去ってこういうこと起きたら嫌だけど確実に存在するものだったりする。
自分ではどうしようもできないこと、消したい罪だったり、どんなに後悔しても戻れないことだったり。
例えば車を運転していて不意の事故で誰かを殺してしまうみたいな、辛いけど誰にでも起こり得ること。
それが現実になっていない時は自分とは関係なく過ごせるけれど、ただ、確実にそういうことはある。
それが起きた時のあらゆるパターンを見せつけてくる。
圧倒的な現実を描いている。
そして、それが起きた後どう生きるのかを描いている。確実に生きていかないといけないし起きる前には絶対に戻れない、その後どう生きていくかをたくさんのキャラクターを通して見せてくれる
自分に当てはまる共感できる話もあればキャラクターを通して疑似体験させられるものもある。
本質を描いているので、確実に観る人に刺さる。
鬼滅を通して思うのは、普遍的な人の本質を描いているということだと思う。
人の道を外れるな
優しさは圧倒的な強さである
己に課せられた成すべきことを成し
人のために自らの力の最大限でできることをしろ
…
作中では気持ちのいい人がたくさん出てくる。
その人達をずっと見ていたいし、ずっと側にいてほしい。
その人たちに認められたい、彼らに恥じない行いをしたい。
鬼滅を観ているとそんな風に思う。
映画を通して、観客もまた自らと向き合っている。
見終わった後、少し自分が変わる感覚。
鬼滅の作品を観るたび、そんな風に実感する。
だから何度も足を運ぶし、大ヒットなのだと思う。
以下ちょこっと感想
・看護、介護について
鬼滅では布団のシーンがとても多い 病気を患っている者、心が塞いでいるもの、布団に横たわる人との会話がとても多い
介護や看護の問題も出てくる 介護疲れで自死する人もいるし、献身的に介護し続ける人も出てくる
そして病に倒れても圧倒的な存在感で周りと関わり続ける
・無我の境地が透明ってすごい 悟り…ってこと????
無意識を扱ったり全体通して人の根源的な問いなどと物語をつなげるのがすごい
・鬼ってなんだろう…なんだろう…
・初めて観る演出多い
音楽めちゃくちゃかっこいい
いろんな音が鳴っている
初めて聴くような音が鳴ってそれがシーンを印象づけてる
ずっとかっこいい
アクションも映像もすごい
日本で今一番すごいアクション映画って鬼滅をはじめとしたアニメ作品なんだなと思った
ずっとそうかもだけど
見たことない映像と音楽で新鮮な驚きで目が離せない
・しのぶさん怒っていることを素直に口に出すのとてもいい 怒りってとても大切
個人的に怒りを表明するの苦手だから自分の怒りを大事にしたいと思った
・継承とは子を成すことだけではないということ
・色々な家族の形がある こうやって家族になっていくという過程も描かれていて尊い
・とても日本的な道徳観が描かれているけど一人ひとりが自らの意思で行動しているので嫌な感じがしない いや、それに抗う人も描かれているから嫌な感じがしないのかな…もうちょっと考えよう

