アリ・アッバシ監督「アプレンティス:ドナルド・トランプの創り方」(2024年)批評。

「空虚」に満ちた映画であることに気付くのにラストまでわからなかった。
「考察」的な映画はあまり得意ではなく、好きではないのだが、そういうタイプの作品で、映画の構造が賢しい作品ではある、と思う。

その「空虚」というのは、まさに本作の主人公ドナルド・トランプ(セバスチャン・スタン)にある。
映画の中盤辺りから、何だかずっと「再現ドラマ」みたいな映画だなぁと感じ、これはとても面白くないと思い始めて、ラストまで来てしまってハッとさせられた。

本作の最も批評的なところは、トランプが、つまりは「映画にするような面白い人生」の持ち主ではないということ。
そのことに意図的に、示唆的なのがラストの自伝を巡るやりとりだ。

成功の為の3つルールというのも、中身を見れば、同じことしか言っていない。
それも「成功の為」という秘訣めいたものではなく、とにかく「ゴネろ」ということ。
そこに人間の感情の奥行きを僕は見出せない。

映画のポイントとして、トランプがロイ・コーン(ジェレミー・ストロング)に指南されるまま、権力を手に入れ、括弧つきの「ドナルド・トランプ」として完成していくということだけを描いているということ。
それ以外は、まさに空虚で空っぽな人間であるということだけを示している。

まさに現代のアメリカ、あるいは日本も含めて世界的に同時に起きている空虚さによって権力が肥大し、個人の自由が踏み躙られていることの根幹が映し出されている。

「ルール1:攻撃、攻撃、攻撃」「ルール2:非を絶対に認めるな」「勝利を主張し続けろ!」というそもそもが対話の成り立たない浅薄なチンピラの話をずっと観続けるのは正直に言ってつらい。
それは現代の日本でも、日常的にうんざりさせられている光景だからこそ、さらにゲンナリする。
しかし、そのことだけを描くことが本作の目的であり、最も冷ややかなトランプを含むそれらの権力者への批判となっている。

この作品のアプローチの是非はよくわからないというのが本音だが、ただただこんな現実を生きていることだけは、虫唾が走る。

追記:
加齢により髪も薄くなってきたことを気に病んでいたが、それでも、ちゃんと年齢相応にハゲていくことを受け入れることが真の「男らしさ」だと思った。

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