【あなたの2000年代を聞かせて】第2回ゲスト:ジャガモンド・斉藤正伸(その③)
カンノアキオが様々なゲストを招いて2000年代についてトークする連載。第2回のゲストはお笑いコンビ・ジャガモンドでツッコミを担当し、「映画紹介人」としてメディアで活躍する斉藤正伸さん。(その③)では、TBSラジオ『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』への出会い方について、音楽側からのカンノと映画側からの斉藤さんで語りました。(その①)(その②)は下記リンクから。
カンノ:斉藤君とは是非話したい話題があって、宇多丸さんの話がしたいです。
斉藤:なるほど。
カンノ:宇多丸さんの捉え方が僕らはまるで違うという観点で話せたらと思います。僕は宇多丸さんのことをHIPHOPグループ・RHYMESTERのMCの認識で、その人が「TBSラジオで冠番組やるんだ」という衝撃があって、それから18年ですよ。
斉藤:そうだね。
カンノ:で、おそらく斉藤君は全然違う出会い方をしてるよね。そもそも宇多丸さんのことを知ったのは映画から?
斉藤:そうそう。2009年か2010年頃、大学の先輩に「映画好きなら絶対聞いたほうがいいよ」と言われて『ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル』を知りました。
斉藤:当時、日本語ラップで知ってるのはRIP SLYMEとかKREVAくらいだから、失礼ながらRHYMESTERという存在は知らなくて。で、当時はザ・シネマハスラーというコーナーだったけど、そこから聞き始めたね。
カンノ:そもそも映画評論には触れてた?
斉藤:俺個人としては、『キネマ旬報』という雑誌を高校生のころから買って読んでたんだけど、映画を作っていない第三者の人が映画を評論するという文化に対して、そんなにハマってなかったの。まぁ、今まさに俺がやってることなんだけど(笑)
カンノ:当時の斉藤は、今の斉藤を見たら「なんだコイツ」って思う(笑)
斉藤:そうそう。「お前、関係ねえだろ」って思っちゃう(笑)でも、その宇多丸さんのラジオをきっかけに高橋ヨシキさん、町山智浩さん、てらさわホークさんとかが出ているのを聞いて、そこで初めて映画の当事者じゃない人が無邪気に話している感じがよかったね。
斉藤:それが評論か評論でないかはさておき、映画についてこれだけしゃべれて、それがエンタメになるっていうことを知ったのは宇多丸さんのラジオがきっかけだね。
カンノ:この違いはあるよね。宇多丸さんを富士山に例えると、静岡側から登るのか、山梨側から登るのか。俺と斉藤はその登り口が真逆だったんだと思う。
斉藤:そうだね、正反対だね。
カンノ:僕にとっての、そもそもの音楽を好きになるうえでのRHYMESTERの存在は大きくて。さっきから話してる、うっとりしながら目を瞑って歌っている人がいるとしたら、そういう人をハリセンで叩く感じで歌ってる気がしたのはラップという歌唱法だったの。
斉藤:なるほど。
カンノ:で、僕にとっての宇多丸さんは、理屈っぽくて説明っぽくて言葉がうるさいラッパーの第一人者だったの。その歌い方や歌詞の内容が性に合ってた。だから、ツッコミ目線なんだよね。それが聴き心地がよかった。で、これもさっき話したことと繋がるけど、売れた人の立場では歌えなくなったことが多くなったというか。倒したい敵がいない立場なんだよ。
斉藤:そうだね、さっきと同じ話に戻ってくるよね。それは映画評にも言えて、昔の宇多丸さんって邦画を片っ端から叩いてたんだよ。当たり屋として。
カンノ:俺は映画『ROOKIES 卒業』の評論で涙が出るくらい笑ったことを今でも思い出せる(笑)
斉藤:そうだよね(笑)あとは『SPACE BATTLESHIP ヤマト』とかの酷評のやり方って時代的なものだったじゃん。あれは深夜にこっそりと、大企業が売り出してヒットしている邦画の悪口を言ってることに、聞いてる側は快楽があったじゃん。それってみんなが内心思っていた「日本映画ってつまんねえよな」っていう当時の雰囲気。あれは誰も言ってなかったというか、中心になって言ってくれる人がいなくて。
カンノ:そりゃそうだよね、損な役回りでしかないから(笑)
斉藤:しかも宇多丸さんがよかったのは、公の電波のうえで、スタッフさんに「やらされてるんです」という体だったじゃん。スタッフが決めた映画のうち、サイコロで評論する映画を決めるというね。で、今こうやってYouTubeで映画のことを話す側になって思うけど、これは俺はやらないようにしてることなんだけど、映画の当たり屋チャンネルってあるんだよ。自分から文句を言うために映画を利用する感じのYouTuberが。
カンノ:私人逮捕系YouTuberみたいな映画評。
斉藤:そうそう。それって宇多丸さんと違うのは、宇多丸さんも一被害者で、指定された6本の映画のなかからサイコロで出た目の映画という枠のなかでやらされてて、しかも自腹で見て、何なら評論のために2回、3回見てっていうのをやってたから、ある種の当たり屋として機能していた。それって見せ方として見事だったと思うの。でも、宇多丸さん自身が影響力を持つようになってしまった。最初は一ラッパーが好き勝手言うみたいな感じだったと思うんだけど、今は帯番組になって時間帯も早くなったわけじゃん。で、そういう地雷を踏みそうな映画はほぼやらなくなった。そりゃそうだよね。
カンノ:時代的にもアウトになっていくからね。そもそも、タマフルから『アフター6ジャンクション2』に変わって、隣にアナウンサーがいるという処置になるのもわかるし。それこそ、「番組初期のタマフルを聞くとギョッとする場面が結構ある」って吉田豪さんも言ってるからね。
斉藤:そうだと思うよ。「今はアウトだな」っていうことって多いから。でも、その深夜のこっそり感とかに俺たちは影響を受けてしまっているからさ。「こんな角度の悪口があるのか!」みたいな。
カンノ:それって広い意味でお笑いじゃん。映画評論芸という芸を見てたから。
斉藤:俺もYouTubeで映画語りをやっているなかで、ポスト宇多丸さんじゃないけど、みんなが思っている映画に対しての不満を誰かが述べなきゃいけないみたいなものって、それは本来必要なかったはずなんだけど、宇多丸さんがいたおかげで、その次に入ってくる人が必要になってると思うんだよ。
カンノ:名付けられてしまって、枠ができてしまった。
斉藤:そうそう。べつに僕もそこを狙って動いている気持ちじゃないんだけど、YouTuberでそこを担わなきゃいけない感じというか。世の中で公開されている映画でクソつまらないものがあったとして、昔は宇多丸さんがやってくれたけど、今は扱ってない。そうなるとYouTuberとかが出番になると思うの。でも、これはしょうがないんだけど、みんな素人だから。宇多丸さんみたいに表舞台で活躍している人じゃなくて、素人がYouTuberになっていくから。だから、そこは担い切れてないかなって思うね。
カンノ:「誰でもできる」みたいなことが喧伝される時代だから思うけど、「誰もができるわけじゃない」っていうね。
斉藤:プラットフォームはあるけど、同じことはできないから。
カンノ:土俵は用意されてるけど、そもそもそいつに能力とか筋肉があるかどうかって意外と無視されがちだからね。
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