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休むということ#1 :【休む準備】健康第一だからこそ、お金の問題と向き合う

「あ~・・・やっぱりお金なんですね~」

休み方の4段階について話したら、
大学時代の後輩は、開口一番、こう言いました。

わたしは思わず目を見開きます。

だって「休み方」の一番初めに「お金の問題」を持ち出すなんて、あまりにも情緒がない。つっこみの1つや2つ、覚悟していました。
そんなわたしの反応を察してか、後輩は続けます。

いや、結局お金なんですよ・・・。
といいつつ、休職したことないんで、
制度のこととかよく分かんないですけどね

わたしもそうでした。
いざ休職するとなると、何から始めれば良いのかよくわからない。生活費はいつ、どこから、いくら振り込まれるのか。はっきりしないまま、お給料だけがとまる。
それでも体調が悪いと、申請作業すら負担に感じて、ついつい後回し。

そうして休職生活が始まっても、今までと変わらず、家賃・光熱費は引き落とされ、食費もかかります。会社から社会保険料や住民税も請求されます。そこに治療費・薬代。

わたしは、療養生活を通じて「休み方」を模索してきました。「その中で、一番の“ファインプレー”は?」と聞かれたら、「休職する時の、社会保障手続き」と答えるでしょう。

だからこそ、最初に「長期的な見通しを立てる」ことについて考えてみたいと思います。


健康第一だからこそ、お金と向き合う

これは休職になるかも。
そう思った時、真っ先に確認したのは「就業規則」と「社会保障制度」でした。

当時はまだ休職前。
通勤するだけで全身に痛みがはしり、出社後はまずソファで横にならないと仕事が始められませんでした。それでも労基署・保険組合とやりとりを重ねながら、社会保障制度について調べ、会社との調整作業を進めていきました。

当時のわたしに必要だったのは、治療法より先に、
「来月も生活できる」という見通しだったのかもしれません。

生活を守るため、制度を理解する

会社員の場合、生活を保障してくれるのは、労災か傷病手当金です。どの制度を利用するかで、その後の生活は変わってきます。
だからこそ、上司・労務担当者に相談することはもちろん、自分が利用できる制度は何かを知っておくことが、「休む」ための第一歩になると思います。

労災:
仕事が原因で労働者がケガや病気をしたり、亡くなったりすることを「業務災害」、通勤途中に生じたものを「通勤災害」といいます。

  • 給与給付基礎日額の 80%

  • 治療費は労災指定病院であれば窓口負担なし

  • 業務災害の場合、解雇制限がつきます。

傷病手当金:
健康保険の加入者が病気やケガで働けなくなり、給与が支払われない期間に生活を保障するための制度です。

  • 標準報酬月額の 約3分の2(約66.7%)

  • 治療費は通常通り(現役世代であれば3割負担)

  • 支給期間は最長1年6ヶ月、休職期間は「就業規則」に則ります。

実際どれくらいのお金が必要になるのでしょうか。
平均的な会社員を例に、簡単なシミュレーションをしてみます。

シミュレーションをしてみる

国税庁の「令和5年分民間給与実態統計調査」によると、平均年収は460万円(平均給料・手当が388万円、平均賞与71万円)なので、その数値を使います。
※制度や金額は加入している保険組合や勤務先によって異なります。詳細は担当者にご確認ください。

(例)労災の場合の収支
(例)傷病手当金の場合の収支

ご自身の数字と置き換えてみてください。
まずは、休職中の収入がいくらで、生活にはいくら必要なのか。それが分かるだけでも、療養生活の見通しが立てやすくなります。

自分のために、最善の選択を

それでは、労災と傷病手当金、どちらを選べば良いでしょうか。
まずは「自分がどうして病気になったのか」を確認しましょう。仕事中・通勤中のケガや病気であれば労災、それ以外であれば傷病手当金を検討するとよいでしょう。

特に、コロナ後遺症のような内科的疾患について、会社は労災を積極的に案内をしてくれないというのがわたしの見解です。

  • 労災の対象だと知らなかった

  • 担当者が不在、知識がなかった

  • 会社に書類記入を拒否された

休職中の生活が左右されるにもかかわらず、こうした理由で適切な制度利用がとざされてしまうのは、非常にもったいないことだと思います。

「休職したら、みんな迷惑かけるな」
「それで労災なんて、申し訳ないな」

そう思う人もいるかもしれません。
労災も傷病手当金も、体調を崩した人が安心して休み、社会に戻ってくるための制度です。それは、本人だけでなく、職場や社会全体にとっても大切なことです。

大切なのは「労災を勝ち取る」ことではなく、自分にどんな選択肢があるのかを知っておくことです。その上で、元気になることを最優先に、最善の選択をしてほしいと思います。

労災申請で知っておきたいこと

コロナ後遺症について、書類記入を拒否された話もよく耳にします。しかし、労災の判断をするのはあくまで労働基準監督署であることを、まずは知っておいて欲しいと思います。

サインをする上司自身が「制度をよくわかっていないだけ」ということもあります。

わたしの場合、厚労省の資料を共有したり、労基署の方の見解を伝えることで、少しずつ会社と歩み寄ることができました。特に直属の上司は、労基署への聞き取りにも快く協力的していただき、本当にありがたかったです。

新型コロナウイルス感染症の「罹患後症状(いわゆる後遺症)」に悩む方の治療と仕事の両立に向けたご案内

労働基準監督署

新型コロナウイルス感染症による罹患後症状の労災補償における取扱い等について

厚生労働省労働基準局

労災は、認定までに時間がかかることも知っておいてください。
申請内容によって、3ヶ月なのか、9ヶ月なのか。それによって当面の生活費をどう確保するか、生活の仕方も変わってきます。

申請には気力と体力が必要です。まずは傷病手当金を利用するかどうかも含めて、労基署や保険組合に相談してみても良いかもしれません。

傷病手当金のポイントは、家計の見直し

傷病手当金を受給する場合は、一度家計を見直しておくと安心です。

ちなみに、わたしは収支の把握に、マネー・フォワードという家計簿アプリを使っています。クレジットカードや銀行口座を連携すると、毎月の収支を自動で計算してくれるので大分助かります。
こうした「自動化してくれるもの」は、療養する上で、頭と体の負担を減らしてくれる心強い味方です。

収支を確認して「赤字だ!」と、慌てないでください。
休職すると、お金の使い方は大きく変わります。まずは、その変化を見てみましょう。

(例)休職前後の支出割合

①休職中の支出を見直す
勤務中のランチ・カフェ代、外出を伴う趣味・交際費、その為の衣服・美容代が大きく減っています。
一方で、存在感を増したのが社会保険料・住民税です。給与天引きではなくなる為、後日会社から請求されますので、心づもりしておくと安心です。

②貯金額を確認する
毎月5万円の赤字として、半年の休職で30万、1年で60万。
「あとどれくらい生活できそうか」が見えることが、安心につながることもあります。

③それでも厳しければ、減免・猶予の相談をする
社会保険料は会社に、住民税は自治体に相談できる場合があります。
奨学金を返済している場合、休職による「減額返還制度」が用意されています。

見落としやすいのが社会保険料です。
わたしは突然、半年以上分の社会保険料がまとめて請求されました。分かっていたものの、あまりの金額の大きさに、メンタルにきました。

大切なことは、自分が何にどれくらいお金を使っていて、休職によってどう変わるのかを知っておくことです。

休むための第一歩:信頼できる人の力を借りる

休職するほど体がつらい状況で、
お金のことなんて考えたくないかもしれません。

しかし、お金は生活の基盤です。
特に治療法が確立していないコロナ後遺症では、療養生活が長期化すると、生活困窮のリスクと隣り合わせです。

制度を知ることも、現状を把握することも大切です。
ただそれは、何もかもひとりで解決するためではなく、困った時、早めに誰かに頼るためにです。

進化論・行動学のニコラ・ライハニ教授はこう言います。

「協力」はヒトがもっている強大な能力で、ヒトが地球上で生きのびてきたり、あらゆる環境で繁栄しているのもこの能力のためである。

お金の問題は、他人が安易に踏み込めない領域でもあります。
もし困ったこと、不安なことがあるなら、自ら勇気をだして周りの人に頼って欲しいと思います。

療養期間がどれほどになるのか、誰にもわかりません。わたしは半年で復職するつもりが、今すでに3年半が経とうとしています。

健康の問題は先が見えないからこそ、
見える部分だけでも、見通しを立てておくことが大切です。お金だけでなく、困った時の頼る先を含めてです。
そうして、少しでも安心して眠れる環境を整えることが、休むための土台になります。


次回は、「心を休める」です。
呼吸を通して、今抱えている「息苦しさ」に気づきます。

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