音楽夜話#32|夏になると聴きたくなる音楽 ― ボサノバの10年
昨日の熊本地震の報に接し、被災された皆さまへ心よりお見舞い申し上げます。
大きな揺れの中で不安な夜を過ごされた方々、今も安否のわからない方々、不自由な生活を送られている方々がいらっしゃることを思うと、胸が痛みます。
被災された皆さまの一日も早い復旧と、穏やかな日々が戻りますことを心より願っています。
このような時に音楽の話を書くことが、果たしてよいのだろうかと迷いました。
けれど、音楽には人の心に寄り添い、悲しみの中に小さな灯りをともす力があると信じています。
今日は、ブラジルで生まれたやさしい音楽、ボサノバについて綴ります。
夏になると、街のあちらこちらで耳にする音楽。
それが、ボサノバではないでしょうか。
ボサノバ(Bossa Nova)は、1950年代後半にブラジル・リオデジャネイロで生まれた音楽です。
一つの音楽ジャンルとして世界を席巻した期間は、わずか10年足らず。
それ以前のブラジルでは、「サンバ・カンサォン」と呼ばれる、ゆったりとした情感豊かな歌曲が親しまれていました。
その流れの中から、ジョアン・ジルベルトらによって、より洗練されたリズムとハーモニーを持つボサノバが誕生したのです。
1958年、ギタリスト兼シンガーのジョアン・ジルベルトが発表した『想いあふれて(Chega de Saudade)』が、そのスタイルを確立したと言われています。その後、作曲家アントニオ・カルロス・ジョビンらが手がけた『イパネマの娘(The Girl from Ipanema)』や『波(Wave)』などは世界的なヒットとなり、現在でもカフェやホテルのラウンジなどで流れる定番のBGMとして親しまれています。
ボサノバには、派手さはありません。
ギターはささやくように爪弾かれ、歌声も決して力まず、まるで耳元で話しかけるよう。ジャズの洗練とサンバのリズムが溶け合い、肩の力を抜いてくれるような心地よさがあります。
そのためでしょうか。真夏の強い日差しの下というより、夕暮れの海辺や木陰を渡る風、アイスコーヒーの氷が静かに鳴る午後――そんな情景が自然と浮かんできます。
私が初めてボサノバを意識して聴いたのは、やはり「イパネマの娘」でした。それから、「コルコヴァード」「おいしい水」「トリステ」など。
そして、ボサノバを語るうえで欠かせない人物が、アントニオ・カルロス・ジョビンです。
ボサノバは、技巧をひけらかさず、音を詰め込まず、余白を楽しむ音楽です。
夏になると、また聴きたくなる。
そして、また弾きたくなる。
ボサノバには、そんな不思議な魅力があるように思います。
🎵 『Chega de Saudade(想いあふれて)』
ボサノバの出発点。ジョアン・ジルベルト
ボサノバはここから始まったのです。
🎵 『The Girl from Ipanema(イパネマの娘)』
世界中の人が知っているボサノバの代表曲。
スタン・ゲッツ&ジョアン・ジルベルト(アストラッド・ジルベルトが歌う版)が名盤
今夜も、お越しくださりありがとうございます🍹
