モンゴル旅行記 ❷
↑本シリーズまとめ
2026年7月11日土曜日
(2日目/ナーダム開会式)
0630起床。
テレビをつける、相変わらず夢中になってしまう。ザッピングを繰り返すと、モンゴルのバンドが演奏している。馬頭琴やモンゴル琴(ヤタガ)、打楽器などを織り交ぜたメタルバンドやプログレバンドが続く。さらには歌唱法もモンゴル独特のもの。
かっこうぃ…録画HDDとか持ってきたきて、無理やり録画したい。
[Altan Urag]、youtubeで見たときは、ホーという感じだったが、ここでの演奏はまじ素晴らしかった。
いま知ったが、2009年にフジロックに来てたのだった。
そのほかも良いバンドが続く。いちいち写真を撮ってたら訳わからなくなった。

途中で占い番組?も見たけど、全然何が何だかわからなかった。マトリクスの占い図ってよくあるんかな。


口とマイクが離れすぎて、ほとんど雨の音
カーリーさんも目を覚ましたので、出発できるように荷物をまとめる。
0800ガイドホテルは朝食付き。一階のレストランにエリちゃんと集合することにした。
昨晩気づかなかったけど、廊下にはウォーターサーバーと自販機(コンドーム)。ウォーターサーバー、まだ飲む勇気が出ない。
レストランに入るとビュッフェスタイル。まあ、それほどメニューはないんだけど。




エリちゃんと合流し朝ごはん。
このとき、久しぶりにアジアの生野菜を口に入れたのだが、急にウッとなってしまった。実は幼少期、父の転勤で数年間だけフィリピンに住んでいて、なんかその時の記憶から、アジア〜って場所で生野菜食うのをトラウマっている(ごくたまにインド料理屋のサラダですらキツイ時がある)。が、一口飲み込んだら、その後はいけた。
昨晩、エリちゃんは部屋に戻り、ヘアドライヤーがないことに気づいたらしい。僕たちにLINEをしたが、寝てて返事なし。
そして仕方なくロビーに電話したらしい。のだが、出たのは英語が通じない男性。
OKと言って、電話を切ると、数分後に部屋にやってきた。iPhoneをこちらに向けると、Google翻訳を差し出された。ドライヤーを借りたいというと、Google翻訳で「どっかの客が持っていって、それから無い」的なこと。結局ドライヤーは諦めたらしい。
◼︎ナーダムへと出発
0810頃。
今日はついにナーダムへいく。
ここで皆さんに現地ツアー会社から頂いたスケジュールを公開。
バス朝、08:30専用車。。。を出発。
ウランバートル市内のナーダムスタジアム
10:00ナーダム祭の開会式、モンゴル相撲、弓競技をご見学頂きます。
スタジアム周辺の出店などナーダムの雰囲気を味わいながら周辺散策。昼食は:スタジアム中にモンゴル料理の昼食(ナーダムホーショール)ナーダムの時期は代表的なモンゴル料理「ホーショール」とモンゴル伝統的な料理ホルホグです。
その後、専用車にてウランバートル郊外の競馬場へ移動。競馬を観戦します。ウランバートル郊外の遊牧民のゲルへ移動。到着後、乗馬体験・ゲル1泊ホームステイ体験。満天星空観察。「遊牧民のゲル泊」
日本語ガイド名:ムー(仮)
ご飯を食べてると、ニコニコと笑顔のモンゴル女性が話しかけてくる。この方が僕たちのガイドをしていただくアーさん(仮)。
ツアー予定表には、ムーさん(仮)という名前が書いてあったけど、書き間違いだろうか。
「実はナーダムの日はモンゴル、渋滞すごいので、予定は0830だけど、少し早い0820にさせてほしいです」
あと10分くらい…一気に食い終わり、急いで荷物を詰めて、チェックアウトすることに。
部屋に戻り、荷物を詰める。差しっぱなしにしていたスマホの充電器を抜き、変換プラグを抜く、、、と、指先が感電。
変換プラグのアースとなっていた突起部分が、コンセントにうまく入っていなかったようで飛び出していた。なんとまあ触ってしまった。
いってぇえええええ!と叫んだが傷とかはない。かなり強力な電気が走った実感がある。泣いてもよかった。
「変換プラグは危険、抜く時は気をつける。」当たり前なのに忘れていた。
痛くて人差し指をずっとつまんでいた。
チェックアウトのカウンターで待っていたのは気さくなお兄さん。エリちゃんのヘアドライヤー事件のお兄さんらしい。
支払いたいと伝えるも、「???」という感じ。料金のことを何一つ理解していなかった。どこかに電話して料金を確認していた。
しかし3人2部屋分の料金を払ったのに、部屋が違うエリちゃんの分も追加で請求してきて、「払ったよ!」と説明。もしかして、手配し忘れてたタクシー代が含まれて無いかな…と、心配になって尋ねるが、「タクシー代…?」。よくよく調べて含まれてないことが確認できたので捨て置いた。愛おしいお兄さんであった。
0820アーさんの車(プリウスα)で出発。けっこう雨が降っている、なんてこった。どこに向かうのかわからないまま、自動車で20分ほど走らせる。モンゴルは右車線走行。しかし、日本製の中古自動車がすごい多い。右ハンドルなのに右側車線を走るので違和感。
0840スーパー駐車場。
ここで発覚したのだが、どうやら、僕らのような数名グループがこの駐車場に集められて、20名くらいがツアーバスに乗り込んで、ナーダム会場にいくらしい。「バス朝」ってそういうことか。
「早く着きすぎちゃった!わたし焦りすぎちゃったね!」とのことで、僕ら以外まだ誰もきてなさそう。アーさんの「このあと水を買うタイミングがあるか分かんないから、ここで買っとけ」という薦めによりスーパーで飲料水を買うことにした。
モンゴルはどこにいっても、アスファルトの舗装が凸凹で、水捌けが悪い。この駐車場の巨大な水たまり、道を選びながら進むが、もはや靴は濡れ始めている。
このスーパーめちゃくちゃ広い。イメージ的には小コストコ?と三人で話した。われわれ夫婦はコストコ未経験なので完全に想像だが。




こんな低い位置はボールとしての顔ハメ?
水はどのくらいいるんだ?と話し合い、1人1.5L買ってみる。水は種類がたくさんあった。スーパーの玄関に戻ると、すでにアーさんが車からバスへと荷物を移動してくれていた。ということでバス乗車。日本人観光客20人くらいがバスに乗る。

1000前、みんな集まって出発。結局スーパーに1時間近くいた気がする。
もともとのスケジュール「10時ナーダム祭」が気になるが、祭りのスケジュールよくわからないので、身を任せるしかない。
動き出したバス内では、細身長身のモンゴル男性がマイクを持って説明し始めた。このバスは集合場所スーパーからナーダム会場付近「ナーダムセンター」というところまで移動するらしい。
そこで降ろしてくれて、みんなでスタジアムに歩いていくという。この複数の観光客を束ねる中心的なガイドさん(細身高身長・中年男性)こそが、ムーさんであった。めちゃ日本語流暢。
話しているうちにバスはナーダムセンターの前で停車。人口が少ないモンゴルだが、観光客が集まり、ナーダムセンターはすごい人混み。ガイドさんが先頭で小さい小さいガイド旗🚩を持ち、みんな付いて歩く。この人混み、さらに傘の中で、旗は心許ない。


◼︎ひとりぼっちの開会式
ナーダムの会場となるスタジアムまで歩き続ける。ガイドさんは舗装されてる道から柵を越えて、びちょびちょの芝生へみんなを誘導する。スタジアムの13番ゲート前に集合した。ゲート前にてチケットが配られる。
ここでまたもや発覚。横3人並んだ席はないとの事。みんなバラバラだ。ナーダムのチケット取ることがそもそも難しいのだから仕方ないかな。というか、もうそう言うツアーなんだなと、だんだん慣れてきてしまった。
カーリーさん&エリちゃんはできるだけ近い席にしてもらって、僕だけ離れた席で鑑賞することになった。
同じバスのアラ還男性2人が、「席離れるなんて聞いてない」と渋りだし、チラチラとカーリーさんたちのチケットを狙い始めていたので、さっさと席に移動するよう勧めた。
僕は皆とはだいぶ離れた席。バックスタンド側というのか、舞台に対して直角にいる。そのため舞台で何が起きてるか正直あまり見えない。
左隣席はドイツ語を話す老夫妻、周りはヨーロッパ観光客が多い。あとから来た右隣席はアジアのセレブギャル、ずっと自撮りをしている。日本人観光客が少ない感じする。
髪ボサボサメガネ日本代表として、カメラを構えてちょこんと座り、30分くらい待ったら開会式が始まった。



開会セレモニーということで、今年は韓国の大統領が主賓として来ていた。
それぞれの挨拶が終わると、モンゴルのスターによる華やかなパフォーマンスが始まる。中央舞台の屋根にはチンギスの肖像画。
中央に設置した円形ステージ、その後ろに配置された弓形ステージ、そして芝生フィールド。これら舞台にゾロゾロと配置された民族衣装のダンサー、山や寺院を想起させる舞台装置。有名シンガーによるモンゴリアンポップスに合わせて、ダンスが始まる。
アーティストは、民謡歌手だけに限らず、ダミ声のラッパーなんかも参加する。ヒップホップが生活に根付いてると聞いていたが、ナーダムにも当然のように取り込まれている。
公式のYouTube動画を掲載しておく。
モンゴル語はわからないので正確なことはわからない。多分だけど、この盛大なパフォーマンスはいくつかのシークエンスに分かれている。
たとえば、最初の方に、英雄チンギスハーンから一つの国へとまとまった「モンゴル帝国」の始祖伝説と思われる演出。
そのあとは、モンゴルにまたがる複数の地域、そして複数の民族のアイデンティティ。
北部タイガ地方にいる民族、西部のカザフ系の民族などを取り上げる。それぞれに大幅なパフォーマンス時間を割き、それぞれ何組ものアーティストが現れては熱唱していく。
後半に近づくと、これまでの出演者が戻ってきてナーダムのテーマソングを歌い出す。
いわば横軸に置いた『空間』と言うテーマ、
これは広大な国土→各民族のエスニシティの多様性を表す。
それに対して、縦軸に置いた『時間』というテーマ、過去(チンギスという伝説)→未来(一つの国として、ナーダムを祝う)という構成だったのではないか。
社会主義時代に、各民族の特有の生活は抑圧され、アイデンティティ、歴史は訂正線を引かれ続けた。90年台以降、もう一度この多民族が一つの国家として成り立つには、モンゴルにとっての大きな物語が必要なのかもしれない。安直かもしれないが、そこの軸にはチンギスハーンというルーツが必要だったのでは。多民族を一つの国家として成立するための国家装置としてのナーダム。
ということを言葉がわからないので、勝手な想像で結論づけていた。まじで勝手な妄想、鑑賞中の所感です。
パフォーマンスが終わった出演者は馬やラクダに乗って、舞台周囲のトラックを駆け抜けて観客に挨拶をしてくれる。パシャパシャ写真を撮っていた…その時…!!
この歌は!!
ぼくが最も好きなモンゴルのポップスが生歌で!!!このヤバい中毒性!!
((うおおおおおお!))
叫びたいが、まったく知り合いもいない。
周りにモンゴル人もいないので、みんなボケーっと見てる。
鳥肌が立ち、マジで胸が熱くなり、泣きそうになった。が誰にも言う相手がいない。
そしてら気づいたら2時間経っていた。
セレモニーが終わり、チケットを持ってる人間は追い出され始めた。どうやらこのチケットはセレモニーの2時間だけらしい。周りのヨーロッパ人は一足お先にと、座席をズカズカと土足で踏んで進んでいってしまった。
…あれ、モンゴル相撲(ブフ)は…?
もともとこの旅行は、エリちゃんがモンゴル相撲が見たくて、それを目当てなんだけど。なんか、セレモニーに圧倒されてしまったが、いつもの不安が顔を出してきた。
バスツアーの集合場所に戻ると、案の定ツアー客はみんな、モンゴル相撲が観れないのかガイドに質問している。みんな困惑。ガイドも困惑。
エリちゃんも、アーさんにモンゴル相撲観れないのは困る、と相談している。
僕たち以上に、日本のツアー会社から予約した人たちは抗議し始めている。ツアーの予定とまるで違う!
日本のツアー会社で予約しても、結局は現地のツアー会社に委託されるんだ。ほんとうガイドツアーっていったい何が確かなのか分からないもんだな。
◼︎ホーショールという悪魔
ムーさんが、なんか有耶無耶にしたまま、「わかりました、あとで話し合いましょう!」とみんなを連れ出した。
お昼ご飯を食べるべく、スタジアム周囲にある食事テントへ団体移動。
なんだかよく分からないまま座席に着くと、食べ物が配られる。どうやらミンチ肉を包んだでかい揚げ餃子、ホーショールだ。

味はうまい。多分羊肉。
味はうまいのだが、油がすごい。揚げた時の油のせいかな。しかも1人につき5枚もある。まわりのメンバーはほぼギブアップ。
目の前の女子旅二人組は、体を3分の2くらいまで縮めるほど、キツそうだ。
どこからともなく現れた謎に快活な夫婦が女子旅2人に話しかける。「僕らは昨日からモンゴルで、こんなのばかり食べてましたよ、ははは」「あなた、ほんとホーショール好きね、モンゴル人なんじゃない?ほほほ」「このあともこんな料理ばかり食べることになりますよ、ハハハ」という(申し訳ないのだが)油の匂いにやられた2人にはおよそ辛そうな会話。エリエリレマサバクタニ。

長渕のコンサート会場付近のようだ
バスへ戻る途中、アーさんが「明日モンゴル相撲が観れないか相談しているからね」と言ってくれた。愛らしいアーさんを信じたい。
雨の中歩き、ナーダムセンター前からバスに乗る。どうやらここから1時間バスに揺られるらしい。
「馬のレースへいきます!」とのこと。
『馬のレース』はスタジアムとはだいぶ離れたところでやっているそうだ。仕方ないので、窓からとにかく景色を眺め続けている。

ムーさんが、マイクでみんなに話し始めた。
どうやらツアー会社社長と電話してくれた。「明日の相撲のチケットを確保した、明日の方がいい試合だ、安心して」という。
何はともあれ相撲は観れるようだ。しかし、みんながクレーム言わなかったら、チケット確保してなかったのかな。
◼︎極寒の競馬レース

1610到着すると草原。
小雨だが我慢できる。傘はささずに進む。
ここで3人のテンションは高まり始め、でかい声を出し、飛び跳ねながら会場に向かう。
それに合わせてバッタが飛び回ってる。
モンゴルのバッタはとにかくデカい。カマドウマなのかもしれないが、ジャンプしてゆっくり下降するために、羽根を揺らす。その時バチバチバチと音を立てる。結構イヤかも。

20分くらい歩くと会場っぽいところに。
レース会場周りにはステージが現れ、爆音でモンゴリアンポップスが流れている。その裏を歩いていく。
そのほかゲルや、お土産用の屋台などが出ている。ちらほらと乗馬している人たちが駆け抜ける。
しかし、雨がどんどん強くなる。
話を聞くとモンゴルでも相当珍しいレベルの暴風雨らしい。中国のほうに台風が横切っているけど、そういう気圧の変化も関係してるのかも。一年のお祭りがこんなことになってはモンゴル人こそ辛かろうに。
何はともあれ、みんなすでにクタクタ。アーさんが「傘ある?わたしのビニール傘貸そうか?」と優しい声かけ。みんな折り畳みを持ってたので、傘を差し始めた。数分後、もう、土砂降り。
ここで肝心なことに気づいたが、モンゴルの気温について触れていなかった。日差しが強いので勘違いされがちだが、モンゴルの夏は日本に比べて涼しい。7月上旬で、日中も平均25℃くらいかな。でも、寒暖差がとにかく激しく、昼間Tシャツで過ごせても、夜になると10℃とか?生きていくにはジャケットが必要。
そのため、この暴風と土砂降りはモンゴルではめちゃくちゃ寒い。上半身はゴアテックスとはいえ、靴も靴下もビチャビチャで全身が冷えはじめてる。
僕たちのアーさんは、ビニール傘が暴風で崩壊しており、ビッショビショ。


1630過ぎ。競馬会場の入り口に到着。
したのだが、ムーさんの一声「皆さん待ちましょう!」
入り口で10分くらい待たされる。
この土砂降りで、なぜ入れないんだ…嫌な予感。入り口付近では着飾った馬たちが横を通り過ぎる。馬に乗っているのはティーンズから小学生低学年くらいの子もいる。時々、馬同士を見せ合いっこ。

ガイドチームが祭りスタッフと10分話し合った結果、ツアーメンバーに突然「移動しましょ!」と言われて歩き出す。
何が起きてるんだ…説明がない。二、三分歩いて入り口から少し離れたところに一度みんなを集める。ムーさんからの宣告。
「みなさん、馬がまだ揃ってないため、レースが始まらないようです。見込みでは、2時間後スタートになりそうです!」
に…に、2時間後?
いま、1650頃。この寒くて土砂降りのなかで19時くらいまで待つの?
当初のレース予定では、16時くらいに競馬スタートだったはず。各地から馬が全然到着してないらしい。それもこれもこの暴風雨のせいなのだ。
雨宿りしましょーと、当面は階段の裏側に隠れる。ツアーメンバー同士、自己紹介もしないまま、びしょびしょな悲惨な顔を突き合わせ、震えている。ここまでくるとなんか笑えてきた。
10分くらい待ち、ガイドさんが休憩用ゲルを確保したからそこで温まろう、とのこと。休憩ゲルまで早足で10分くらい歩く。いろんなお土産屋の屋台が出店してるが、お客など誰もいない。本当は楽しいんだろうなぁ。どんどんびしょびしょになっていく。
1710、休憩用ゲルに到着。ゲルには何もないけど、雨風は凌げる。暖かくはない。数分間、ガイドさんたちで作戦会議。ムーさんがメンバーみんなに声をかける。
「ここで待ってても仕方がないですね!明日、馬見ましょ!ここで待ってると21時に終わって、泊まるゲルには23時に着いちゃいます。明日のほうがいい試合です!」
みんな、寒くて落ち込んでおり、もうなんでもいいぜ…という感じでコンセンサスは取られた。フラれたばかりの自暴自棄の女性が思ってもいない男性と付き合ってしまうくらい、なし崩しだった。

バスにまで土砂降りの中、また20分歩く。
マジでサミー!地獄のような20分。何も考えたくない。
「ほんと生きとったら色んなことあるよなー」と三人で泣いたり笑ったりしながらバスに戻る。早歩きで戻ったから、もうへとへとだった。
しかし、ビショビショで戻った我らを待っていたのは、ドライバー不在のバス。エリエリレマサバクタニ…
ムーさんたちがみんなで電話をかけてドライバーを探す。なんとか電話が繋がる。どうやらクソしてるらしい。この状況が漫画でしかなくてマジ爆笑してしまった。
ドライバーが遠くのトイレから歩いてくる。クソ後の人間なのでホクホクしている。
走れやっ!!!!

◼︎和解 / リアル・ステルス・アクション
1730ごろ出発。
馬を諦めた我々は、宿泊するゲルに向かうことに。みんな靴を脱ぎ、落ち込んでいる。隣の女子グループもどんよりしている。「いまこの泥だらけの靴脱いだらヤバいけど、脱がないともっとヤバいし、靴下を脱いで乾かしたいけど、絶対臭くなる…」
同じ状況なのに、自分のこと以上に心配になってきた。本当はSNSに馬の写真とみんなの笑顔をアップするはずだったのにね。
全日本むっつりスケベ代表として、お大事に…と心で呟き、靴下を脱いだ。くせえ。
1830頃。
それにしても車内に漂う疲労感と悲壮感。窓を眺めても大雨が続く。突然、小さいローカルスーパーに止まる。スケジュールのことはもう忘れたので何でもいい。
ムーさん「みんな、ウォッカ飲みませんか?こーなったら、みんなでウォッカ飲んで暖まろ!」
元気ないのもあるし、酒飲みが少なかったので、「え…」とみんな驚く。ムーさんはそのままウォッカを買いに行ってしまった。
僕らのアーさんが見かねて、「温かいお茶とか飲みましょ」と声をかけてくれて、スーパー併設の飲食コーナーにみんなを連れていった。
ブルブル震えるみんな。席に着くと、塩味のホットミルクティー「スーテーツァイ」がだされる。モンゴルでやたら飲むお茶。塩っぱいから苦手な人もいるだろうけど、いまは温暖な環境がありがたい。
ガイドさんがスーパーで買ってきてくれたチョコパイが一人一人に配られる。オリオン(韓国の会社)のお菓子だった。
チョコパイやスーテーツァイの味の話をしてるうちに、どこからきたの?出身は?など、ツアーメンバー同士で話すきっかけとなる。
ホーショールにやられてた女子旅2人や、アラ還ご夫婦と話す。YOUは何しにモンゴルへ?的な会話をしていた。
お茶会っていいね。少し打ち解け始める。
「ご馳走様、美味しかったです」とスタッフの人に伝えると、そっすか、と意外にドライだったのもオモロかった。

さてさてバスに戻る前に、僕は用足ししたくなった。スーパー外の公共トイレにひとりで行くことに。「モノを持ってくな…」と先にトイレを済ませたカーリーさんに言われる。「落としたらお終い」とエリちゃん。
嫌な予感がする。荒れ果てたスーパーの裏にトイレがあると言う。
すでに悪臭。
ガタン…と、少コンテナのドアが開く。
中から汚れ果てたボロボロのモンゴル犬が出てきた。
野犬…。
地球の歩き方にて、モンゴルの狂犬病の割合の高さ、噛まれたらほぼ100%感染…とチェック済みなので、ビビり始める。
どうやら、野犬が出てきた小コンテナが「簡易トイレ」。野犬はこちらに気づかずどこかへ去っていった。今年メタルギア・ソリッドをやり直しておいて良かった。音を立てずに早歩きでトイレに入る。
トイレを開けると、悪臭。そしてコンクリの床にはボットン穴。
奈落のように深い深い底が穴から見える。ここに携帯でも落としたら…。
モンゴルのトイレは水洗・ボットン問わず、使用後のトイレットペーパーをゴミ箱に捨てる。ゴミ箱から溢れ出る使用後のペーパー。
もちろん、トイレ事情は下調べしていた。だが正直、今回の旅で最初に出会ったボットンだったので日和ってしまい、なんと鍵もかけ忘れて小便を始めてしまった。小便しながら気づいた。メタルギアソリッド2以降であればお終いだ。
ドアが半開き…。女性が入ってきたらどうしよ…とかではなく、さっきのトイレ通いの野犬が入ってきたら…と最悪の事態を考え始めた。
野犬に恥部を噛みちぎられ、狂犬病で死…。ホラー映画で1番笑われそうな死に方…。
用足しが終わり、ホッとした。意気揚々とドアを開ける。
瞬間。さっきの野犬と、目が合う。
目が合った途端に、これは走ってはいけない、早歩きだ…と理解した。背中を見せすぎない。早カニ歩きだ。
同時にこうも思った。こんなに犬のこと怖いと思ったの初めてだから、犬の写真撮りたい。
野犬にカメラだけを向けて、早カニ歩きで逃げ去る。パシャリ。写真を撮った瞬間、犬が立ち上がり、吠えはじめた。駐車場までのドアはあと少し…こちらに向かう足音が聞こえてきた気がする。
死にたくなさすぎる…!
ドアを抜け、ここからは微ダッシュ。
スーパー玄関で振り返ると犬はもういなかった。ホッとした。

僕のリアルステルスアクションとは裏腹に、バスに戻ると、ウォッカ飲もーぜ!とまたもやムーさんがぶち上がっていた。みんな少し元気が出たので、飲める人だけウォッカを飲み始めた。
みんなで乾杯の合図「トクトイ」を唱えて、ポテチをつまみながらウォッカを飲んだ。ムーさんが饒舌になり始める。
「モンゴル人がウォッカであったまるってのは嘘、大昔からこんな酒ないし、寒い方が快適な人間だからね」「酒入った方が日本語上手くなる」など、最高のパンチラインをかまして、バス内の一体感が高まる。誰かが買ってくれたポテチを回す行為も良かった気がする。また少し会話が増えてきた。


◼︎ゲル/もてなし
2000ごろ。
2時間くらいかけて初日のゲルに到着。未だ小雨が降っているが、さっきの土砂降りに比べればマシだ。
バスを降りると、皿一杯のウェルカム食を持った女性。よく見ると角砂糖のようなそれ、口に入れるとすごい硬いし、すごい酸っぱい。予想もしていなかった味でびっくりした。どうやらモンゴルの乳製品。名前はわからなかった。美味しいけど、体力0の時はダメージにもなり得る。もう一度試したい気もする。
荷物を持ったまま、一番大きなゲルに皆を集められ、またスーテーツァイをふるまわれる。ゲルの家主、その奥様と娘さん2人、数人のお手伝いさん?たちがニコニコとストーブに薪をくべ、温かいゲルへ迎えいてくれる。
ここでゲルの部屋の構造の説明を受ける。天窓の話、チベット仏教の仏壇、天窓を支える2本の柱の間を通るのはNG、ストーブは馬糞を使って効率的など。面白い話をきいているのに、体がびちょびちょで真剣に聞けないでいる。なのでみなさん、地球の歩き方などを読んでください。
その後、羊の内臓料理をみんなに振る舞われる。本当は、羊の屠殺〜捌くところを見学させていただく予定だったそうだ。ハプニング続きで間に合わなかった。
ムーさんがどんどん内臓を切り分けて配ってくれる。羊の腎臓、心臓、血詰ソーセージなど。初めて食べるのだが、驚くほど全て美味い。この旅行で食ったものランキング1位かもしれない。シンプルに塩茹でしただけだと思うけど、いくらでも食える。新鮮だからこそ、この味にできるのだと思う。


内臓料理をいただいている間に、家主が男性たちから順番に歓迎の挨拶を始めた。
遊牧民は「嗅ぎタバコ」を持っている。イカした嗅ぎタバコ瓶には、粉末状の香り付きのタバコが入っている。摂取するときは指などにつけて鼻から吸う。
客人が来た際に、家主はもてなしの挨拶として、季節の挨拶をしてから客人に自分の嗅ぎタバコを嗅いでもらう。もちろん嗅いだふりだけでもいい。
その場にいるツアー客一人ずつに、季節の挨拶を贈っては嗅ぎタバコを渡してくれる。僕たちは皆、拙いモンゴル語で「バヤルララー(感謝)」と言っては、嗅ぎタバコを受け取り嗅いだふりをする。
後半に、お呼ばれされたエリちゃん。
家主から季節の挨拶「サイハン ゾスチ バイノー?Сайхан зусч байна уу? (よい夏をお過ごしですか)」を受けたら、エリちゃんはそのまま綺麗なモンゴル語で「Сайхан зусч байна уу? 」と返事ができてしまった。
家主はめちゃくちゃ驚き、そして嬉しそうに嗅ぎタバコを開け、特別対応で手の甲に嗅ぎタバコを塗ってくれた。特別なお客さんと認めてもらえたのだった。
ツアーメンバーもガイドさんもめちゃくちゃ驚いていて、エリちゃんの言語能力の高さを見せつけた。2ヶ月近く受験勉強並みにモンゴル語を勉強した甲斐があった。
実際エリちゃんとカーリーさんの2人は流石の言語能力の高さで、ありがとう「Баярлалаа」の発音を褒められていた。
本などでは日本人向けにバヤルララとか書かれてるけど、実際は最後のラが、過剰なLサウンドで、っツァーに近いらしい。僕は全然上手くならなかった。

今度は晩御飯の準備を見学。モンゴルのご馳走、ホルホグを作る。
調理方法は至ってシンプルで、大きい鍋に羊肉を詰めていき、肉と肉の間に焼き石も挟み込む。
1番上にジャガイモとニンジン、キャベツを追加したり、大量の塩をばら撒いたり。あとは蓋をして蒸すだけ。
焼き石を直接入れて蒸す、というのは昔、ボーイスカウトをやっていた小学生の頃に体験したことがあった。けどいつ見てもこういう荒っぽさは興奮する。
もう、21時を回っていたけど、これを今から食うことに誰もが驚きを隠し得ない。


◼︎ゲル=中年の詰め合わせ
さて、ホルホグの完成まで1時間近くかかるらしいので、各自、宿泊するゲルに案内される。21時だけど、やっと空が白んできたくらい。
ここでまたもや発覚したのが、「男性客6名は一つのゲルに寝てもらいます。女性客も、場合によってはグループ混ざってもらいます。」とのことでした。
と言うことでワタシは中年男性6人ゲルに行き、カーリーさんとエリちゃんは初対面の女性と4人で寝ることに。もうみんな大人なので一晩くらいなんとも思わないんすけど。ほじゃ、また晩御飯でねー、とカーリーさんたちとお別れ。
中年男性(6人中4人がアラ還、1人20代)が顔を合わせ、ポツポツと話し始める。いやぁしかし雨には参りましたねぇ、スケジュールと全然違いますね、食い物の量が半端無いっすね…など。だんだんと自己開示が始まり、海外経験などを話していた。

雨は一時的に落ち着いてるし、いまのうちにトイレでも行ってみるか…と。
大平原のど真ん中にトイレがみえる。といっても仮設のような半畳くらいのスペース。
20mくらいまで近づいた時に、女子2人がトイレを使っていることに気づいた(片方がトイレ前で待って、見張っててくれてる)。あとでわかったのだが、この男女共有トイレは中に鍵がなくて、外から閉めないといけない(どういう仕組み?)。そのため、お互いに交代で待ってたらしい。
20mくらい離れたところで立ち止まり、空を見て待っていると、僕のゲルにいたはずのオジサンはガンガンとトイレに近づき、トイレ待ち女子に話しかける。
俺が気にしすぎなのかな…とか思いながらも、お父さん世代のノンデリカシーと、アラフォーのノンデリカシーは取り扱いは違う。求められるものが違う。
モンゴルに行ってまで気遣いの難しさを考えている。


(カーリーさん提供)
◼︎深夜のホルホグ/恋リア
2200時頃。
1時間くらい待つと、ムーさんか我々のゲルを覗きにくる。このゲルでみんなでご飯食べますので〜。みんな急いで荷物を片付ける。
突然、飼い猫が入ってきて僕のベッドにどすんと座る。何か咥えてると思ったら、捕まえたネズミ。ゲッと思ったら、ご飯の準備中だった娘さんが猫を連れ出してくれた。ごめんなさいと謝られたけど仕方ないし。結構でかいネズミでしたね…と皆さんの感想。
そうこうしているうちにツアーメンバーが集まってくる。結構ツメツメ。椅子やベッドに座り、円形に宴を囲む。司会としてムーさんが中央で立っている。
「モンゴルでは宴会の年長者の方から順に、挨拶をして乾杯していきます。この出会いを楽しみたいので、みなさんのモンゴル旅行への思いとか教えてください」
ということで、年長者のおじ様から。
「定年して去年から友人と旅を〜(中略)〜。トクトイ(乾杯)!」的な挨拶。
そして、ウォッカを飲み干し、隣の人にカップを渡す。
「わたしは出張のついでに来てまして〜」「親戚の子をデジタルデトックスさせたくて〜」「出会に感謝。」「まじ女子旅最高!」などなど、リアリティー番組の第一話のような時間。1日の出来事が濃密すぎて、なんか自分も特別な仲間なのかしらと錯覚しかける。
大草原のなかにポツンと立つゲル。それぞれ背負ってきた人生を話し始め、テーブルを囲み酒を飲む。文字にするとヤラセありきのテレビ番組のようだが、その場にいるとめちゃくちゃ楽しくて、謎に胸打つ。
「ツアーガイドをやって長いこと経つけど、こうやって毎回初めての方にモンゴルを知ってもらい、そしてその晩にみんなで酒を飲むことが、私の生き甲斐」というようなムーさんのスピーチに拍手が集まる。
モンゴルにきてから謎のハプニングが続いてるわけだが、このハプニングを共有しているうちに生まれた一時的な一体感は、ポストコロナの我々がどこかで求めていたものかもしれない…いや、半分冗談で、酒のせいでポジティブになってるだけなのだが。
そしてやっと晩御飯。ホルホグを切り分けて食べる。みんなで分けるとはいえ、すごい量だ。シンプルな味付けだが、圧倒的に美味い。羊肉苦手な人でも食べられると思う。主食はお米が出てきて、もちろん合う。野菜も嬉しい。
カーリーさんはお酒弱いのにウォッカを少し飲んでいた。「なんか、ウォッカが胃腸をコーティングして、肉を消化しやすくしてる気がする」。たしかにウォッカをあまり飲んだことがなかったけど、飲みやすいものであればチョビチョビと飲んでく分にはかなり美味しい気がする。

腹が膨れて、だんだんとみんなの手が止まり始める。ムーさんがウォッカを配り終える。
明日の予定を説明し始める。
明日は朝ごはんを食べたら、乗馬体験。
その後、10時前にバスに乗り、11時に競馬レース場に戻り観戦。(明日こそ脂が乗ってる馬が走る)。
そしてナーダムスタジアムにもどり、脂の乗った選手だらけのモンゴル相撲を見る。
そして、各グループに解散。
競馬レース場に1時間で戻る、という、本日の流れからでは納得がいかないスケジュールだが。もはや、モンゴルのことはモンゴル人に任せた方がいいかも、と考えている私がいる。訝しがるメンバーもいるが、各ゲルに帰っていった。
24時くらいに寝る。外はものすごい雨風で、雨の音がザーザーと。時折、番犬が吠えているのが聞こえる。何を追い払っているのか。

やっと2日目が終わる。やれやれ。
モンゴル旅はまだまだ続く。
覚悟して読まれよ。
補足)
本記事ではモンゴルでのハプニングや人間模様を取り扱ってますが、決してツアー内容やモンゴルの皆さんを批判したいのでありません。
むしろモンゴルでのギャップに翻弄された日々を、少し強めのツッコミを入れながら記述することを目的にしています。
国や文化が違えば、価値観も大きく異なります。ツアー会社にしてはハプニングが続きますが、それゆえにモンゴルの方々のハプニングへの向き合い方をリアルに直面できました。それことが、僕にとってこの旅行での最大の面白さだったからです。
(安全面で改善した方がいいと思うところも勿論有ります)
そこらを考慮してお読みいただけると幸いです。
