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SOIL派遣帯同者の視点 / イキウメ・前川知大

2025年8月、SOILはエディンバラとロンドンにて、海外派遣プログラムを実施しました。現地で開催されたのは、海外のフェスティバルディレクターやプロデューサーを前に、日本の9団体が自作品をプレゼンテーションするピッチイベント『Japan Selection by SOIL2025』。 各団体からは演出家やプロデューサーなどの「帯同者」が同行し、作品の売り込みやネットワーキングのサポートを行いました。本記事では、その帯同者の一人・前川知大さん(イキウメの坂田厚子の帯同者)が綴る、エディンバラ滞在のルポをご紹介します。

この記事を書いた人
前川知大

劇作家、演出家。2003年より劇団イキウメ主宰。SFや哲学、オカルト等を題材に演劇作品を発表。『散歩する侵略者』『太陽』など映画化された作品も多く、映像脚本、小説も手掛ける。近年は韓国、台湾などで戯曲の上演が続いている。『奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話』で第32 回読売演劇大賞最優秀演出家賞受賞。


帯同者という存在

劇団制作の坂田厚子氏が、SOILというプログラムに参加するので、帯同者として私を連れていくと言う。帯同者という馴染みのない言葉を調べてみると、主となる人物が連れていく人、とある。連れていかれる人らしくぼんやりとしていると、どうやら作品の売り込みで、TEDみたいなプレゼンをするらしいことが聞こえてくる。私もステージに立たなくてはならないのだろうか。苦手だ。考えただけでお腹が痛くなってくる。帯同者とはいったいなんなのか。金魚のフンが金魚のフンのままいて許されるものだろうか。この円安のご時世、エジンバラまで連れてゆくのだから、許されないだろう。私は腹痛をこらえ、「できることは何でもするつもりだ」と坂田氏に震える声で言った。「とくに何かしてもらおうとは思っていません。プレゼンは私がやります。こういう機会なので、前川さんにはエジンバラ演劇祭を見てもらって、見聞を広げてもらえればと」……オイ聞いたか? こういうことだよ。恐らく、この時の私はだらしない顔をしていたに違いない。「もちろん、ネットワーキングの時には挨拶や作品説明をしてください」。まかせてくれ、英語は苦手だがそこは頑張る。帯同者としての責任を果たす用意が、私にはある。多分。

作家には作家の仕事があるだろうと、フェスで賑わう、美しいエジンバラ旧市街に放り出してくれた坂田氏とSOIL事務局の皆さんに感謝しなくてはいけない。この空気を吸い込むことも仕事の一部だと、祝祭感あふれる町を歩く。8月のエジンバラは肌寒く、陽が出ていないとインナーダウンを着込んでちょうどいいくらいだ。猛暑の東京との落差に体がついていかず悲鳴を上げた。町のいたるところでパフォーマンスや公演が行われている。フリンジのアプリで、現在地から近いイベントを表示すると、ずらりと出てきて何を観ていいか分からない。紙の公式パンフレットはタウンページのようで、途方もない数の参加作品があると一目で分かる。玉石混淆。石ころのつもりで来ているカンパニーなど一つもないが、そこはシビアな世界である。星が付けば客が増え、付かないまま続けるほどに客足は遠のく。石に当たるも一興と思いつつ、星の数に引き寄せられる。どれもフェス仕様で1時間弱の作品。設えも簡易的で、演劇というものはこれで十分と思わせる。Less is more。自分ならどう作るか、考える。見聞を広げられたかは心もとないが、大いに刺激を受けたのは確かだ。何より演劇がこんなにも主役になっている場所を私は知らない。


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