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SOIL派遣帯同者の視点 / ゼロコ・濱口啓介

2025年8月、SOILはエディンバラとロンドンにて、海外派遣プログラムを実施しました。現地で開催されたのは、海外のフェスティバルディレクターやプロデューサーを前に、日本の9団体が自作品をプレゼンテーションするピッチイベント『Japan Selection by SOIL2025』。
各団体からは演出家やプロデューサーなどの「帯同者」が同行し、作品の売り込みやネットワーキングのサポートを行いました。本記事では、その帯同者の一人・濱口啓介さん(キューブ所属のウォーリー木下の帯同者)が綴る、エディンバラ滞在のルポをご紹介します。

この記事を書いた人
濱口啓介
フィジカルコメディデュオ「ゼロコ」メンバー。角谷将視とともに、パントマイムやクラウニングをベースにした、セリフのないコメディ作品を創作・発表している。「暮らしを面白がる」をコンセプトにした研究チーム「ポシロ舎」主宰。近年はサーカスやマイムなど、ノンバーバル作品の演出にも取り組んでいる。


ゼロコの濱口啓介です。ゼロコは、パントマイムやクラウニングをベースに、セリフを用いないコメディ作品を創作・発表しています。
今回、『Japan Selection by SOIL』にて、「ゼロコ『モノノメ』~リクリエーションバージョン~」のプレゼンテーションを行う機会をいただきました。
このピッチイベントの開催を知ったとき、「ついに……」と声が出るほど、胸が高鳴りました。

僕はこれまで、エディンバラ・フェスティバル・フリンジ(以下、フリンジ)に3度参加してきました。
2014年はソロでのストリートパフォーマンスをしに、2018年はゼロコとしてストリートパフォーマンスをしつつ、劇場公演の可能性を探るための視察、2019年には、実際に劇場を借り、フェスティバル全日程でゼロコの舞台公演を行いました。
そして2025年、今回が4度目のエディンバラになります。

過去にストリートパフォーマンスを行った場所に、合間時間に訪れました

2019年の劇場公演は、僕たちにとって初めての海外での舞台上演であり、完全に自主公演での挑戦でした。
スタッフに帯同をお願いする余裕はなく、ゼロコの2人だけで現地に乗り込みました。
英語でのやり取り、予算管理、慣れない環境での生活。さまざまな壁がありましたが、なかでも一番難しかったのが「集客」でした。

日本と違い、知り合いはほぼいません。ゼロコの名前を知っている人もいません。
事前にSNSでの発信や、前年に出会ったパフォーマーへの連絡など、できる準備は重ねていましたが、フェスティバル開幕前日まで、ほとんどすべての回の来場予定数は0人。
全21ステージの公演が迫る中、その現実を前に立ち尽くしていました。

なんとかせねばと、フェスティバル開始より早めにエディンバラ入りし、終日ハイストリート(フェスティバルのメインストリート)でパフォーマンスをしながらチラシを配りました。
その積み重ねの結果、どの回もなんとか10名以上のお客さんには来ていただけましたが、空席は多く、決して順調とは言えませんでした。

2019年、パフォーマンスを行い、公演チラシを配っている様子

その後、幸いにも、レビューや賞をいただくことができ、少しずつ反応が広がっていきました。
フェスティバル終盤、ラスト3公演ほどは満席となり、ようやく確かな手応えを感じられるようになりました。
一方で、フェスティバルは終盤を迎えており、「観たかったけれど、もう間に合わなかった」「こんな作品が来ているとは知らなかった」という声も耳にしました。
嬉しさと同時に、やり場のない悔しさが残りました。
「こういう作品が、いまエディンバラに来ています」ということを知ってもらうことの難しさを2019年の挑戦で強く実感しました。

フリンジには、「Taiwan Season」や「Korean Season」のように、同じ国のプログラムが連携し、ショーケース形式で自国のアーティストを紹介する場があります。「ここに来れば、この国の今の作品と出会える」という場です。街中には専用のポスターが貼られており、そのポスターを見て、日本にもこういう場があるといいなと当時、強く思ったことを覚えています。

今回の『Japan Selection by SOIL』は、そのときに抱いた願いが、そのまま現実になったような場でした。

「ゼロコ『モノノメ』~リクリエーションバージョン~」は、ウォーリー木下さんのプレゼンテーションの中でゼロコが登場し、実際にパフォーマンスを行いながら展開していく流れで行われました。
この作品は、観客と一緒につくっていく作品です。短いプレゼンテーションの場で、この特有の関係性が立ち上がるのか、正直、不安もありました。
けれど実際には、観客同士が自然と動き出し、想定を超えたハプニングも生まれ、ライブ感のある展開になっていきました。
観る側と演じる側の境界が、ゆるやかにほどけていく『モノノメ』らしい空気は、確かにその場に立ち上がっていたように思います。
それはパフォーマンスの力だけでなく、プレゼン全体の構成や、場の環境が丁寧に整えられていたからこそだと感じました。

『Japan Selection by SOIL』には、身体表現を主とする作品、言葉を軸にした作品、規模の大きな作品、小さな作品、さまざまな表現が集まっていました。
プレゼンの方法もそれぞれ違い、「作品の魅力を、どうすればきちんと届けられるのか」に向き合う姿勢が共通してありました。
その真摯さに触れ、普段の自分自身の「届け方」も、あらためて問い直される時間にもなりました。

フリンジでの上演に加え、『Japan Selection by SOIL』に参加することは、これからフリンジに挑戦する日本のアーティストにとって、大きな力になると思います。
今回の『Japan Selection by SOIL』は、かつてエディンバラで心の中に描いた風景が、具体的なかたちとして立ち上がっている場でした。
2019年の自分がずっと欲しかった場所に、今出会うことができて感慨深い時間になりました。

プレゼンを終えた後、ウォーリー木下さんと

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