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店舗の居抜き売却を考えているなら、解約届を出す前にこれを読んでくれ。

店を辞めようと思った瞬間、何をしようとしているか。


経営がうまくいかなくなった。
体力的に限界が来た。
別の道に進みたい。
理由は何であれ、「店を畳もう」と決断した瞬間、多くの経営者が真っ先にやろうとすることがある。

オーナーや管理会社への解約届の提出だ。

気持ちはわかる。
契約を終わらせるなら、まず連絡するのが筋だと思うのは自然なことだ。
ただ、そのタイミングで解約届を出すことが、数百万円単位の損失に直結するケースがある。
今回はその話をする。

解約届を先に出すと「詰む」理由。


まず前提として確認しておきたい。

店を売りたいということは、多くの場合「造作譲渡金を回収したい」ということだ。
造作譲渡とは、厨房機器・内装・設備・什器など、店舗に残っている有形資産を次の入居者に買い取ってもらう取引のことだ。
居抜き物件として次のテナントに引き継いでもらうことで、撤退コストを抑えながら現金を回収できる。
うまくいけば数十万から数百万円の譲渡金が発生することもある。

問題は、この造作譲渡が成立するのは「退去前の状態」であることが大前提だという点だ。

解約届を先に出してしまうと、退去期日が確定する。
買い手探しに時間がかかり、退去日までに次の入居者が決まらなかった場合、その時点でゲームオーバーだ。退去済みの空っぽの物件に、造作譲渡金は発生しない。
回収できるはずだったお金がゼロになり、場合によってはスケルトンに戻す工事費まで負担することになる。
これが「詰む」という状態だ。

造作譲渡金が発生するロジック。


そもそも、なぜ造作譲渡金が発生するのかを理解しておくことが重要だ。

飲食店を新規で開業する場合、厨房設備・内装・空調・排気設備などをゼロから揃えると、業態や規模にもよるが数百万から一千万円以上のコストがかかることも珍しくない。

居抜き物件であれば、それらが既に揃っている状態で入居できる。
次の入居者にとっては初期費用を大幅に抑えられるメリットがある。
その「メリットへの対価」として、前テナントに支払われるのが造作譲渡金だ。

つまり造作譲渡金は、「使える状態の設備・内装がそこにある」という事実に対して発生するお金だ。
退去して空になった物件には、その事実がない。だから値段がつかない。

解約届を出す「黄金のタイミング」。


では、いつ解約届を出すべきか。

答えはシンプルだ。
次の入居希望者の申し込みと同時、もしくは造作譲渡の話がまとまったタイミングで出すのがベターだ。

具体的な流れはこうなる。
まず、店を売りたい意向を信頼できる仲介業者に伝え、買い手探しを始める。
内覧希望者が現れ、造作譲渡の条件交渉を進める。金額・引き渡し条件が合意に至った段階で、オーナーや管理会社に解約の意向を伝え、退去日を確定させる。

この順番を守るだけで、退去期日に追われながら買い手を探すという最悪の状況を回避できる。
解約届は「締め切り」を生む書類だ。
締め切りを設ける前に、回収できるものを回収する準備を整えておくこと。

オーナー・管理会社への連絡は、段取りを決めてから。


居抜き譲渡を進めるにあたって、オーナーや管理会社の承諾が必要なケースがある。
ただ、ここで注意が必要だ。

何の準備もなく「居抜きで売りたい」と先に伝えてしまうと、できるはずだった譲渡ができなくなるリスクがある。

物件によっては造作譲渡を禁止している契約もある。
オーナーによっては、打診の仕方一つで態度が変わることもある。
こちらの手の内を先に見せてしまうと、交渉の余地が狭まる。

だからこそ、オーナーや管理会社に連絡を入れる前に、まず仲介業者に相談して段取りを決めることが重要だ。
交渉の順番、伝え方、タイミング──これらを整理した上で動かないと、売れるものも売れなくなる。動く順番を間違えないこと。

損をしないための決断は、動く前にプロに相談すること。


店を畳む決断は、精神的にも体力的にも消耗した状態でなされることが多い。
早く終わらせたい、面倒な手続きをさっさと済ませたいという気持ちは当然だ。

ただ、その焦りが「解約届を先に出す」という行動につながり、回収できたはずのお金を消してしまう。

動く前に一度、専門家に相談すること。
造作譲渡の相場感、交渉の進め方、オーナーへの伝え方──これらを把握した上で動くのと、何も知らずに動くのとでは、手元に残るお金が全く変わってくる。

店を辞めることは終わりではない。
次のステージへの移行だ。
その移行を、できるだけ有利な条件で進めるための準備を、焦らず丁寧にやってほしい。

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