ボーカロイド推しに聞く。「ライブの雰囲気はファン自身が作っている」
私の知り合いのAさんは、ボーカロイドであるMEIKOを推している。年に一度の「マジカルミライ」というLIVEでは、オリジナルの法被を着たり、布製のスーツケース一面にMEIKOの缶バッジをつけたりと、オタク活動を楽しんでいる。そんなAさんに「推し」を通した人とのつながりを聞いた。(聞き手・岩村莉里=2年)
<上の写真は、Aさんの缶バッジコレクション>
MEIKO 2004年11月5日に発売された音声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」のキャラクター。シンガーソングライター、拝郷メイコの声を元に作られ、コシのある歌声が特徴。栗色のショートボブで、赤いショート丈のトップスとミニスカートを着ている。
――MEIKOさんが「推し」になったのはいつ?
2019年の3月に「初音ミク Project mirai でらっくす」という3DSのソフトを友達に貸してもらった。そこにMEIKOさんがおって、存在を知ってん。いろんなキャラクターの曲が入っているCDを聞くようになったけど、MEIKOさんの曲数は少なくて、その時は、ほかのキャラクターが気になってた。その年の8月に「マジカルミライ2019」というLIVEがあってん。3DSのソフトを借りていた友達に「チケットが余ったからいらへん?」って譲ってもらった。生でMEIKOさんの曲を聞いたら、人間みたいな声をもつボーカロイドに新鮮さを感じて「あ、もう好きです~!」ってなった。学生時代。一目惚れかな。
――MEIKOさん推しで、人とのつながりができたのは?
MEIKOさんのイラストを載せたくて、2020年にTwitterを始めてん。そこで同じくらいの年齢の「赤廃」と知り合って、今もLIVE会場で一緒に写真を撮ったり、ネット上で話したりする。LIVEの「マジカルミライ」は、MEIKOさんに会いに行くのが目的。だけど、ボーカロイドのファンとの交流のために行っているところもあるね。
赤廃 周りが見えなくなっているほどのMEIKO推しの人。「赤」はMEIKOのイメージカラー。「廃」は「廃人」。
――LIVEでどうやって人と知り合うの?
初めてのMEIKOさんのLIVEは、お母さんと2人で行ってん。ペンライトを1本しか買っていなかった。そしたら、隣の席におったファンに「貸しますよ」って言われて、「いいんですか」って借りてん。「ボーカロイドのファンは優しい」と思い、ますますMEIKOさんを好きになった。その人に感謝を伝えたくて、いろんな人に聞き込んで探した。4年後に「この人かな…?」というXのアカウントを見つけることができて「ライブ会場で会えませんか?」とメッセージを送った。会ってみたら「ほんまにこの人だ!」という感じで。感謝を伝えると「あの時貸してよかったです。こうやってボーカロイドを好きになってくれてうれしい」と言われたよ。
――ペンライトを貸すのはなかなかできないことだと思う。
ペンライトを貸すのが当たり前という雰囲気が「マジカルミライ」のLIVEにあんねん。3年前のLIVEで、隣の席におったお兄ちゃんがペンライトを持っていなかった。だから「あ、貸しますよ」と私も言えた。「自分も貸せる側に回ったんや」と、オタクとして成長を感じた。すごいうれしかったな。
――貸し借りしたり交換したりすることはほかにあるの?
名刺を渡すこともあるよ。私は名刺の表に、ファンとしての活動名とXのアドレスとQRコードを載せている。裏はオリジナルのイラスト。いままで2種類の名刺を作って、200枚は配ってるんちゃうかな。 それだけの人と交換して、会ってる。印象に残っているのは、イラストレーターと名刺を交換した時。QRコードを読み込んだら、私も知っている人気のイラストレーターさんやった。その人は毎年オリジナルイラストの缶バッジを作って渡してくれるよ。
――そうやってつながりが増えていくのはいいね。
私がライブで着ている法被は、前と後ろにMEIKOさんの姿を描いたオリジナルイラストをプリントしてる。それは、友達2人がそれぞれ描いてくれたイラストやねん。1人は私に「マジカルミライ2019」のチケットを譲ってくれた子。もう1人は、初音ミクのツアーイベントのチケットを私が譲って、ボーカロイドを好きになった子。順番に、ボーカロイドの魅力に引きずり込まれていった。オリジナルの法被を作るのも、ボーカロイドを好きじゃなかったら知らんことやったなと思う。
――ボーカロイドを推している人たちの雰囲気、素敵だね。
名刺だけじゃなくて、ボーカロイドのファンがキャラクターを描いたイラストやそのイラストを缶バッジにプリントしたものを交換したりしている。こういう交流を通して、ライブの活気のある雰囲気はファン自身が作っているよ。
【話を聞いて】男性アイドルグループ「なにわ男子」を推している私は、これまでLIVEの現場で顔なじみ以外の人と交流したことがない。隣の人がペンライトを持っていなければ、「買えなかったのかな」と思う程度で、それ以上踏み込むことはない。Aさんの話を聞き、ファン同士が交流しやすい雰囲気を作っている現場があることに新鮮さを感じた。(岩村)
