エンタープライズセールスは「Champion」を探す旅である。
全5回でエンタープライズセールスのノウハウを解説しています。今回は具体的な営業手法や商談のやり方について。
これまでの記事はマガジンをご覧ください。
前回まではエンタープライズセールスの概要を説明しました。まずはターゲットを10社〜20社程度決めて、アカウントプランを作りましょう、という話です。
ターゲットとする大企業の中期経営計画などを読み込んで、その会社が抱えている課題や解決したいこと、目指していることと、自社の商品で解決できるソリューションが合致するポイントを見つけて提案することが重要です。
そのためにアカウントプランを作るのです。
アカウントプランをつくる方法
アカウントプランを作るにはコツがあります。要はその会社の人たちよりその会社のことを知っている必要があります。そんなことまで知っているのか、というレベルまで突き詰めます。
できるなら効率的にやりたいものです。僕が最新情報を集めるためによく使っているのは「Googleアラート」です。会社名などをGoogleアラートに登録しておくと、その会社に関するニュース・記事が出たらすぐに通知が飛んできます。
あとは当然、その会社のキーマンと呼ばれるような人たちのSNSはフォローしておく。このあたりは一通りやっておきましょう。
しかし、いわゆるエンタープライズ企業の方だとXをやってないケースも多いです。上場していたりするとコンプライアンスが厳しいものです。Facebookはまだやっているかもしれませんが、実名でXをやっていることはほぼないでしょう。SNSで接点を持つのは実際のところなかなか難しいです。
なのでアカウントプランと同時に組織図も作っていくことになります。そこで重要になってくるのが、「チャンピオン」「エコノミックバイヤー」という人たちです。
なかでも最初にアポイント取りたいのがチャンピオンです。
いちばん重要な「Champion」
チャンピオンとは、会社の中で一定の権力や影響力を持っていて、こちらの味方になってくれそうな人のことです。
社内でその方が自分の代わりにプロジェクトを推進してくれたり、アドバイスをくれたりします。
そしてチャンピオンの上にいるのがエコノミックバイヤーという、決裁権や拒否権を持っている人です。このエコノミックバイヤーは毎回の商談に同席することはほぼありません。
チャンピオンの方を味方につけて、エコノミックバイヤーを説得してもらうのです。
そのためにも、組織図をちゃんと作り込んで、ターゲットの会社において「誰がチャンピオンなのか?」という仮説をもとにコンタクトを取りはじめます。
場合によっては、いきなりエコノミックバイヤーが判明することもあります。そうすると、その人物に話ができる人、説得してくれる人は誰かを探っていく。そのためにも精緻なアカウントプランと組織図を用意して、グループ内、部署内のキーパーソンを特定していきます。
いずれにぜよ、とにかくまずはチャンピオンです。
現場のエースで業務を推進する人。肩書では課長や部長が多く、大企業だと30代〜40代が中心です。この方が出世するとエコノミックバイヤーになるので、非常に大事な存在です。
一方、エコノミックバイヤーは役員クラスです。物事を最終的に決める人。このレベルの方とは直接商談をすること自体がかなり稀だと思います。エンタープライズクラスだとほぼないでしょう。だからチャンピオンを探す旅がすべてのはじまりになります。
チャンピオンの探し方、アプローチ方法
チャンピオンに会うといっても、最初はまったく人脈もチャンスもありません。何もないところから地道にアカウントプランと組織図を作っていって、担当する10〜20社の中にいるチャンピオン候補を絞っていきます。
相手は上場企業のケースが多いので、重要人物であればあるほど、比較的名前が出ていたりします。意外と情報があるはずです。部署名まではわかるので、そこを起点に調べていくのもいいでしょう。
アカウントプランを作って、社内のキーパーソンをリストアップし、チャンピオン候補が特定できたら、最初のきっかけをつくりにいきます。
王道は手紙とDMです。これもとにかく相手が気になるようなものを作ることが重要です。
手紙については、実際に僕がよく使う手紙のセットを紹介しておきます。まず、これが封筒です。
意外と普通の封筒に見えるかもしれませんが、これは大礼紙というもので、かなり高品質です。実際に目で見て、手に取ってみると素材の違いがわかります。
結婚式の招待状とかで使われるような素材で、細かい模様が入っていて、角度によってキラキラと光る。50枚で2,271円なので、封筒にしてはかなり高い部類ですよね。そしてAmazonの評価もすごく高い。

こちらは縦書きの便箋です。便箋もちゃんとしたものを使います。縦書き、横書きはどちらでもかまいませんが、僕はこの便箋が使いやすいので縦書きで書いています。
あと、こだわる人は切手もちゃんと選んでいます。コンビニで買える普通の切手ではなく、ちょっと気の利いたデザインの切手を買いに行きます。
僕はいつも郵便局で切手を買っています。郵便局の窓口で「いまある切手を全部見せてください」とお願いすると、ちょっと変わったやつも出てきます。自分のところに届いたら、「おっ」って思うような切手を選んでみてもいいと思います。
たかが手紙にこれだけこだわります。ITの時代におもしろいですよね。
字の上手さに自信がない人はどうするか
アカウントプランを作って、チャンピオン候補を特定するのに数十時間はかかってるわけですから、切手にまで全力を尽くしたいーー。変なところで手を抜いて、しくじりたくないですよね。
あと当然、自筆の手紙なので字の上手さも大事です。便箋、封筒、切手にまでこれだけ気を遣っているのに、字がヘタだと台無しです。
実際、僕は字が上手いほうではないので、得意な人に代わりに書いてもらうことがあります。社内に字が上手な人は何人かいるものなので、そういう人にお願いするのがいいと思います。
この手のニーズはかなり多いようで、手紙をきれいな字で書いてくれるサービスもあります。たとえば「キーマンレター」は営業マンの代わりに直筆の手紙を書いて、送付して、フォローの電話までしてくれます。この分野のサービスは増えてきましたね。
こういったサービスは一通ずつ手で書いてもらうので、一通あたり千円ぐらいのコストはかかってくると思います。当たると大きいエンタープライズセールスならではのサービスですね。
エンタープライズセールスとインサイドセールスの連携も
最近はエンタープライズセールスがインサイドセールスと組むことも多いです。インサイドセールスには、「SDR」と呼ばれる反響型の営業と、「BDR」と呼ばれるアウトバウンド型の営業があります。
大手企業をターゲットとする場合は、インサイドセールスのBDRとエンタープライズセールスがペアになって動きます。手紙から電話までのいわゆる前工程をインサイドセールスが担うからです。
手紙を書いて、電話をかけて、それで感触があったらエンタープライズセールスにつなぐという流れです。
これは針の穴に糸を通すような、すごく繊細な仕事です。従来の大量のリードに片っ端からアプローチしていくのとは違ってきます。
手紙を送った先がチャンピオンではなくて、エコノミックバイヤーという偉い方のケースもあるので、電話に出られないことも多い。
出られなかったら秘書の方につないでもらうようお伝えするのも忘れずに。
手紙にはQRコードも入れておく
僕はチャンピオンに対するアプローチではずっと工夫や実験を重ねてきました。ちょっと前まではいろいろとABテストもやっていました。
たとえば、封筒に手紙だけ入れるパターンと、そこに名刺やチラシも入れるパターン。
お手紙の中にQRコードを印刷して、「ご説明をご希望の方はこのQRコードからお申し込みください」みたいなこともやってみました。
最近は手紙と一緒にチラシを入れて、さらにFAX返信用紙とQRコードと名刺を同封して、その3つのどれかから問い合わせがもらえるようにしています。
もちろん電話番号も記載していますが、相手から連絡が来るのはQRコード経由のケースが一番多いんです。
QRコードからGoogleフォームに誘導して、そこで問い合わせにつなげます。
年配の方だとQRコードを読み取るっていう動線が厳しいのでは?と思っていましたが、そんなことはありませんでした。おそらく上席の方が部下に「これちょっと興味あるから一回話聞いといて」みたいな形で伝えて、Googleフォームに飛んで申し込みしてくれているのだと思います。
もちろん手紙を出したらアクションを待つのではなく、こちらからすぐにフォローの電話をするのが基本です。
手紙を送るだけだと反響率は0.5%ぐらいでしょう。かなり低いです。これが手紙のあとに電話をすることで7%ぐらい、高いときは10%まで上げられるので、絶対に電話はするべきです。
その電話をBDRにやってもらうのは良い連携だと思います。手紙が届いて2、3日たった頃を見計らって電話をするのがいいですね。
次回は、チャンピオンと似た動きをするものの、推進力と決定権を持っていない「ニセチャンピオン」について。
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