#お題:初めての|#シロクマ文芸部|少年の告白
初めての、と書いた。
「ひょっ」と咽が鳴った。僕は驚愕した。自分のしようとする行為に「こりゃぁ、初めての経験だ」と、それこそ初めて感じた。
ほんと不思議な話なんだけれど、これまで僕は、食べ物にしても、洋服にしても、女の子にしても旅行にしても、「これは初めての出会いだ」と認識した事象はまるでない。脳の引き出しに整理整頓されている。
例えばムンクの『叫び』という絵画をどう思うか。どんな色をしていたか。などと聞かれれば、赤と青と緑が強烈で……と、即座に答えられる。いわば、僕はデジャブの塊りみたいな存在なのだと思う。
ところが「あの絵の色長を目にして、心にどんな変容、喜怒哀楽を覚えたか」と問われると、僕の声帯は、0.987秒のタイムラグを生じる。ほんと不思議で仕方ないよ。
僕は、焦ることもなく、平然と『色彩各種が現生人類の感覚感情神経に及ぼす変化情報』をLLMから一瞬にして引き出して答えてるのにさ。中学のクラスメイトは、「こいつ、怪いしいぞ」という眼で僕を見るんだ。うーんと……0.987秒のタイムラグ……悲しいよ。《AI少年の告白》
