掌篇『下駄箱に恋が香る』/毎週ショートショートnote/お題【ときめきトゥーシューズ】
今年は10月になっても秋はやって来なかった。生徒たちは頭ポカーンとなり、何か面白い遊びを求め始めた。ヒントになったのが、K高校出身で筑波大学を卒業しながら、超一流企業の「営業天下取り競争」のあまりのえげつなさに嫌気がさし、あっさり退職。母校の現代国語の教師になった女。山本百合子の入れ知恵でこんなLOVE GAMEが始まった。
「私が皆さんと同じくらいの歳の頃、『下駄箱文通』というのが流行ったの」
2年1組の佐藤彩香という女の子を好きになった吉田隆はゲームをスタート。
彩香の下駄箱、最近はシューズ・ボックスなんていうらしいが。
彼女の下駄箱を開けた瞬間、隆の鼻腔に甘いモンブランの馥郁とした香りが流れた。脳髄に一瞬、うっとり曲線が走った。
「東京のバレーダンス教室に通って、汗にまみれて練習してるって聞いたから、さぞかしシュールな足臭がするだろうと期待していたのにガッカリ。隆はうなだれた。
翌日の早朝、仕方なく隆は競歩部員の速水あゆみ宛てにレターを書き、彼女のシューズ・ボックスを開いた。一挙に、胸ときめいた。鼻血が噴水のようにしぶきを上げる。彼は素早くトレッキング・シューズを脱いだ。強烈な悪臭が立ち上った。続いてあゆみちゃんのスニーカーを下駄箱から出した。二足を並べ、2(Two)と呟いた。
「Oh My God。ふたりのシューズが、どきどき、ときめきて、臭って「Two Shoes」とっても臭い!この香りが快感だった。このフレーズは、K高校の流行語になった。(了)
