胸躍るマイヨ・ジョーヌの季節
maillot jaune de gloire
公開に向けて、映画「弱虫ペダル」のCMがよく流れてましたよね。
それを見て、やっぱりロードレースって楽しそうだな~って、あらためて感じている今日この頃です。
自分で自転車に乗るわけではないのですが、ロードレースは好きなんですよね。不思議と...
ロードレースは日本では今一つマイナーな競技だったと思うのですが、「弱虫ペダル」のおかげで人気が上がったのは良いことですね。
世界的には、すごく人気なので、もっと人気が出てもいいかなって思っています。
「弱虫ペダル」で、ロードレースという競技を知った人も多いと思うのですが、自分がロードレースを意識することになったきっかけは、近藤史恵さん『サクリファイス』だったりします。
陸上選手から自転車競技に転じた白石誓は、プロのロードレースチームに所属し、各地を転戦していた。そしてヨーロッパ遠征中、悲劇に遭遇する。アシストとしてのプライド、ライバルたちとの駆け引き。かつての恋人との再会、胸に刻印された死。
よくロードレースを表す言葉として「all for one」が使われます。
ラグビーだと「one for all」と「all for one」がセットで使われるんですが、ロードレースは「all for one」だけなんです。
ロードレースは団体優勝があるわけでなく、マラソンなんかと同じで、個人優勝しかないんです。ただ、その一人を優勝させるためにチーム皆で力を合わせて競うのがロードレースなのです。
当然、チームの中では役割と作戦が決められているのですが、優勝を狙う"エース"のために献身的なフォローを行う選手のことを"アシスト"と呼んでいます。
”アシスト”の役割は様々あって、レース中、エースの負担を軽減するために風よけとなったり、時には集団を飛び出し、エースに有利なレース展開になるよう全体のペースをコントロールしたり、エースの自転車に不調が出れば自分の自転車を差し出したり、本当に献身的な役割に徹するのです。(「弱虫ペダル」では、団体戦がデフォルメされてるので、若干、団体戦の雰囲気が異なります。)
近藤史恵さんの『サクリファイス』では、その”アシスト”の選手を主人公にして、”アシスト”としてのプライドやライバルたちとの駆け引きが描かれるんですが、ほんとに面白いです。(ただ、ミステリー小説なんで、”えっ”て事件もあるのですが....)
読んでると自然にロードレースの雰囲気をつかむことができるので、自分みたいにロードレース初心者でも楽しんで読むことができます。
なので、私のように『サクリファイス』を通じてロードレースファンになった人は、”アシスト”役の選手に強く魅かれてるんじゃないかな。
その後も続巻があって、サクリファイス(=犠牲)シリーズと呼ばれているんですが、主人公は、”アシスト”として世界のステージに進み、続巻の『エデン』や『スティグマータ』では、ロードレースの最高峰「ツール・ド・フランス」が舞台となります。
それがまた面白くて、自分にとっては馴染みのなかった世界のロードレースを一気に身近にしてくれた気がします。
シリーズはこれまで、長編三作と短編集一作が刊行されているのですが、通して読むと、主人公の静かな成長が見れて、読む側の気持を熱くしてくれるのは間違いないです。
その後はブランクが空いているので、続巻が待ち遠しいところですね。
~以下、続巻の紹介
あれから三年.....。白石誓は唯一の日本人選手として世界最高峰の舞台、ツール・ド・フランスに挑む。しかし、スポンサー獲得をめぐる駆け引きで監督と対立。競合チームの若きエースにまつわる黒い噂には動揺を隠せない。そして、友情が新たな惨劇を招く……。
団体戦略が勝敗を決する自転車ロードレースにおいて、協調性ゼロの天才ルーキー石尾。ベテラン赤城は彼の才能に嫉妬しながらも、一度は諦めたヨーロッパ進出の夢を彼に託した。その時、石尾が漕ぎ出した前代未聞の戦略とは.....(「プロトンの中の孤独」)。エースの孤独、アシストの犠牲、ドーピングと故障への恐怖。 シリーズに秘められた感涙必至の全六編。
あの男が戻ってきた。三度の優勝を誇ったもののドーピングで全てを失った、ドミトリー・メネンコが。ざわめきの中、ツール・ド・フランスが開幕。墜ちた英雄を含む集団が動き始める。メネンコの真意。選手を狙う影。密約。暗雲を切り裂くように白石誓は力を込めペダルを踏む。彼は若きエースを勝利に導くことができるのか。
*****
8月29日からは、いよいよ「ツール・ド・フランス(Le Tour de France)」が開幕です。
例年なら、この時期には終わっているはずなのに、今年は新型コロナウィルス感染症の影響で2ヶ月延期になってしまいましたね。でも、中止にならなかっただけで幸運だと思います。
日本ではまだまだ知名度の高くないロードレースですが、世界ではとても人気のあるスポーツで、その最高峰とされる「ツール・ド・フランス」は、オリンピックやワールドカップサッカーなどと並び、世界有数のスポーツイベントとして知られています。
平坦なスピードコースや、体力のいる山岳コースなど、様々な条件の21ステージで競われるこのレースは、今年、第107回を迎えるんですよね、ホント、歴史ある大会だと思います。
そして、ツールの長い開催期間中、総合順位1位の選手には「マイヨ・ジョーヌ (maillot jaune)=黄色のジャージ」が贈られ、第2ステージ以降、レースの中で着用することになります。
各ステージの中では、このジャージをめぐっての攻防がありますので、最終的に「マイヨ・ジョーヌ」を身に着けるのが誰になるのか楽しみなところです。

大会が無事に開催され、よい大会になることを願っています。
*****
映画『栄光のマイヨ・ジョーヌ』(2017)
オーストラリアのプロ・サイクリング・ロードレースチーム「グリーンエッジ」に密着したドキュメンタリー。
原題は「ALL FOR ONE」です。
漫画や小説よりも現実はドラマティックなこともあるのです。
