ハロー・グッバイの秘密(There is a Song)
「ハロー・グッバイ」:柏原芳恵(1981)
今回、取り上げるのは、私世代には懐かしい曲、柏原芳恵さんの「ハロー・グッバイ」です。
「ハロー・グッバイ」1981.10
歌:柏原芳恵
作詞:喜多條忠/作曲:小泉まさみ/編曲:竜崎孝路
○ 紅茶のおいしい喫茶店のこと
紅茶のおいしい喫茶店
白いお皿に グッバイ・・・バイ・・・バイ
そしてカップにハローの文字が
お茶を飲む度 行ったり来たり
冒頭の歌詞で、♩白いお皿に グッバイ~や、♩カップにハローの文字が… と、歌われているのですが、なんか不思議に思ったことありませんか?
これって、この歌の舞台となっている "紅茶のおいしい喫茶店" では、「ハローと描かれたカップ」と「グッバイと描かれた皿」が使われてるってことなんですよね。
ちょっと想像しづらいデザインなんですが、この文字の描かれたティーカップと皿は、まったくの空想上のものではないんです。
うちの県では知られた話なんですが、この曲の "紅茶のおいしい喫茶店" にはモデルがあって、それが南こうせつさんのお兄さんが大分市で営んでいた「Hello Goodbye」という喫茶店なんです。
文字の描かれた件のカップと皿は、その喫茶店で実際に使われていたものというわけなんですよね。
作詞家の喜多條忠さんは、この喫茶店をモデルにして詞を書き上げたそうなんですが、お茶を飲むたびに離れたりくっついたりするハローと描かれたカップと、グッバイと描かれた皿の様子から、切ない恋模様を想像していったに違いないのです。
○ 季節感のズレについて
さて、もうひとつ…
この「ハロー・グッバイ」を聴いていて、季節感にズレを感じたことはありませんか?
この曲がヒットしたのは '81年の秋だったし、その曲調から、自分は勝手に ”秋~冬” の歌だと思ってたんですが、実は春の歌なんですよね。
レースの飾りの 向うには
窓に映った プラタナス・・・ウ・・・ウ
吹き来る風は まだ冷たくて
まるであなたの 手のひらみたい
できることなら 生まれ変れるなら
私 春のきれいな 夕陽になりたい
静かに そっと燃えながら
あなたの心に しずんでみたい
歌詞の2番を見ると、「吹き来る風はまだ冷たくて」や「春の綺麗な夕陽になりたい」ってあることから、まだ肌寒さが残る ”早春” の頃だと推察することができます。
ただ、このセンチメンタルなアレンジは ”秋~冬” を感じさせるし、わざわざ春の歌を秋にリリースするのも何か変ですよね。
だから、ちょっと違和感を覚えてたのです。
私と同じような印象を持った人もいると思うんですが、今回、調べてみると、この感覚はけっして見当外れではなかったんです。
というのも、この曲はアグネス・チャンが '75年の冬(12月)にリリースした「冬の日の帰り道」というシングルのカップリング曲が原曲だったりするんです。
「ハロー・グッドバイ」1975.12
歌:アグネス・チャン
作詞:喜多條忠/作曲:小泉まさみ/編曲:萩田光雄
※シングル「冬の日の帰り道」のカップリング曲
レースの飾りの 向うには
窓に映った プラタナス・・・ウ・・・ウ
吹き来る風はもう冷たくて
まるであなたの 手のひらみたい
できることなら 生まれ変れるなら
私 こんな綺麗なガラスになりたい
あなたは ふっと立ち止まり
私の心をのぞいてほしい
ただ、例の2番の歌詞は違うんですよね。
柏原版で春を感じさせた「吹き来る風はまだ冷たくて」の部分は「吹き来る風はもう冷たくて」だったり、「春の綺麗な夕陽」って歌詞も登場してこないんです。
だから、元々は ”秋~冬” の歌だったというのは間違いないんです。
タイトルも「ハロー・グッドバイ」から「ハロー・グッバイ」に変更になってるんですが、その際、2番の歌詞に、先ほどの変更が加えられて、春を意識させるものに変更されていたのです。
まあ、歌詞上では春の歌になっているのですが、センチメンタルなアレンジはあまり変わってないため、季節感にズレを感じたんだと思うんです。
...さらに、勘のいい方はお気づきかもしれませんが、柏原版は10月にリリースされてるのですが、だったら、なぜ、わざわざ季節を春に?と思われますよね。
そこにも事情があって、アグネス版をオリジナルとして、柏原芳恵さんの前に、もうひとり、讃岐裕子さんという方が、'77年の春(3月)にカバーしてるんです。
タイトルや歌詞に変更が行われたのはその時なんですよね。
「ハロー・グッバイ」1977.3
歌:讃岐裕子
作詞:喜多條忠/作曲:小泉まさみ/編曲:竜崎孝路
柏原版はカバーのカバーだったんで、リリース時期と季節にズレが生じたわけなのです。
もちろん、そこらへんは大人の事情なんですが、オリジナルの編曲家:萩田光雄さんのセンチメンタルなアレンジが、あまりにも完成されたものであったため、その後のカバーで大幅な変更が出来なかったことも、ひとつの要因だと思うんですよね。
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ということで、一応、私の中では "秋~冬" の名曲として、柏原芳恵さんの「ハロー・グッバイ」を紹介しました。
今年は気温のせいで「秋」の感じ方が難しいのですが、そろそろ熱いお茶が美味しくなってくる季節なんで、この歌の舞台となった "紅茶のおいしい喫茶店" を想像してもらいながら、「秋」を感じていただければと思います。
♩
