Turnstile――衝動と旋律で跳ね上がる、新しいハードコアのかたち
影のなかで開花する、ハードコア・パンクの新しい顔
Turnstileはアメリカ・ボルチモアを基地に活動する、代表的なハードコア・パンクバンドだ。近年はその音楽の域を独自の方向に拡張し、一歩ずつ新しいモーダン・パンクの構造を描き出してきた。
2025年6月6日に発表された4枚目のスタジオアルバム『Never Enough』は、その跡継でありながら、さらに大きく転回した作品である。Brendan Yatesをフロントマンに、デビュューターのWill Yip、PC MusicのA.G. Cookがプロデュースに合混。ハードコアにダンスミュージック、エレクトロポップ、シンセポップまでを挟み込む、少しの淫さと接着性を具えた試みに満ちたアルバムとなった。
アルバム『Never Enough』が描く、音の重力と滑らかさ
『Never Enough』は、前作『Glow On』で施していた深いコーラスと試行錯誤を、さらに高い段階で味わせる。「Seein' Stars」ではA.G. Cookの影響を受けたキャチーな音色が首を出し、「Birds」では歌とシンセサイザーが逆光を照らす。「I Care」は現代的なエモの結晶であり、グローブを広げたコーラスの中に、重くも輝いた真実の表情が温もり始める。
このアルバムは、たんに新しい音の見本を買おうとするものではない。隠れた苦しみや不安を背景にしながら、安易なノスタルジアを抽象せず、聴く者の体験のレンズを大きく変えていく。
機動するビジョン・アルバムとしての投影
アルバムに付随して作成された14曲分のビジュアル・アルバム『Turnstile: Never Enough』は、Tribecca Film Festivalで展開され、コンサート・ビデオとしても高い評価を収めた。相談、映像ディレクションはフロントマンのYatesとギターのPat McCroryにより手掛けられた。ここでも、Turnstileは音楽を音で終わらせず、視覚とのインタラクションを試みている。
さらに、ロサンゼルスのサンセット・ブルバードにはビルボード広告を掲示。まさにマススメディアを使った新時代のパンクバンドの形だ。
反響の第一章、ライブとコミュニティで進化するTurnstile
『Never Enough』は、美Billboardの第9位に初登場、ハードロック・アルバム・チャートでは首位を獲得した。これはTurnstileのキャリアの中で最大のチャート成績であり、商業的にも評論的にも、さらなる地雷を下した実績と言える。
同日に開催されたブルックリン・アンダー・ザ・Kブリッジ公演では9,000人を勧し、その現場性も高い評価を収めた。ファンをステージに乗せるライブ、そして「I Care」では隣で泣く人もいたという。
このアルバムは、新たな時代のハードコアの「重さ」を書き換えようとしている。Turnstileは、その音楽を広げることで、コミュニティの現場も再構成しているのだ。
