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張子でTIEファイターDIY

スター・ウォーズに登場する戦闘機のなかで最もインパクトを受けたフォルムの『TIE(タイ)ファイター』を張子で自作してみました。

魚網の浮きを紙粘土で覆ってボール状コックピットの型に。ペットボトルのボトムまたはバフンウニの殻は前方キャノピーに、潮水で腐食したアルミ缶ボトム断片は後尾のジェットエンジンに見立てて選びました
左下はLEGOのTIEファイター用パーツ。張子TIEファイターにはPEZのヨーダが操縦。当初、映画『マンダロリアン・アンド・グローグー』の劇場で買ったグローグーのドリンクカップ用トッパーフィギュア(左上)を想定したものの、サイズバランスを熟慮してPEZのに変更しました

まずは構成パーツの選択から。張子の主素材である半紙に何を組み合わせるか、あれこれ思案、妄想するのがじつに心踊ります。スター・ウォーズは壮大な物語。ストーリー性が大切だと踏まえ近所のビーチで出会えた海洋生物やアルミ缶の断片、魚網浮きなどを再活用して組み入れるメインテーマを考えました。また、創作を促されたスター・ウォーズ関連のLEGOパーツもピックアップ。搭乗キャラクターはいろいろ悩んだ末、ヨーダに決定。オーストリアのキャンディ『PEZ(ペッツ)』のヘッドがヨーダの中古品をメルカリで300円ほどで入手しました。

PEZ版ヨーダにしたのは、ニューヨークのアーティスト、トム・サックスさんの作品に感化されたから。素材にこの安価で入手が容易い物をあえて選ぶトムさんのセンスをリスペクトし、真似しました。

ダイソーの100円紙粘土1個で型起こし。丸いコックピットと六角形の両翼それぞれ個別の型にして接合する作戦

TIEファイターの際立った特徴は両翼の六角形。魚網ロープを通す浮きの窪みに両翼をジョイントするイメージで紙粘土の型を成形。総体のかたちはすごくシンプルなのに、とても魅力的かつ普遍的に見えるのがスター・ウォーズのメカニカル・デザイン。合理的で武骨な、いかにものmade in USAプロダクトに強く惹かれます。丸と六角形を型起こししながらワクワク感が湧き上がってきます。

型に貼り重ねる新聞紙と習字練習用半紙をちぎって用意

型の紙粘土が充分に乾いたら、外皮となる紙を貼り重ねていきます。型の表面にはサラダ油を塗って水に濡らしただけの新聞紙でまずは一層目を覆っておくと、あとで型から外皮を剥離しやすくなります。

六角形は角をある程度シャープにするのが肝と考え、半紙を貼り重ねながら定規を当てて整えました。張子製作では紙を重ねるごとにオリジナルの型から形の輪郭がふんわりとぼやけてくるのが美点ではありますが、直線はそこそこ残しておきたいと思ったのでした

第二層以降はヤマト糊を溶いた水に半紙を浸してペタペタとひたすら貼り重ねていきます。地道で根気を要する作業です。

挟みこむ新聞紙の方は糊を溶いた水に浸して貼ります

10層ほど重ねたら途中、新聞紙を1層はさみますと、外皮の強度が増して型から剥がしやすくなります。失敗しませんように!とグローグーに祈念をこめてもらいました。冗談ではなく、切なる願いだったりします(笑)。作業机にはグローグーを据えて勇気を授かり、神頼みの境地で前へ前へと進みます。

新聞紙を織り交ぜつつ半紙を20層強貼り重ねるとオリジナルのシャープな角が取れて、ほんわかと柔和な佇まいへと変容。このおおらかさに魅了されている自分は珍しくさまざまな張子DIYを飽きずに継続できています

夜な夜な、疲れきった心身に鞭打って半紙を重ね、いよいよ20層強まで到達。数日間、天日干しして外皮がカチカチに硬くなるまで乾かします。忍耐のパートはここまで。達成感に浸ったあと、今回は上手く型と外皮を分離できるか緊張し始めてきます。

張子のベース本体完成を目前に、ウニの殻や腐食アルミ缶断片などをどうボール状コックピットに合わせていくか、ここからが自分にとっては張子DIYの醍醐味であり、最難関のステージ。焦らず、じっくりアイデアを練るにあたり、何かヒントをもらえないかと、家の前に立つ神奈川県近代美術館 葉山へ『内間安瑆(あんせい)・俊子展 色を織り、記憶を紡ぐ展』を鑑賞しました。何気なく足を運んだ展示でしたが、会場に入るなり、内間夫妻の版画、コラージュ作品に心眼が鷲掴みにされました。まさに求めていた丸表現のオンパレード。○と周辺、違和感がありながらも境界は曖昧。凝視しているうちに馴染んでいくような。それで良いんだと、家に戻ってすぐに志向、思考を造作に移していったのです。

材料費は無料。ただし、手に取れるかは運しだい
たまたま同じ場所に海から打ち上がったアルミ断片がぴったりはまりました。偶然のようで必然だったりもして
LEGOパーツバラ売り業者「ブリッカーズ」で取り寄せたTIEファイター用キャノピーパーツをバフンウニの肛門へ接着。自然素材とプラスチックが融合するさまが絶妙

鑑賞翌日、昼休みに職場のプライベートビーチへ。お目当ては頭にあったのですが、波打ち際でものの数秒で眼に入ってきてびっくり。千切れたアルミボトルの飲み口が転がっていたので、嬉々として拾いあげて先に同じ場所に打ち上がっていたアルミ缶断片に接着。エンジン部品がまた完成に近づきました。地元、葉山のビーチにたくさん打ち上がるバフンウニ殻の穴(肛門と周囲の生殖孔部が割れて開いた穴)にはLEGOのTIEファイター・キャノピー(前方窓)パーツをはめこみ、張子TIEファイターのキャノピーが出来上がりました。

さらに完成へ前進できたことを祝って近所の小さなパティスリー「ニコラ&ハーブ」でコーヒーブレイク用ケーキを購入。ニコラさんが創作した『キューブ・チョコレート』もまた○○○だらけ。美味しい独創にまた刺激をもらい深く安息。

美味に心酔した勢いに乗じて一気に型抜きのパートへGO! 型を半分に切断して外皮を引っ張って剥がします。両翼の方は内部の型をペンチで壊しながらの強引な作業。バラバラになってしまったので再利用はできません。無理矢理の剥離でしたが、半紙の積層を入念におこなっていたおかげで無事に外皮を剥がせました。この際、せっかく20層強とたっぷり貼り重ねた半紙ですが、いちばん外側の層がかなり強靭に固まっていたので、内部層の半紙ほとんどを除去してしまいました。入念に積層したのは型抜きの失敗を懸念したためですが、最外層を紙粘土液などを塗って硬化させれば半紙積層はわずかで済むのかもしれません。今後のマイ張子DIYの課題であり、同時に希望の光でもあります。

2分割した両翼の外皮を糊と半紙で接合し、六角形の角へ放射線状に伸びるフレームを山吹色の色紙を切り貼りして表現。さらにその上から半紙で覆って、さりげなく山吹色が浮き出るよう試みたのですが、予想外に色がくすんでしまったので、ヴィヴィットなアクリル絵の具であとでフレームを塗り直すことにしました。失敗は成功の始まり。

紙粘土をヤマト糊を溶いた水に浸して柔らかくして外皮に薄く塗ってまた天日干し。軽い外皮がこうして丈夫に硬化していきます。世界唯一のユニーク張子。意外にも手間と時間がかかります。

エンジン部を構成するアルミ缶断片の裏側に中国製小型LEDライトを貼り付けます。コックピット内部から暖色の光を灯し、張子全体がほのかに発光する景色を夢想してみたのです。家にIKEAのキャンドル『イェムンモード』がたくさんあったのですが、このキャンドルの極薄なアルミケースがエンジン部パーツにこれまたピタッとはまる径だと気づき、活用することにしました。

ウニ殻のキャノピーと、アルミ断片のエンジン部を紙の外皮本体にはめこみ、半紙で接合部をしっかり覆います。LEDライトのUSB給電用コードはエンジン部から出すようにしました。

PEZヨーダをコックピット中央に差し込んでから接合。こうした異素材の合体、接合を自在に可能なのが張子の長所。どこか破綻しても、なんなくリカバリーできてしまいます。

製作終盤に差し掛かり、またまた休息。何事もあわてない、あわてないが信条です。近所の料亭「日影茶屋」の涼やかな寒天ゼリーを買ってきてもらったのでコーヒーを淹れて味わいます。プルプルの食感に感銘を受けながら金魚文様の色味にときめきます。この色合いに両翼フレームを染めてみようかと考えました。

ターナー色彩の『F.アクリルガッシュルミナスシリーズ』を調合して赤寄りのオレンジに彩色。ブラックライトを照射すると鮮やかに蛍光するアクリル絵の具です。両翼の中央にはLEGOのTIEファイター用翼パーツを接着してみました。

コックピットと両翼の軸に穴を開けて糊を溶いた水に半紙を浸してから接合。さらに紙粘土を溶かした液体を塗って両者をがっちりと固定しました。

どことなくメロンパンを想起させる雰囲気
横須賀の大好きなコーヒースタンド「WELL COFFEE」のロゴでリア部をデコレーション

アクリルガッシュ ルミナスシリーズのホワイトを仕上げとして全体にペイントして完成です。両翼の厚みと軸の造形がアンバランスですが、非対称なのが良しと自己肯定し、満ち足りました。

終始、作業を見守ってくれたグローグーに深謝。

張子TIEファイターが完成してふとわかったのですが、形態が車輪の付いた浜松張子の『犬ころがし(犬車)』や、東北の幼児こけし「えじこ」に似通っているなと。2つとも居間の棚に飾って日々愛でているのですが、無意識のうちに視覚的な影響を受けていたのかもしれません。なんなら、両翼にシャフトを通して回転するよう工夫すればよりベターだったかなと後悔。この機能追加はまた別機会にぜひ。

そして感無量のフィナーレへ到達。LEDライトをON! PEZヨーダの首元とウニ殻の肛門と孔対にオレンジ色の光が透かし漏れ出ていて劇的な光景です。ほぼ思惑通りの仕上がりに歓喜しました。欲を言えば、両翼もソフトに輝くのを期待していたのですが、これは叶いませんでした。LED光が内部でうまくまわらず残念。

模様石コレクター山田英春さんが断面を研磨した鉱物アゲートを置けば鏡面にTIEファイターの灯りが映ります
ブラックライト長波で青白く光るさまが不気味

ブラックライトに照らされると、ルミナスシリーズのホワイト塗料は上のように青白く輝きます。これはやり過ぎなので、やめておきましょう。

トム・サックスさんのレシピに基づき作ったフラードームのランプシェード。上に乗るのはLEGOパーツを構築したMOCロッキー

背後にディスプレイするのは、2020年8月、コロナ禍の真っ最中、自宅待機で不安な日々を過ごしていたときに、トム・サックスさんの呼びかけで製作したフラードーム。ダンボールのフレームを家にあったAWAGAMIファクトリーの阿波和紙『ランプ用原紙』で覆って自作してランプシェードに仕立てたのですが、この創作時間にどれだけ心の平穏を覚えたことか。完成してまもなく、体験したことのない別職への転向を余儀なくされた、自分の人生におけるターニングポイントに生まれたDIYプロダクツ。TIEファイター両翼の六角形に惹かれる深層心理にはフラードームの六角形が存在、作用していたのかな。なんて懐かしみつつ、なんとか毎日を生き抜いています。張子DIYは多様なアーティストに感化されながらも心の拠り所としてずっと生涯楽しんで生きたいな。自作のアイデアはすでに頭にあります。

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