【焚き火の前で #5】忘れられた息子の、ちょっと長い夜
実家のある地方の施設で暮らしている父は、脳梗塞を二度やってから、もうほとんど歩けなくなった。
会話もだんだん難しくなり、今では痴呆気味だ。姉のことはなんとか覚えているけれど、半年に一度しか会いに行けない僕のことは、ほとんど記憶にない。
前々回の面会では、別れ際にハッとしたような顔をして、ほんの一瞬だけ「思い出した」気配があった。
でもそのままエレベーターの奥へ消えていった。
あの瞬間の、何かを掴みかけて、結局こぼれ落ちたような表情が、ずっと頭に残っている。
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