【F1】チームオーダーという、あの後味の悪さについて
F1で、いちばん後味が悪い瞬間はいつか。
事故でも、リタイアでもない。 私は、チームオーダーだと思っている。
無線一本で、順位がひっくり返る瞬間。 あれには、何度観ても、慣れない。
一番有名なのは、2002年のオーストリアGPだ。
ポールポジションから走り、レースをずっと支配していたバリチェロ。 そこに、チームから指示が入る。
シューマッハに、道を譲れ。
最終コーナー手前でバリチェロは順位を明け渡した。 勝ち取ったはずのレースが無線一本で終わった瞬間だった。
このレースをきっかけに、F1は翌年から、順位に影響するチームオーダーを禁止する。
禁止したのに、また起きた
ところが、禁止したはずのチームオーダーは、消えなかった。
2010年のドイツGP。 フェラーリの無線から、意味深なメッセージが流れる。
アロンソのほうが速い。
言葉を選んだだけでやっていることは同じだった。 罰金は科されたが明確な違反とまでは認定されなかった。
結局、2011年にF1はこの禁止そのものを撤廃する。 建前で縛っても意味がないと判断したのだ。
なぜ、こんなに後味が悪いのか
レースは本来、順位を勝ち取るものだ。
コーナーで抜き、タイヤをマネジメントして自分の力で前に出る。 その積み重ねが、順位になる。
チームオーダーは、その積み重ねを一本の無線でなかったことにする。
努力の物語と組織の合理性が、正面からぶつかる瞬間なのだ。
組織を知っているからこそ、分かる部分もある
私は、チームで動く仕事をしている。
個人の成果より、チーム全体の結果を優先する場面はどんな組織にもある。 エースを勝たせたほうが総合的には得をする。その理屈はよく分かる。
合理的には、正しい。 でも、ファンとして観ていると理屈とは別のところで胸がざわつく。
合理と感情は、別の場所に住んでいるらしい。
指示に背いた男もいた
面白いのは、この指示に、あえて従わなかったドライバーもいることだ。
チームの意向より自分の勝利を選んだ瞬間。 賛否は分かれたが、多くのファンの記憶に強烈に残った。
従う美学と、背く美学。 どちらも、レースを何倍も面白くしている。
おわりに
チームオーダーに、正解はない。
合理を取れば、感情が置き去りになる。 感情を優先すれば勝利が遠のくこともある。
勝敗は、記録として残る。 でも記憶に残るのは、たいてい、あの後味のほうだ。
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