【推し活】あの頃、僕が推していた君の話
メディアの公式Twitter(X)で彼の名前を見かけた。彼のゴールが勝利に導いたという内容だった……懐かしい気持ちが蘇る。
「元気にしてたんだね」そんなことを思った。
今の推しに出会う、うんと前のこと……北海道から上京した時に、川崎フロンターレの練習場・麻生グラウンドで彼に出会った。大学を卒業して、プロ入りして1年目で、まだ初デビューもしていなかった。
何度か足を運んで、ファンサービスを受けた。話をして、写真を撮ってもらった。
1年目の途中で、プロデビューがかなった。そして、目の前でプロ初ゴールも決めた。その頃に書いていたほぼ日手帳は、今も開きグセが残っているほどだ。
2年目になって、試合に出たり出なかったり。でも麻生グラウンドへ行くとファンサービスを受けることが出来た。試合に出られなかった事もあったけど、それは変わらなかった。
また、この年の初夏に友人がゲーフラを作ってくれたので、それをゴール裏で掲げることをしていた。ホーム・等々力陸上競技場でも、どこかのアウェイでもやってたような気がする。
こういうことをしているうちに、いつの間にか「私イコール彼」というのが出来上がっていた。
フロンターレを通じて知り合った友人知人も、「くーさんは彼でしょ?」と認識していた。そんな楽しい時間が過ぎていった。
状況が変わったのは、3年目の新年が明けた直後だった。
よそのチームに期限付き移籍でオファーされ、それが現実になった。
最初はTwitterを通じて、彼のことを追っていた。いつの間にか、それも出来なくなった。日常生活と、フロンターレと、彼のいるチームを追いかけるほど余裕がなくなったのだ。
そして、彼のライフステージも変わり、そのチームには期限付き移籍が完全移籍となった。
「某チームの社長が彼にオファーしたって!」
その情報は知り合いから教えてもらった。そこは私がかつて応援していたチームで、今でも縁のあるところだった。帰省して、観戦できたら彼に会えたかもしれない……そう思って、ホーム開幕戦を帰省時期に合わせて行くことにした。
その試合の彼は、ベンチスタートで途中から出場した。ホームサポーターの熱量たっぷりだった。社長はどこに期待したのだろう……?そんなことを思いながら、試合会場で見守っていた。試合は勝って、翌日には練習見学をすることにした。
――翌日、自宅から1時間半かけて練習場へ見学した。麻生グラウンドとは全然違う、街の中。観光客も見学していた。練習を見ていても、彼の姿はなかった。フロンターレの場合だと、試合の翌日はリカバリーか練習か、もしくはオフが多いが、このチームではそれではなかった。
練習を終えて、ファンサービスで彼に会えたらと思ったが会えないままだった。通りがかったスタッフさんに「これを彼に渡してください」と小さな東京土産を渡すしか出来なかった。
たった一度きりのことだった。
その後、彼はいくつかのチームを渡り歩いた。そのたびに、何度かプレーしているのを見た。左ウィングの彼はスターティングメンバーとしてではなく、場面展開を求められる途中からの出場が多かった。しかし、シーズン終了に近づく頃、彼の名前がスターティングメンバーにもリザーブメンバーにも見かけなくなった。試合にも行けず、スマホのゲーム情報サイトでしかわからなくなった。
2023年末のオフシーズンになって、契約更新の報道が少しずつ流れてきた。フロンターレの場合は、年明けに一気に「更新しました」というお知らせを流すのみだが、そのチームでは小出しに出してきた。それでも彼の名前はなく、心のなかで「移籍した方が彼にとって幸せなんだろうか……?」と思うようになった。
それが現実になったのは、友人からのラインだった。
「J2のチームに期限付き移籍でいくよ」
新しいチームの公式Twitterでの記事が添付されていた。新しいチームの監督は、彼が以前所属したチームでコーチをしていた。多分、彼なら……と期待はした。師弟関係だもの。
あのチームではあまりいい印象が持てなかったから、きっとこのチームでは活躍してくれるのではないか……そんなことを思った。
投げ込まれるTwitterの記事を見て、彼への期待が大きいことを感じた。背番号を見たら、フロンターレサポーターなら反応するものだった。
(やばい……!)
そんなことを思ったのは言うまでもなく。Twitterの写真で見る彼は、昔と変わらないままだった。
間もなくして、2024年のJリーグが開幕した。
メディアはJ1チームしか取り扱わないが、TwitterにはJ2のチームのことも紹介してくれた。そこには、彼がゴールしたことが記事として上がっていた。
(よかった……!)
多分、数年ぶりのゴール。新しいチームに受け入れられたと感じた。たまたまただが、その日は彼の誕生日でもあった。
気がつくと、彼がその年令になったということは自分もそれなりに年を取ったということだった。出会った時は、大学を卒業したばかりだったのに、気がつくと彼は結婚して2児の父親にもなっていた。
それが現実となったのは次のホームゲームで150試合出場達成セレモニーが行われた時で、大学の同級生だったという奥様と小さな子どもさん2人がそこにいた。
いつの間にか時間が経っていた。初めて出会ってから10年近く。私も転職したり、体を壊すなどしてきたけど、彼もそれなりの道を歩んでいた。ただ変わらないのは今でもサッカー選手であるということだった。
サッカー選手が現役でいられる平均年齢は26歳という話を聞いたことがあるが、彼はいつの間にかその平均年齢をクリアしていた。まだ走れるし、武器も衰えていない。今の31歳なんてまだまだ若いのだ。
彼を見るために、新しいチームでのスタジアムに行くということも考えたが、今の私にはそこまで追いかけることが出来ない。『サッカーを見に』会いに行っても、そこまでのエネルギーが追いつかないのだ。新しい推しに出会ったのもあるが、年を取ると余裕もなくなってしまう。だから距離をおいて、見守るしか出来ないのだ。会って、話すことも出来ないのなら見守るしか出来ないのだ。
これはガチ恋に近いのかもしれないが、そういうことではない。彼が1年でも、いや1日でも長く現役でいてくれるとそれだけでも幸せなのだ。少しでも頑張ってくれたらそれでいいのだ。
どうか、この先もケガしないで活躍してもらえますように――
いいなと思ったら応援しよう!
サポートしてくれたら嬉しいです。頂いた分については、自分も周りも心地よくさせるために色々回していこうと思ってます。まずはコンビニスイーツからはじめようかと…その次に推しを含めた大好きなフロンターレに関したことを。