証拠を燃やす ”逆パワハラ課長” 〜これが現場のリアルです〜
「ここ、ゴミ屋敷かよ……?!」
目の前の光景に、思わず口から出た言葉。
まさか、あの噂が本当だったなんて。
これは、私が30代の頃、製造部にいたときの話です。
いまだに記憶にこびりついて離れない、そんな悲惨な出来事を今日は書きます。
◇ 噂…
「おい、知ってるか?…あの部屋、マジでヤバいらしいよ」
「E課長、日報とか点検表とか、ぜんぶそこにブチ込んでるってよ」
「…は?なにそれ?」
始めて、それを聞いたとき、
私は正直、「そんな適当なこと言うなよ」としか思ってませんでした。
でも、妙にリアルなトーンで話す同僚の顔が引っかかって、
気になってその場所に行ってみました。
そこは、工場内にあるシャワー室。
ロッカー室の片隅にあって、一人がやっと入れるくらいの小さな部屋。
「従業員のために」と数年前に作られたものの、
誰も、一度も使われたことがないシャワー室でした。
会社でシャワーを浴びるくらいなら、サッサと家に帰りたい。
そう思う従業員がほとんどだったから、近寄るものすらいなかったんです。
しかも、普段は鍵がかかっていて、まさに開かずの扉。
この日、管理室から鍵を借りて、その扉を開けた瞬間――
「……うわっ!」
目の前に広がったのは、まるで紙の墓場のような光景でした。

◇ E課長
シャワー室の床一面に散乱した紙。
うずたかく積み上げられた紙。
日報、点検表、チェックリスト、報告書……などなど。
どれも「提出されてるはず」のもの。
けど、ここにある書類には、提出した痕跡がまったくない。
しかも、1年前、いや2年前の書類まである…
噂通り「ここにブチ込んでる」感じで、乱雑そのもの。
足の踏み場もない状態だったんです。
「これが本当に、E課長がやったことなのか?」
一瞬、まさかと思ったけど、E課長は逆パワハラする超問題児だ。
「やりかねない!」
いやこれまでの素行の悪さからいっても「間違いない!」
すぐにそう確信して、私はE課長のもとへと向かいました。
◇ 超・問題児
「E課長、あのシャワー室……一体どういうことだ!」
私がそう切り出すと、E課長は面倒くさそうに…
「あんな記録は意味がない」
「提出してもムダだ」
……えっ?
耳を疑う答えが返ってきた。
まったく悪びれてもいない。
彼は、平気で部下にパワハラをする。
上司にも暴言やケンカ腰な態度をとる。
そう、社内でも有名な「超・問題児」。
シャワー室にブチ込まれた記録をみると、E課長のサインもハンコもない。
完全にノーチェックだ!
このまま見逃せば、私は共犯者になってしまう!
それだけは絶対イヤだと思い…
◇ 逆ギレ
「これは、ただの怠慢じゃないか!」と指摘すると、
「前からやってることだ!」
「今さら言うな!」
予想通り、上司の私に対し、E課長は逆ギレしまくり。
もう呆れるしかない。
そのあとも、まったく話はかみ合わず、
こっちが冷静でいようとしても、E課長は感情的に言い返してくるだけ。
全身の力が抜けるような、そんな疲労感が襲ってきました。
◇ ダメ元で
仕方なく、私は直属の上司・・・B部長に報告しました。
この、B部長。
じつはE課長をイチバン可愛がるアホ上司。
「どうせ庇うだろう。」
「でも、職制上は話しを通さない訳にはいかないし。」
私はダメ元と思いつつ、
「E課長が記録をシャワー室にブチ込んでます……」
「そのこと、知ってましたか?」
すると、B部長
「おう、知ってるよ」…とあっさり認めた。
あたかも当然のように。
……やっぱりダメだ。コイツらグルだった。
「このまま黙認するってことですか?」
少し強めに問いただしてみたものの…
「犬の世話あるから」
とだけ言って、さっさと帰っていった。
こんな連中が、現場の管理者として平気な顔して暮らしてる。
そう思うと呆れ、怒り、虚しさ、
いろんな感情が、一気に押し寄せてきたのを覚えてます。
◇ 闇へ
それから数日後。
同僚がこんなことを教えてくれました。
「E課長、日曜日の昼間にひとりで焼却炉の前にいたらしいぞ」
「なんか、大量の書類を燃やしてたっぽい」
まさか!?
私は急いで、あのシャワー室へと向かったが、もうそこには
一枚も書類は残っていなかった……
……証拠隠滅だ。
提出されるはずだった書類の山。
何も確認されず、保管もされず、燃やされてしまった。
こうしてまた、ブラック企業の問題が闇へと葬り去られていきました。
◇ 環境
私は怠慢や不正が当たり前の職場で、いっぱい悔しい思いをしてきました。
もし、これを読んでる読者が似たような環境で悩んでいるなら――
自分の気持ちを大切に行動してほしいと願います。
「おかしい」と感じたことを、自分の中で蓋しないで。
自分の気持ちに、嘘はつかないで。
場に流されないで。
そしてもし可能なら、声を上げるか、新しい環境を探す勇気を持ってください。
自分の気持ちや価値観を大事にできる場所・人は、きっとあります。
少なくとも「犬の世話があるから」と無責任な上司のもとで、自分を消耗させたりしないで。
◇最後に
ブラック企業の問題は、仕組みや制度をいくら作ったとしても、
それを守らない人。
無責任な人たちに壊される。
そう簡単に、根づいた文化は変わらない。
どっぷりと染まった人たちを変えることもできない。
それを痛感する事件でした。
あのときのシャワー室にうず高く積まれた書類たちは、
たぶん今もどこかで、形を変えて存在している。
あなたの周りにも、ありませんか?
見て見ぬふりが常態化している「ゴミ屋敷のような場所」。
もしあったとしても、
どうか、自分の感覚を信じて。
共犯者となってブラックに染まらないように。
