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「宇宙の収束」 #ショートショート

「宇宙は、いつ終わると思う?」


研究室でコーヒーを飲みながら、後輩の真鍋が言った。

「熱的死。ビッグクランチ。真空崩壊。まあ色々あるな」

「違いますよ。もっと“数学的”な終わり方です」

真鍋はホワイトボードに数式を書き始めた。

最初は普通の宇宙論だった。
膨張率、ダークエネルギー、時空曲率。

だが途中から、式が妙な形になっていく。

まるで宇宙そのものを、ひとつの数列として扱っているようだった。

彼は最後にこう書いた。

$${\lim_{t \to \infty} U(t)=L}$$

「……極限?」

「ええ。宇宙は“どこか”に収束するんです」

私は笑った。

「宇宙が数列みたいに?」

「逆です。数列が宇宙に似てるんですよ」

真鍋は静かにモニターを回した。

そこには、全天観測データが映っていた。
銀河の分布。背景放射。重力波。

それら全てが、ある“形”へ近づいていた。

少しずつ。
誤差を減らしながら。

まるで反復計算のように。

「この宇宙、最初から解を探してるんです」

「何の解を?」

真鍋は少し黙ってから言った。

「収束先ですよ」

その瞬間、研究室の照明が一斉に落ちた。

停電かと思った。

だが窓の外を見ると、街の光も、星も消えている。

真っ暗な宇宙。

いや、“均一”になっていた。

境界も距離感もない。
全てが、同じ値へ近づいている。

パソコンの画面だけが白く光っていた。

そこには、自動で新しい式が表示されていた。

$${\forall x\in Universe,\ x\to L}$$


真鍋が、小さく呟く。


「ほら。あと少しで、全部同じになる」

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