土星の環を指に
「結婚してください!」
幼馴染から突然そう言われた。
「どうしたの急に?」
私は驚きすぎて、しばらく時間が空いてからそう言った。
「ずっと好きだったんだよ」
彼の真剣な眼差し。彼は指輪をそっと差し出す。
キラキラとした 金色の指輪だ。
指輪は細くて、土星のリングの様に見えた。
冗談ではなさそうだ。
「……ちょっとだけ、時間のちょうだい」
そう言って私はその場を後にした。
よく晴れた月のない夜だった。
今夜は随分と星が綺麗だ。
そういえば子供の頃、学校に集まって一緒に天体観測をしたっけ。
彼は天文が好きで、親に買ってもらった天体望遠鏡を持って学校の校庭にやってきた。
一生懸命、土星の方に向かって望遠鏡を調整している。
「見ろよ!土星が見えるぜ!」
彼はそう言って得意げに私を望遠鏡の前へと連れて行く。
覗き込めば ぼんやりと少しいびつな星の形が見えた。
いびつに見えるのは、土星のリングが写っているからなのだろうが、たとえ親から買ってもらった天体望遠鏡がとても良いものだとしても市販で売っている望遠鏡ではこのぐらいが限度なのだろう。
「よくわからない」
私は難しい顔をしてそう言った。
「えー」
彼は拗ねた表情になる。
懐かしいな……
突然のことで驚いたけれど、実を言うと私は彼を好きだった。
この子供の頃からまっすぐで純真で好奇心が強くって……
彼の方もそうだと思わなかった。
だから結論はとっくに決まっている。
彼の隣に立つのはきっと最高に楽しいだろう。
私は星空に指を伸ばし、土星のリングが指に輝くところを想像した。
きらめく星はあの日と変わらない輝きを放っていた。

