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【Sister's Voice #1】国立科学博物館・木村由莉博士

 古生物女子会のnoteへようこそ!
 このSister’s Voiceシリーズでは、現役の古生物女子たちのインタビューを掲載していきます。

 記念すべき一人目の古生物女子は、国立科学博物館研究主幹の木村由莉(きむら ゆり)博士です!

3月5日、国立科学博物館の研究室で。
デスク周りにはお気に入りのぬいぐるみも

木村 由莉 博士
国立科学博物館 生命史研究部 進化古生物研究グループ研究主幹。早稲田大学を卒業後、アメリカ・サザンメソジスト大学で修士号・博士号を取得し、古生物研究のプロとして歩み始める。2015年より現職。専門は哺乳類古生物学(特に新生代の陸生哺乳類)。

https://www.kahaku.go.jp/kenkyu/kenkyusya/anthropo-paleontology/ykimura/

INTERVIEW

Q1. 古生物の世界に入ったきっかけを教えてください。

 もともと、恐竜は好きでした。小学生のころに家族で出かけることになって、「幕張で開催中の恐竜展か、ディズニーランドか、どっちにする?」と聞かれて、迷わず恐竜展がいい!と答えるほどです(笑)。

 いざ、恐竜展に行ってみると、恐竜にももちろん圧倒されましたが、特に印象に残ったのは、来場者にプレゼントで配られていた石でした。それは私の記憶だと1億年前の石で、手に乗せてみた瞬間、これまでに感じたことのない「カッコイイ」という感情が湧き出ました。まるで、一億年の時と私の人生が今、この手のひらの上で交差しているような、とても複雑ではかり知れない、壮大な体験をしたようでした。この感覚をもっと知りたい!と思ったのが、古生物への道の第一歩だったと思います。

 それから数年後、映画「ジュラシック・パーク」の第一作目が公開され、大流行しました。私が小学校5年生のころなのですが、古生物学を研究することがお仕事として存在するのを知ったのは、その映画を見たからですね。その映画では、古植物学者(植物の化石や植物の進化を研究するお仕事)のキャラクターとして、エリー・サトラー博士という女性が登場するのですが、彼女が病気のトリケラトプスの原因を調べるため、トリケラトプスの糞の中に手を突っ込む姿に感銘を受けました。「ああ、女性がこういう泥にまみれる仕事をできるんだ」という衝撃もありましたし、それなら私も古生物学を研究することをお仕事にしてみたいという気持ちの原点でもあります。

Q2. 好きな古生物は何ですか?

 哺乳類に関しては、研究対象として見ているので、推し・好きとは別の感情があるのですが、ケラトガウルスという生き物がいて、それはなんだかかわいいと感じます。ビーバーみたいな体をしていて、大きさもビーバーくらいなのですが、顔に2本、鼻から生える骨の角を持っているんです!学名 Ceratogaulus rhinocerus をみるとさらにわかりやすくて、種小名にはサイ(rhinoceros)が隠れています。「ツノの鼻」という意味です。ペットとして飼ってみたいです。

 ペットとして飼ってみたい恐竜だと、プシッタコサウルスや、プロトケラトプスみたいな、小さめの角竜類ですね。本当はトリケラトプスが一番いいけど、ちょっとお世話が大変かなって(笑)。角竜類ってかわいいんですよ。

Q3. 古生物女子であることを誇りに思う瞬間はありますか?

 これについては、質問をいただいて私なりに考えてみました。私の場合は、古生物学者という仕事について、自分史を通じて知ってもらうための本を書いたことだと思います。そのための時間を作ったことが自分のことを誇りに思えることです。多くのお手紙をいただくきっかけの一つになりました。

 今の日本の古生物学分野を見渡すと、骨化石を扱う古脊椎動物学では、私よりも上の世代の女性研究者は本当に少なくて、片手で数えられてしまうほどなんです。古生物女子の先輩たちもものすごく苦労したと思うし、私もいろんなことを経験して、悩んで、私なりに必死にやってきました。

 今のお仕事は30代になってから就きましたが、それからしばらくして、「今の私に何ができるのか」を真剣に考えた時期があります。そこで思いついたのが、「私が古生物学者になるまでの歩みや、その時感じたこと、悩んだことを、鮮明に覚えているうちに後輩たちにお伝えしよう」ということです。その手段のひとつとして、著書『もがいて、もがいて、古生物学者!!みんなが恐竜博士になれるわけじゃないから』(通称『もがコセ』)を刊行しました。だって、たとえば10代の思春期のころってたくさん悩んで頭がいっぱいいっぱいになるけど、年齢を重ねるにつれて当時のリアルな感情とか、だんだん忘れて行っちゃうじゃないですか?だから、30代として20代の頃の温度感を実感として覚えているうちに、古生物学者になるまでの過程と、そのとき感じていたことを、なるべくリアルな温度感で書き残して伝えておきたかったんです。

 この本を刊行する少し前には、首長竜類の研究者であり、古生物女子の先輩である佐藤たまき博士が一般向けの普及書籍『フタバスズキリュウ もうひとつの物語』を刊行していたこともあり、勇気をもらえました。今の学界やファンの流れを見ていると、佐藤たまき博士や私は、次の世代の古生物女子が育つための第一世代だと感じています。

Q4. 今、挑戦したいことを教えてください。

 実は、国立科学博物館に着任してからの10年のうち、今が一番の研究のピークなんです!もともとは大学生・大学院生の指導はしていなかったのですが、陸生哺乳類化石を研究したいという学生さんたちが私のもとへ集まってきてくれるようになって、まるで大学の研究室みたいになってきました。正しくは「研究サークル」なのですが!今はこのサークルで、メンバーたちからインスピレーションを受けながら研究を進めています。

 最初は私一人だった研究室で、私個人のために研究を遂行していましたが、今はもっと、みんなの研究をつないでいけるサークルにしたいと考えています。究極的な目標としては、このサークルで、「日本列島に来て、哺乳類はどう変わったか?」という謎を、機能形態・生態など、様々な視点から解明していきたいです。

 国立科学博物館に着任してしばらくは、意地悪なことが続きました。明確な理由はわからないけれど、自分が女性ではなかったら起こらなかったことのように感じたので悔しかったです。でも、考え方が変わった時期があって。着任から5年後に著書『もがコセ』を出版して、さらにそれから2年後に特別展『化石ハンター展』を担当したのですが、その数年で「あれ、実は私にはたくさんの味方がいたんだ」ということに気がついたんです。著書に感銘を受けてくれた人、展示でファンになってくれた人、私を研究者として尊敬してくれる人などなど、味方たちの存在を知って、そうしたら気持ちの持ち方や、周囲からの評価の受け取り方が変わりました。味方たちには感謝しています。

Q5. 尊敬する古生物女子を教えてください。

 3人いて、1人目は映画『ジュラシック・パーク』に登場した、古植物学者のエリー・サトラー博士です。架空の人物ではあるのですが、私が若いころ、大学生だったころ、大学院生だったころ、いつも困ったことがあったら「こんなとき、彼女ならどうするかな?」と空想しながら自分の行く道を考えていました。生涯にわたってインスピレーションを与え続けてくれた、大事な古生物女子です。

 2人目は、私が大学院生のころの指導教官だった方のパートナーで、古植物学者のBonnie Jacobs博士です。大学院時代は本当にお世話になりました。彼女は私よりも小柄な方なのですが、大学で大きな研究チームを率いていました。小さな体と大きなチーム、それがもう、格好良くて!私も小柄ですが、私でもがんばれそう!と思えるきっかけになったお一人です。

https://www.researchgate.net/profile/Bonnie-Jacobs

 3人目は、首長竜類の研究者である佐藤たまき博士です。彼女は私よりも10個くらい年上で、数少ない女性の研究者だったので、何かと勇気をもらっていました。私は私自身の未来や、古生物女子の未来をちょっと先の先輩たちを通してみているので、そのような意味では、彼女は古生物女子のパイオニア的存在だと考えています。


Q6. この記事を見ている古生物女子たちにメッセージをお願いします。

 今回は、古生物女子会の設立記念ということで、古生物女子会へのメッセージとさせてください。まずは、古生物女子会の設立、誠におめでとうございます!私自身も古生物女子のために個人的に活動をしていたのですが、会を主宰するのは難しかったという経緯があったので、このようなコミュニティができて、しかも最初に私の話を聞きに来てくれて本当にうれしいです。この会の設立は10年前の古生物分野では考えられなかったことですから、ここまで古生物女子たちが成長してきたんだということが感慨深く、素晴らしいと感じています。5年後、10年続けた後に、また私よりも下の世代から古生物女子の先輩たちが生まれてくるのを楽しみにしています。会の活動は大変だと思いますが、継続が一番大事です。頑張ってください!

 「研究サークル」をしていて感じたのは、「ひとつの種も大きくなっていけば、やがて、雑音が気にならなくなるほど立派な木になる」ということです。たった今、ここに蒔かれた「古生物女子会」という種を、大事に育てていってくださいね。

(文責・インタビュワー:しぇりー)

#古生物女子 #インタビュー #哺乳類 #化石 #古生物女子会


ここまでお読みいただき、誠にありがとうございました!

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それでは、また次の記事でお会いしましょう!

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