ジ・エンターテイナー
エレベーターで9階まで上がっていく。同乗している5人は全員ご年配の方だ。エレベーターの扉が開くと、ライトで照らされたおしゃれな横文字が出迎える。

Bunkamura LECINEMA
渋谷の宮益坂のビルにある映画館「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」。この映画館ではロバート・レッドフォード追悼上映をやっていて、今日は『スティング』の最終上映日だった。

ハリウッドの大俳優ロバート・レッドフォードが今年の9月16日に亡くなった。その訃報を知った時、俺は「ついにか……」と思った。89歳での逝去だから、大往生なんじゃないかと思う。
彼を初めて知ったのがまさにこの『スティング』だった。「こんな絵に描いたような西洋美男子がこの世にいるのか……」と衝撃を受けたのを覚えている。そしてロバート・レッドフォードとポール・ニューマンのコンビは俺を魅了した。なんだこのコンビは。まさに黄金コンビ。言語化できないけど、とにかくしっくりきて、とにかくかっこよかった。金髪でめちゃくちゃイケてるロバート・レッドフォードと、銀髪でロバートにも引けを取らない"渋さ"のかっこよさを持つポール・ニューマン。単体でも煌々と輝くこの二人が、組み合わさることで何倍にもその輝きが増す。まさに掛け算のコンビネーションだ。
この二人のコンビ映画はこれだけじゃないと知り、もう一つの映画もすぐに観た。『明日に向かって撃て!』。時代遅れのギャングの逃避行を描いた西部劇で、アメリカン・ニューシネマの代表作の一つ。ここでも二人の黄金コンピっぷりはいかんなく発揮されていて、最強のガンマンを演じたロバート・レッドフォードのかっこよさは本当に類を見ないほどだった。(この映画のラストの演出は奇跡的で、いつか誰かと語り合いたいと切に願っている)

「あなたにとって最高のコンビは?」と聞かれたら、俺は間違いなく「ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード」と答えるだろう。それくらい、俺にとってこの二人のコンビは胸に深く刻まれている。
実を言えば、『スティング』はDVDで5回以上は観たので、今回映画館で観る予定はなかった。しかしたまたま映画好きの友人に誘われ、彼は結局予定が合わず観れなかったが、せっかくだから銀幕で観ようと思い、2日前に急遽予約したのだった。
初めて訪れた映画館「Bunkamuraル・シネマ 渋谷宮下」は、ガヤガヤした渋谷駅のビル中とは思えないほど落ち着いた空間で、黒を基調とした素敵な空間だった。ふと売店に目がいく。夢追うフリーターの貧乏暮らしだから、普段は売店で飲み物を買ったりしない。でもせっかくだから今日の映画体験を胸に強く刻みつけたいな。そう思ったら、自然とカウンターに向かっていた。そして俺は、好きな人が好きだと言っていたチャイティーを頼んだ。支払いは、彼女とご飯に行った時に受け取ったPayPayで。……はぁ、彼氏がいるなら好きになる前に言ってほしかった。
スクリーンに入り、左後ろの端の席に座る。6割ほど埋まった客席を見ると、ほとんどが中年以上の客だった。きっと往年のファンたちが、ロバート・レッドフォードを観るために足を運んだんだろうな。予告が流れ始める。あぁ、早くあの大好きなオープニング曲を聴きたい。そしていよいよ始まる本編。昔の金のユニバーサル・ピクチャーズのロゴとともに、素敵なピアノの音色がゆっくりと聞こえてくる。ジ・エンターテイナー。これだよ、これ。はぁ、なんて素晴らしい入りなんだ。その音色を聴いた瞬間、俺の胸は一瞬でときめき、ワクワクし、物語へと没入した──。
* * *
やっぱり映画館で観てよかった。没入度が家で観る時と全然違う。純度100%で映画を楽しむことができた。ワクワクも、ドキドキも、まっすぐ感じることができた。
作中、主人公サイドの仲間たちが意思を通わせる時に使う仕草がある。俺はこの仕草がめちゃくちゃ好きで、最後ロバート・レッドフォードに向かってこっそりその仕草をした。それからロバート・レッドフォードの姿を目に焼きつけようと、じっと見据えた。
Bunkamuraル・シネマ
チャイティー
ロバート・レッドフォード
今日の『スティング』の鑑賞体験をいつまでも鮮明に覚えていたいから、noteにも書いて、胸の引き出しにしまいます。
記憶を消してもう一回読みたい漫画は?
『スラムダンク』
記憶を消してもう一回観たい映画は?
それが今日観た『スティング』です。あぁ、まだこの映画を観ていない人が羨ましい。ぜひこれからもたくさんの人が騙されてほしい。ロバート・レッドフォードありがとう。そしてこれからもちょくちょくよろしくお願いします。
