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三人以上集まると演技が必要か|令和の夏目漱石「こころ」下23話【演技】


Kがついにスナックで娘とママと出会う回です。

原作でもKは下宿の感想を「悪くない」と言っていて、Kなりの最大限の褒め言葉なんじゃないかと感じますね。

それにしても先生、11-18話で散々娘と仲良くなった後に友達を連れてくるなんて余裕ムーブをかましてるのを、ママには見抜かれてるようです。



令和のこころ 下 二十三


今日は友達も連れてくんで!

俺はママにLINEして、Kとスナックに向かった。


店の前に着いた時、Kはすぐに帰ろうとした。

でも俺は

ここのママは俺の師匠なんだ
今日だけ奢ってやるから
たまには息抜きしろよ

そう言って無理やり中へ引き込んだ。


ママと娘は、俺への態度と同じようにKに接してくれた。

ママは俺の時と同じような東大いじりから入って、Kの話をよく聞いてくれた。

娘はKの隆々とした前腕を嬉々として触った。


俺は、そんな風にKにも接してくれるのを、自分への好意から来たものだと勝手に解釈して、内心嬉しかった。

Kがほとんど喋らず仏頂面してたのにもかかわらずだ。


半ば騙してKを連れてきてしまったこともあって、その日は一時間ほど軽く飲んで店を出た。

 

どうだった?と聞いた時、意外にもKは「悪くはないけど」と言った。

正直俺から見たら、かなり居心地悪そうに見えた。

でもまあ、言葉通りにも受け取れた。

本当は窮屈だったけど、修行として悪くなかった、って意味だったのかもしれない。


もちろんKはありがたがらなかった。

Kは酒や女にうつつを抜かす学生を軽蔑してたから、もっと違う価値観の人間に堕ちたくなかったんだろう。


Kには、心と身体を完全に分断する癖があるように見えた。

もっと違う設定だったらKはどれだけ生きやすかったか。

身体を痛めつければつける程、むしろ魂の輝きが増すとでも考えてたんだろう。


俺は、時間をかけて馴染んでもらう作戦に出た。

固い氷をいきなり砕くんじゃなくて、日向に出して少しずつ解かすつもりだった。

そのうちに融けだして温かい水になれば、自分の危うさに気付く時が来るだろうと思った。


後から聞いた話だと、ママはあまり二人で来てほしくなかったらしい。

わざわざ連れて来なくてもいいんじゃない?と言ってきた。


俺は、Kは別に面倒を起こすようなやつじゃないと言った。

そしたら、面倒を起こさなくてもあんまり馴染みのない人はねえ、と返された。

俺だって最初は同じだったじゃん、と言うと、あなたは最初から何となくわかってたから、と変なことを言って譲らない。

俺は苦笑するしかなかった。


するとママは、あなたのためにもやめときなよ、って言ったんだ。

俺が理由を聞くと、今度はママが苦笑した。


実を言うと俺だって別に、どうしてもKを連れていく必要はなかった。

でもKを助けるために金をそのまま渡そうとしても、あいつは絶対に受け取らない。

だから俺は、まずはあいつを俺の生活圏に入れてしまおうと思った。

Kの息が詰まらないような時間が、少しでもできればと思ったんだ。


もっとも、Kの経済事情をママにそのまま話すつもりはなかった。

俺はママに、Kの健康の話をした。

一人でいるから情緒が不安定な時があって、放っとくと悪化しそうで怖いんだと言った。

実家との関係がこじれてることや、ストイックな生活ぶりも話した。


俺は、溺れてるやつを引き上げて、温めてやるつもりで、Kを連れて行くんだと言った。

だからなるべく優しくしてやってほしいと、ママにも娘にも頼んだ。

そこまで言って渋々ママは折れてくれた。


初めて店に行ってから一週間経った日。

事情を知らず、いつもの鈍い顔で待ち合わせたKを、何も知らないフリして迎えたんだ。




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