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【姫路経済】「人づくりこそ、まちづくり。」──ふるさと・ひめじプラン2030が描く、誰も取り残さない地域


姫路市の総合計画「ふるさと・ひめじプラン2030」を読み込むと、私たちリメイクが掲げる "Digital to Social Inclusion" と、ほとんど同じ方向を向いた言葉が並んでいます。つまり、市の計画も「誰も社会から取り残さない地域」を本気で目指している、ということです。

行動指針、市民活動、人権、文化、多文化共生。一見バラバラに見えますが、全部つながっています。今日はそのつながりを、姫路経済の視点で解きほぐしてみます。





1. 四つの行動指針:人・地域・活力・土台

計画の第2章は、人口が減っていく社会で持続可能なまちをつくるための共通姿勢として、四つの行動指針を掲げています。命とくらしを支える「土台」づくり、世界に飛躍する「活力」づくり、つながり信頼し合う「地域」づくり、そして多様な個性が輝く「人」づくり。この四語が、計画全体を貫く背骨です。

四つ目の指針は、年齢、性別、国籍、障害の有無に関係なく、一人ひとりを地域社会の担い手として認め合う、と書かれています。私たちのモットー「人づくりこそ、まちづくり。」と、ほぼ同義です。リハビリの現場で利用者さんを「支えられる人」から「支える側」へと戻していく営みと、根っこは同じだと考えております。

そして市政運営の土台には「姫路市まちづくりと自治の条例」があり、情報共有・参画・協働という三つの原則が置かれています。情報を共有し、市民が参画し、ともに協働する。この三原則は、そのまま良い組織運営の原則でもあります。

以前、姫路市が中核市として兵庫県の標準支援の枠から外れ、市独自の制度で動いているという話に触れました。だからこそ、この四つの指針は他人事ではありません。市の枠組みをそのまま使えない事業者ほど、計画の言葉を自分の現場に翻訳する必要があるのです。


2. 自治会の担い手不足と、ICTという処方箋

市民活動分野の政策1は、コミュニティ活動の推進を掲げています。姫路の強みは、全国の中核市でも高い自治会加入率。十四の地区連合自治会などで構成する地域づくり推進協議会が、自主的に地域の課題解決に動いています。土台はしっかりしているのです。

ところが課題も率直に書かれています。役員のなり手が足りない、役員の負担が重い、行事への参加が少ない、活動する人がいつも同じ顔ぶれになる。少子高齢化とライフスタイルの多様化のなかで、つながりが薄くなっている。これは介護の現場で「特定の職員に業務が集中して属人化する」のと、構造がそっくりです。

公民館や市民センターといった活動拠点は数多くあり、市民活動・ボランティアサポートセンターも学習機会の提供や相談、団体間の交流を支えています。基盤はある。足りないのは、その基盤を回し続ける人の余力です。

計画はその処方箋として、情報伝達の円滑化と事務負担の軽減のために、ICT(情報通信技術)の活用を挙げています。前回、産業保健の回で「人の手だけに頼る運用は、その人が倒れたら止まる」という話をしました。担い手の固定化も同じで、デジタルで負担を分散できれば、特定の誰かに依存しない地域運営に近づきます。

ここで大事なのは、ICTは人を減らす道具ではない、という点です。役員一人あたりの事務を軽くして、本来やりたかった「顔の見える活動」に時間を戻す。デジタルは、人のつながりを置き換えるのではなく、つながる余白をつくるために使う。私たちの "Digital to Social Inclusion" は、まさにこの順番を大切にしています。


3. 人権と男女共同参画:包摂のもう一つの柱

政策2は、人権尊重社会の形成を掲げています。障害者差別解消法やヘイトスピーチ解消法など法整備が進む一方で、近年はインターネットを通じた人権侵害が新しい課題になっている、と計画は指摘します。便利になった道具が、同時に誰かを傷つける刃にもなる。デジタルを扱う者として、ここは目をそらせないところです。

性の多様性への理解は進みつつあるものの、無理解や偏見は根強く残る。DVやハラスメント、いじめや虐待も解消されていない。だから市は、相談体制の強化や関係機関との連携、インターネットモニタリングの実施で、人権侵害への対応を充実させると明記しています。

男女共同参画も同じ流れにあります。指導的地位に占める女性の割合は全国的に低く、固定的な性別役割分担意識が残っている。性別にかかわらず活躍できる環境づくりは、福祉や医療の現場にとっても切実なテーマです。女性が多く担う介護の職場こそ、働き方の設計が問われています。

人権を守るとは、特定の誰かを「例外」として扱わないこと。これは私たちが利用者さんに向き合うときの基本姿勢でもあります。包摂は、文化やデジタルの話に入る前に、まず一人ひとりの尊厳から始まる。計画はその順番を、人権を市民活動分野の二番目に置くことで示しています。


4. 文化と多文化共生に宿る「社会包摂」

政策3の市民文化活動には、はっきりと「社会包摂」という言葉が出てきます。文化芸術への参加を通じて多様な価値観を尊重し、相互理解を進める。年齢や障害、経済的な状況にかかわらず、等しく文化に触れ、自ら活動できる機会をつくる。文化芸術基本法にも盛り込まれた理念です。

世界文化遺産の姫路城、播州秋祭り、ル・ポン国際音楽祭。姫路には誇れる文化資源が数多くあります。一方で、新型コロナによる休館や行事の中止を経て、オンラインを活用した創作・発信・鑑賞が改めて注目されました。会場に行けない人にも届ける手段として、デジタルが社会包摂の役割を担い始めているわけです。

政策4の多文化共生も同じ構図です。海外の姉妹・友好都市が六都市、姉妹城が二城、観光友好交流協定が一城。世界とのつながりは豊かなのに、市民が外国人と日常で交流する機会はまだ少ない。だから計画は、災害時の情報提供や、相談・案内の多言語化を進めると明記しています。

言葉の壁で情報から取り残される人をなくす。これはリハビリの現場で、専門用語を平易に言い換えて利用者さんに伝える工夫と、同じ思想です。届ける相手に合わせて手段を変える。文化も、言語も、リハビリも、相手を排除しないための翻訳という点で、全部つながっています。


5. リメイクの現場への実装

計画の言葉を、私たちの一日の業務に落とすと、こうなります。

第一に、業務の属人化を「役員のなり手不足」と同じ課題として棚卸しする。送迎ルートの組み方や記録の様式が特定の職員の頭の中にしかない状態は、地域でいう担い手の固定化と同じです。手順を文書化し、誰でも回せる形に直すところから始めます。

第二に、ICTを「人を減らす」ではなく「余白をつくる」目的で導入する。記録や請求の事務をデジタルで軽くし、空いた時間を利用者さんとの対話に戻す。デジタルの効果は、削った時間ではなく、生まれた時間で測ると考えております。

第三に、情報を「届く形」に翻訳する習慣を持つ。計画の多言語化と同じく、私たちは専門用語を利用者さんやご家族の言葉に置き換える。掲示物も連絡も、相手が受け取れる形に変える。これが現場版の社会包摂です。

第四に、地域の文化・行事への接続を、リハビリの目標に組み込む。祭りに参加したい、文化施設に出かけたい。その「行きたい場所」を歩行や体力の具体的な目標に変えることで、機能訓練が地域参加とつながります。


6. 用語解説

社会包摂(ソーシャル・インクルージョン) 年齢や障害、国籍、経済状況などにかかわらず、誰もが社会の一員として参加できる状態のこと。リハビリでいえば、機能を取り戻すだけでなく「地域に戻る」までを支えることに近い。

中核市 人口20万人以上で、都道府県の事務の一部を担う市。姫路市はこれにあたり、保健・福祉などで市独自の判断ができる一方、県の標準的な支援枠から外れる場面もある。

地域づくり推進協議会 地区連合自治会などで構成され、地域の発展や課題解決のために自主的に活動する組織。姫路では十四の協議会が動いている。

男女共同参画 性別にかかわらず、社会のあらゆる場面に対等に参画し、活躍できる状態を目指す考え方。固定的な性別役割分担意識の解消が土台になる。

多文化共生 国籍や文化の違う人どうしが、対等な関係で支え合いながら同じ地域で暮らすこと。災害時の情報提供や相談の多言語化が、その基盤になる。


7. まとめ

「ふるさと・ひめじプラン2030」を一冊の本として読むと、行政の計画というより、まちの設計図に見えてきます。人を育て、地域でつなぎ、活力を生み、土台を整える。その全部の根っこに、誰も取り残さないという社会包摂の思想が流れています。

私たちリメイクが現場でやっていることは、その設計図の一区画を、リハビリと介護とデジタルで埋める作業にほかなりません。対決より解決。人づくりこそ、まちづくり。市の計画も、私たちの一日も、向いている先は同じです。

行動指針も、自治会も、人権も、文化も、多言語化も、そしてリメイクの送迎一本も──全部つながっています。

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