ショートショート「ときめきトゥーシューズ」※毎週ショートショートnote11/9お題
桜が舞い散る春に、君と出会った。
バレエ教室の厳格で退屈な空気感の中、君は盛大に欠伸をしていた。
とある公演でペアになった君は、どこか別の世界を旅しているかのように、遠い目をしていた。
体育館での稽古中、私をめがけて飛んできたバレーボールを、君は顔面で受け止めてくれた。
鼻血の赤色が鮮明で、私の胸を強く撃ち抜いた。
夏の汗の匂い、秋の哀しげな視線を経て、雪を纏い始めた冬には、寒さに反比例して熱くなる胸の内を確信した。
季節は巡り、また草花が芽吹き始めて、桜の花びらが風に舞う頃。
私の想いを、風に乗せてあなたに届けた。
困ったように逸らした君の瞳も、季節を駆け抜けるとともに、段々と熱を帯びていく。
2回目の冬を2人で迎えると、夕暮れの教室で、あなたの手の温もりが時を告げていた。
トゥシューズとトゥシューズのつま先がくっつく距離感で、あなたの体温が一層、私に熱をもたらした。
世界は時間を止めて、時めく私の心音を響かせている。
押し入れから出てきたトゥシューズは、鮮明にあの頃の私たちを思い出させた。
しわくちゃになった私たちの冬を、思い出が温めてくれた。
こちらの企画に参加させていただきました。
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