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ショートショート「七夕の歩幅」※毎週ショートショートnote7/5お題


 七夕なんて嫌いだ。

 ずっとそう思っている。
 会ったこともない彦星と織姫の恋物語に、どうして私が振り回されなきゃいけないのか。
 学校では、みんな浮ついた様子で、神社の七夕祭りに誰々と行くなんて話で盛り上がっている。
 天の羽衣でも取り憑いたのだろうか。
 夏休み前のムズムズした空気に、七夕の浮ついた空気が混じって、どうにも居心地が悪い。
 必然、何の予定もない、地味な陰キャである私の足取りは、重くなる。
 七夕が近づくにつれ、歩幅は狭くなる。
 いつもより学校に遅れたのがまずかったのだろうか。
 
 「うぉ!」
 「きゃあ!」

 よりによって、クラスの陽キャ筆頭に街角でぶつかってしまった。
 そして、分厚いメガネが落ちて、割れた。
 ついていない。
 
 「わ、悪い!」
 「…私の方こそ」

 伏し目がちに割れた眼鏡を拾う。
 と。

 「本当悪い!弁償させてくれ!次の休みって空いてる?」

 イケメンがそんなことをのたまう。
 そして、私の中の織姫が耳打ちする。

 (『たなぼた』の歩幅だったね)

 やかましいわ。
 私の背中に天の羽衣が浮ついていた。
 必然、私の歩幅は浮ついた分だけ広くなった。


こちらに参加させていただきました。


 

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