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ショートショート「おせち風呂」※毎週ショートショートnote1/4お題


 「このこんにゃく、辛い」
 同居人がおせちをつつきながら、呟く。
 さながら、カタツムリのように、コタツに胡座を突っ込んで背中を丸めて、天板の重箱に箸を伸ばす。
 その間抜けな姿に、しゃっくりのように笑いがこみ上げてくる。
 「手綱こんにゃくだからね。唐辛子入ってるもの」
 私は、膨らんだ餅が溜息をついてしぼむように、笑いを噛み殺して言った。
 「おせちが辛いって、これから長い1年がスパイスが効きまくってる暗示?」
 この同居人は突拍子もなく、こんなことを日がな一日呟いている。
 「世知辛いね〜」
 私も、思わずダジャレのように返してしまう。
 唇を尖らせて、一本取られたとでも言いたげな上目遣いをしてくる。
 「可愛くないよ」
 「えへへ」
 正月特有の、ぬるいこんにゃくのようにまったりとした空気が流れる。

 「ところで、このおせちの山、どうするの?」
 私が、敢えて棚上げにしていた話題に触れると、同居人は明後日の方に視線を漂わせる。
 その視線の先にも、同居人がタップ操作を間違えて発注した、大量のおせちが山積みになっていた。
 「おせち風呂でもしてみようか」
 同居人の誤魔化すような笑みに、私は笑顔で告げる。
 「今すぐ入ってこい」
 世知辛い世の中を代表して、同居人の丸い背中を蹴飛ばした。




こちらの企画に参加させていただきました。


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